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若き日の国会図書館員・稲村徹元も投稿していた伊藤喜久男編『蒐集時代』第4号

 最近、南陀楼綾繁さん編『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』(皓星社、2018年)を読み進めている。この本は古本を蒐集、それを元に調べている方々へその人の本とのかかわりを中心にインタビューした内容を収録している。その中で国会図書館員であった稲村徹元のインタビューも収録されている。稲村はこの本では以下のように紹介されている。

1928年宮城県仙台市生まれ。翌29年に叔父・稲村担元の養子となり、埼玉県浦和市で育つ。駒澤大学在学中の46年から書物展望社に通い、斎藤昌三を中心とする「火金会」の面々と交流をもった。48年に国会図書館入館。司書として90年まで勤務。『明治大正昭和前期 雑誌記事索引集成』『明治世相編年辞典』、『近代作家追悼文集成』『図書館学関係文献目録集成 戦後編』など、書誌学関係の編集著多数。

 このインタビューのおもしろいところは斎藤昌三をはじめとした趣味人との交流が語られていることである。その中で以下のように述べられている部分があった。

(前略)
―ところで、稲村さんは趣味雑誌にも原稿をお書きですね。これは『蒐集時代』四号(一九四九)の「趣味蒐集の十年」というものです。
稲村 あ、これは覚えています。発行人は旅の趣味社の伊藤喜久男さんですが、父(Kamikawa注:稲村徹元の父である稲村担元のこと)と付き合いが長かったらしい。何部ぐらい出たんですかね?
―謄写版刷りですから、部数はたぶん十数部でしょう。この四号で終わりだと思うんですが。(後略)

伊藤喜久男は拙noteでも度々紹介している戦前から活動していた大物趣味人で雑誌『旅の趣味』を発行していた。『蒐集時代』は架蔵のものを以下の記事で紹介したが、第四号も持っているので書誌情報を引用したみたい。

雑誌名:『蒐集時代』第一期第四号
大きさ:約12.9cm×約8.4cm、謄写版印刷、和装本
発行:昭和24年3月1日
印刷編集発行人:伊藤喜久男
発行所:東京都大田区馬込町東二ノ一〇九九番地 電話大森(06)四七三番振替東京一一八九四番大森郵便局私書函第十二号 蒐集時代社
頁数:40頁

料金値上げと郵便切手の新用途 山下武夫
趣味蒐集の十年 稲村徹元
三春のデコ屋敷 本山桂川
新作こけし 川口貫一郎
蔵書票エキス・リブリス」管見 木村喜久彌
終戦後の記念スタンプ(3) 柘植宗澄
編輯雑記 志ん万(伊藤喜久男)
清規

表紙
奥付
目次
稲村徹元の文章

稲村は「趣味蒐集の十年」という文章を投稿している。同じ雑誌に民俗学研究者・本山桂川が投稿しているのも興味深い。

 ところで、南陀楼さんは『蒐集時代』は4輯で終わったのではないかと述べているが、4輯の「編輯後記」で伊藤は「次号は四月上旬に発行すべく手配中」と書いているので、もしかしたら5輯以降も継続したのかもしれない。

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