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そもそもなぜ「ミッション」なのか


2007年から約10年間、
京都サンガF.C.にて勤務。

2018年は横浜FCと
ブランドマーケティング契約を結び、

コンサルタントとして
1年間クラブに携わりました。

他クラブの担当者から
クラブ内の状況をヒアリングしたり、

ときに社長に会いに行って
話し込んだり。

そんな活動を続けていくうちに、

クラブはそもそも何がしたいのか

について言語化する
そして発信することが、

集客、売上、そして
ピッチパフォーマンスの成果につなげるための

ファーストプライオリティ
なのではないか、

と考えるようになりました。


京都では、
BtoCマーケティングを担当し、

サポーターとのコミュニケーション
に腐心しました。

サポーター心理
(なぜサンガを応援するのか)

が知りたくて、

対面インタビュー、
インタビューをまとめてメルマガを配信する

という試みを
1年間休まず続けました。

ホームゲームでは
特にゴール裏に行って、

サポーターの様子を観察。

試合後に握手を交わしながら
対話を続け、

アウェイゲームでは
彼らと移動を共にし、食事をとり、

声を出して飛び跳ねて応援するという、
サポーター体験フルパッケージも体験しました。

シーズンシートホルダーには、

直筆で感謝のお手紙を書いて
郵送したりもしました。

サポーター心理に対する
知的好奇心を満たし続けていると、

自分自身もサポーターの一員、
という錯覚?をともなった

質の高いマーケティング活動
に従事することにつながったのです。


結果、
ファンクラブ会員数は

J2に落ちた2011年以降
毎年1,000人ずつ増加し、

J1時代の会員数を超えるまでになり、

チケットやグッズ収入も
大幅に増加することになりました。

泥臭い、ドブ板営業が
一定の成果につながったのかもしれません。

しかしこれらはすべて
数年前の取り組み。

今では古臭い感じがしなくもありません。

今だったら
デジタルマーケティングと称して、

ツイッターでサポーターの声を集めたり、
YouTubeでサポーター体験ができるような編集をしたり、

リアルに労力をかけなくても
色々できそうです。


少し話が逸れましたが、

マーケティング事業では
一定の成果が上がったものの、

実のところ、

観客動員、グッズやチケットの売上
(ファンクラブ会員とその他を加算したもの)

が低迷し続けていました。

そこに「?」が立ち、

問題意識として自分の内に
残り続けることになりました。


次第に、問題意識はアンテナとなり、
自分に余裕が出てきたこともあって

少しずつ見えてきたのが、

「各部署バラバラ」

という現象でした。

これはサンガに限らず、
横浜FCしかり、

多くのクラブに類似したものであり

「縦割り」

は、多くのクラブに顕在化した課題。

そして縦割りのボトルネックが
「ミッション」の有無ではないか、

と考えるようになったのです。


ミッションは、

ビジョンとか理念とか方向性とか、
日本語ではいろんな使われ方をしていますが、

要は

あり方

だと考えます。

ミッションを遂行することが
顧客の価値につながる
、という

あり方

です。

それは北極星のような
はるか彼方に光り輝くもの、
どんなにがんばっても手が届かないもの、

なのかもしれません。

いつまでたっても完結することのない、
壮大な「あり方」は、

それでも一歩、そしてまた一歩と、

北極星までの距離が縮まる
実感と充実感を日々与えてくれる。

光が見える方向に進むということは、
「それ以外の方向には進まない」ことと同義。

「いつかはああなりたい」

という強烈な思いが、
モチベーションや一貫性を育むんだと思います。


話しを戻すと、

ひとつのセクションの成果が
クラブ全体に波及しない、

という現象のボトルネックは、
上述した

「クラブのあり方」

が示されていないから
だと考えます。


各セクションのリーダーが、
クラブトップが掲げるミッションを完璧に理解し、

一字一句何も見ないで
語ることができるようになって初めて、

ばらばらのコンテンツがひとつになり、
縦割りやセクションによる成果の差が解消される。


各セクションとも、
懸命に努力して業務に当たっていて、

Jリーグの研修に参加し、
独自に書籍やセミナーで勉強したことを
アウトプットしています。

それぞれが質の高いアクション
を起こしているにもかかわらず、

クラブ全体の成果に現れない。

既述の通りそれは、
一貫性の毀損と、

そしてもうひとつ
大事な要因があると思われます。


顧客を巻き込むこと

言い方を変えると

共創

です。


当たり前の話ですが人は、

「購買する理由」

を見出してモノを買います。

「安い」から買うのではなく、
「安いという購買する理由があるから」買う

っていうアレですね。


日曜日に家族でお出かけ。
どこにいこうかと、

お父さん、お母さん、子どもたちが
思いを巡らし、

脳内に浮かび上がる選択肢それぞれに、
どんな「理由」があって、

それが家族の「いいね、それ!」

そして決定権者であるお母さんの
財布(予算)にかなう選択肢が

最終的にひとつ、
選ばれるわけですよね。


サッカースタジアムに行く理由が
どれだけあるか、

そしてその理由が
家族の「いいね」と結びつくかどうか。

家族全員がサポーターだったら
スタジアム一択だけど、

それ以外、

今のところサッカーに興味がない家族
に突き刺さる「理由」は?


