マガジンのカバー画像

動画で考える

50
「動画で考える」とは、動画を撮影することを通して目の前の日常空間を観察し、それを手掛かりにものごとを考え、表現する、その手法のことです。
運営しているクリエイター

#動画編集

12-2.編集する

『動画で考える』12.編集する 気の向くままに撮影された動画の流れをカットするポイントを探してみよう。映画やTVドラマの撮影や編集は、あらかじめ作成されたシナリオや絵コンテといった設計図を手がかりに行われる。綿密に作り込まれたシナリオのト書き(演技の指示)や絵コンテの表現は、それ自体が動画の完成イメージを作り上げていて、そのような場合は、撮影や編集の作業はそのイメージをただなぞって、忠実に再現しているだけのように思える。 そんな”いわゆる”「撮影」や「編集」の常識に一度で

12-3.自分の人生から動画を切り離す

『動画で考える』12.編集する あなたの人生を変えた3時間について思い返してみよう。あなたは自分の日常生活で起こる出来事を、順序だって意味を持たせて受け止めているかも知れない。 あなたがある日街を歩いていて、古い知り合いに出会って、立ち話で昔話をした後、次に会う約束をして、分かれる。次に会うときには相手の家でホームパーティーがあって、そこに招かれる。そこに集まった人びとはこれまで自分が付き合ってきた人びととは異なるタイプで、その日話した話題やそこに集まった人びとの印象は強

13-1.時間を撮る

『動画で考える』13.動画の中の時間 あなたのイメージする3分間を動画で記録してみよう。動画は時間を記録し、保存し、そして再生する。 目の前で起こっている出来事を一定時間撮影する。3分間撮影すれば3分の時間を記録した事になる。特に特徴のない場所やものを一定時間撮影すると、確かに再生する際にも3分間かかるのだから、そこに3分の時間がある、と言っても良いだろうが、実際には時間の経過を確認したり感じたりするものがそこに写っているわけではない。 画面に時間を表示するような機能が

15-1.物語のない動画

『動画で考える』15.物語を作る 動画のどんなところから物語を読み取るのかを意識してみよう。物語のない動画とは、物語に束縛されていない動画だ。 動画の要素として、少しでも物語の手掛かりとなるものが見つかると、視聴者はそれをつないでそこに物語を読み取ろうとする。ただの何気ない街の光景を捉えた動画さえ、そこに2人の人物が通りかかって、ささやかなやりとりが発生すると、そこに物語を読み取ろうとする。道端にスニーカーが片方だけ落ちているのを発見しても、誰が?何が?と自動的に想像力は

15-2.語らなくても伝わること

『動画で考える』15.物語を作る 日常生活の中の、言葉を介さないコミュニケーションを動画で撮影してみよう。日常の中のコミュニケーションは、言葉を必要とするものと、言葉を必要としないものとで成り立っている。 小説のような文章表現であれば、それは全て文章になっていなければ相互理解は成立しないだろうが、動画は、言葉による表現も言葉によらない表現も、どちらも記録し伝達することができる。 日常生活は必ずしも言葉を必要としない。二人暮らしの家でも、一日中無言で過ごしても困ることはな

15-3.小さな物語を見つける

『動画で考える』15.物語を作る 日常生活の中の、ほんのささやかな物語を見つけて動画で記録しよう。小さな物語を発見しよう。または作ってみよう。 小説や映画・演劇のように、作り込まれたプロにしか作れない物語でなくても良い。多くの人びとに共感されたり、感動を与えるようなものではなくても良い。日常の身近な場所で、普段は見過ごされるような、かすかな、ささやかな物語を見つけてみよう。 例えば、誰かがそこにいた痕跡。ほんの少し前までそこに寝ていて、慌てて起き上がって出かけていった後

16-1.ひとに見せない

『動画で考える』16.ひとに見せる 自分のためだけの「ひとに見せない」動画を撮影してみよう。私たちが日常的に接する動画と言えば、かつてはテレビ放送や映画のような限られたものしかなかった。動画とは誰かが作って、それを観賞するだけのものだった。ホームムービー(8mmや16mmフィルムによる撮影)が普及した時代があり、そしてホームビデオが広まって、誰でも家庭用のビデオカメラで撮影して、記録することが出来るようになった。運動会や入学式・卒業式を親が撮影して、あとから家族でそれを観賞

16-2.ひとに見せる

『動画で考える』16.ひとに見せる あなたと友人が同時に撮影した動画を互いに見せ合って、その違いを検証しよう。あなたが撮影した動画を身近な友人に見せようとしたら、デジカメでもスマホでも撮影した動画を同じ機器のモニターで再生して、その場で相手に差し出すだけで良い。友人と旅行に出かけ、お互いを動画で撮影して、その場ですぐに動画を見せ合ったり、SNSで共有したりすることもあるだろう。それにしても、その場で同じ体験をした者どうしが、お互いに撮影した動画を、その場に居ながらにして見せ

16-3.人間以外の視点で撮影する

『動画で考える』16.ひとに見せる 昆虫になって撮影する動画とはどんなものか想像してみよう。ある日あなたは、自宅のバスタブにゆっくりとつかりながら、浴室の窓の枠をゆっくりと伝って登っていく小さな羽虫を見ている。どこから入ってきて、どこへ行こうとしているのか、何か意思を持って行動しているのかさえもわからない。同じ空間を共有して、自律的に生命活動を行っていても、それぞれのサイズや機構があまりにも違い過ぎて、お互いを理解することが出来ない。 あなたは羽虫のように動画を撮影するこ