その理由を
人々に植えつけるためにもクラブは、

日常的に「顧客を巻き込むこと」に
全力を尽くさなければなりません。

スタジアムに行こう、
という理由を多くの方々の脳内に埋め込むために。

それがなければ、

サッカー無関心層が
スタジアムを選ぶ理由は

限りなく「ゼロ」に
近いはずです。


リーグタイトルなのか、
ACL出場なのか、世界チャンピオンなのか。

それとも、家族や人々をつなげる
コミュニティを創造することなのか。

いつかは成し遂げたい

「クラブのあるべき姿」

なんだっていいけど、
それが顧客のベネフィットであり

かつ明確に言語化されていなければ
クラブからの発信もままなりません。

つまり人々に思いは届かず、
共感は得られず、

巻き込むこともできません。
価値の共創も当然、実現しません。


これらが、

クラブがミッションをつくり、
言語化し、継続的に発信しなければいけない理由です。

勉強して得られる
質の高い「成果を出す方法論」は不可欠。

しかしながらそれは、
ミッションがあり、ミッションに紐づいている
ことが大前提です。


自分自身の経験と
経験から浮かび上がってきた

問題意識と仮説

それらを裏付け、強化してくれる、
文献の数々。

そしてプレミア各クラブとJ各クラブの
ミッションの違いが明らかになり、

ミッションの重要性は

今や私のなかでの確信や信念となり、
こうやってnoteで発信したり、

博士論文のテーマとして
日々研究に従事したり、

そのモチベーションは
衰えるどころか増すばかり。

もちろん、

吉本興業での業務を通した
実践も今まで以上に大切にして、

信念をさらに強化していきたいと
あらためて思いました。


以下参考文献。

勝てる場所を見つけ勝ち続ける 1分間ブランディング
(石井貴士)

個人ミッションを決めるということは「ミッション以外のことはできなくなる」ということ。ミッションが決まると行動が変わる

学習する組織――システム思考で未来を創造する
(ピーター M センゲ)

共有ビジョンを構築すると、長期的に全力で取り組む姿勢が育まれる。ビジョン(私たちがありたい姿)と今の現実(ありたい姿に対する現在地)のはっきりしたイメージを対置させたときに「創造的緊張」(クリエイティブ・テンション)と呼ばれるものが生まれる。
人々に共通のビジョンがなく、自分たちが置かれたビジネスの現実についてのメンタル・モデルも共有していないならば、人々に権限を与えても、組織のストレスを増やし、マネジメントが一貫性や方向性を維持するのを難しくするだけだろう

お金2.0(佐藤航陽)

これらのミッションは社会の課題を解決するものであり、このミッションに取り組むことは、そこで働く社員にとっては働くための大きな意義になります。

無印良品の「あれ」は決して安くないのに なぜ飛ぶように売れるのか? 100億円の価値を生み出す凄いコンセプトのつくり方(江上隆夫)

全員が同じビジョンの下、普通の会話の中にプロジェクトの共通言語が出てくるようになること、誰もが何も見ないで自分たちの組織が目指すべきところを語れるようになることを目指すのです。

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界
(スコット・ギャロウェイ)

ビジョンと成長を利益の代わりに提供している
ビジョンを雄弁に語るストーリーテレイングの才能を持ち、マーケットの予想を把握する。それと同時に、自分の周囲を、ビジョンに対して毎日少しずつ進歩させられる人々で固めることができる。

デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール(山口義宏)

ブランドとして実現したいミッションも、ビジョンなど固有のアイデンティティもなく、テクニックだけでブランドを築くには限界がある

ファンベース(佐藤尚之)

ブランドは本来、その企業や個人の志がにじみ出てくるもの、つまりミッションを愚直にやることでそれがにじみ出し、多くの人々に自然と浸透し、ブランドになる

amazon 世界最先端の戦略がわかる(成毛眞)

我々には、長期間にわたって誤解される覚悟がある。
アマゾンに利益を求めず、成長とビジョンを求めるようになっている。
アマゾンの姿勢は何も変わっていない。変わったのは、外野の視線だけだ。




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