【イベント開催】「へんなほんてん」にはどんな本があるのか?【8月25日〜9月13日】
こんにちは。
合同会社ARTの地産地消は、「アートの力でクリエイティブで豊かな市民生活を実現する」をビジョンに掲げ、地域住民の皆様と地域で活動するアーティストの交流を積極的に推進していきます。
その一環として、会社代表・詩人の井上正行による蔵書展『へんなほんてん』を実施することにしました。普段あまりみられないような、不思議でどこかへんな本を25冊ほどセレクトしました。青梅在住のへんな人が持っているへんな本をご覧くださいませ。
今回は、「へんなほんてん」に展示してある本の一部をご紹介します!
本たちには、私のエッセイとも詩とも取れてしまうような拙いキャプションが付されています。ぜひ、文章と一緒にイメージを膨らませていただけたら幸いです。
『objet magazine 遊』創刊号ー10号
『objet magazine 遊』創刊号ー10号
出 版:工作舎
出版年:1971ー1977年
展示会をしている最中、松岡正剛の訃報に際しました。非常に残念です。著述家として有名な方でしたが、私にとっては日本のブックデザイン史を大きく前進させた、まさに「へんなほん職人」でした。
『objet magazine 遊』はまさにへんなほんの代表選手でしょう。1971年に創刊された『遊』の表紙に浮かぶ巨大な目玉が目をひきます。どう考えても商業的ではないデザインであるにも関わらず、雑誌の体をなしているのがとても気に入りました。この本を手に取って衝撃を受けたデザイナーの卵は数知れません。『工作舎物語』(左右社)によれば、1970年代の初期工作舎では、全国から才能ある若者が集い、眠りを惜しんで創作に励んでいたようです。
ふと私は、土方巽のアスベスト館を想起しました。1960年、70年代は若者たちの熱気に満ち溢れた時代だったのでしょう。若者、時代と簡単な言葉で説明してしまいましたが、それが一体何を生み出したのでしょうか。いつだって、時代は若者がうねらせ、若者は時代のうねりに翻弄されます。工作舎から飛び出た『遊』はアスベスト館における暗黒舞踏だったのかもしれません。その時代の先鋭たちが集い、才能がぶつかり合って生じた原初の宇宙のような混沌の中で煌めいた一瞬の光が歴史に楔を打ったわけですが、私にとってそれは妙に懐かしく羨ましいのです。
ところで『遊』の創刊号の目は私にとって最も重要なシンボルです。『遊』を収集する大きなきっかけのひとつでもありました。オディロン・ルドンの描く目玉にとらわれていた私は、目がモチーフのものを一時期仕切りに集めていました。なぜ1つ目はいつの時代も人々の脳裏に浮かぶのか気になっていたのです。
例えば、古代エジプトの「ホルスの目」やキリスト教のシンボル「プロビデンスの目」、古代ギリシャ神話に登場する「キュクロプス」、日本神話にあらわれる「天目一箇神」など、古くから世界中で1つ目は象徴的な、神的な意味をまといながら存在感を示してきました。これは一体なぜなのか、2つではなく1つなのはなぜなのか。未だ何もわかりません。わかっているのは、どういうわけか人々の注意を引くということです。太陽や月などの天体、あるいは種子や卵にある胚のような超越と始原が1つになったイメージについて人々は反応するようにできているのでしょうか。
そんな目に対する憧れを持ちつつ、収集しはじめた『遊』ですが、創刊号から10号までの第1期を集めるのに6年近くかかってしまいました。とりわけ創刊号から5号あたりを集めるのに時間がかかりました。そのため、最も思い入れがある本なのです。ぜひお手にとってもらいたかったのですが、大変脆くなっており、バラバラになりそうなものもあるため断念しました。ぜひ、モニターで雰囲気を感じていただければ幸いです。
『Voix ヴォワ』
『Voix ヴォワ』
出 版:思潮社
出版年:2021年
『Voix』は詩人・吉増剛造の最後の詩集だと言われています。吉増さんのお名前を聞いたのは私が小さい頃でした。父から「吉増さんというすごい詩人がいてね」と聞いたのが最初でした。それから十数年経ち、次に出会ったのが薄暗い地下の書庫でした。その時、ふと手に取ったのがみすず書房から出された『怪物君』(2016年)という詩集でした。「吉増剛造・・・父から聞いた名前だ」と思い、ページをめくると度肝を抜かれました。私が今まで読んできた本とは全く異なったレイアウトで文字が並んでいたからです。みすず書房のような人文書や学術書を専門にする老舗の出版社には厳格な組版ルールがあり、それが出版社の個性となっています。それを全く無視したようなうねりを伴うような文字の羅列があまりに新鮮で、型破りで、人文書ばかり読んでいた私に取ってはトラウマになるくらいの衝撃だったのです。それが今から5年くらい前のことです。
また当時私はただ漠然と詩を書きたいと思っていたのですが、『怪物君』と出会ったことによって、これまで詩という文芸ジャンルに抱いていた勝手な思い込みが吹き飛んでしまいました。詩とは出版業界における常識すらも吹き飛ばしてしまうものなのだとその時確信しました。まさに、怪物だったのです。
そして、2021年に出版された『Voix』からは怪物君を遥かに凌駕した言葉の勢いを感じます。紙面上にさざなみが生じているようです。微量のインクによって印刷された文字という文字が本という器を穿ち、世界そのものへ濁流のようにしてバーストしていくようです。最後の詩集とは、詩集としての形を保つことのできる最後の状態であるということでしょう。吉増さんの詩はもはやもう誰にも束ねることができないのです。
へんなイベント開催!
会期中は、8回の関連イベントを開催します。ひとつは「へんな本の成り立ちを学ぼう!」、もうひとつは「へんなことばで遊ぼう!」です。それぞれどんな内容なのか簡単にご紹介します。
へんな本の成り立ちを学ぼう!
こちらは、先ほども少しご紹介したように本ができるまでの工程を解説するワークショップです。私の詩集だけでなく、会場にある様々な本も取り上げながら、本の仕組みや構造について学ぶ会です。実際に手にとって触ったり広げたりできますので、とても貴重な体験になること間違いありません!
詳細
「井上の第1詩集『凍える言葉』を徹底的に分解し、手書き原稿がどのような工程で印刷されて、製本されたのかを解説します。巨大な印刷機から出てきたばかりの、大きな用紙を見られる貴重な機会です。同時に、会場にあるたくさんの本のどのあたりがへんなのか解説付きで鑑賞します。普段なかなか触れる機会のない、本の成り立ちに関する講座と、本の鑑賞が一体となったワークショップです。」
ファシリテーター:井上正行(キュレーター)
日時:8月30日(金)、9月1日(日)、7日(土)、13日(金)
時間:15:00ー16:30(90分程度)
場所:THE ATELIER
青梅市本町130−1ダイアパレスステーションプラザ青梅204
定員:10名
参加費:1000円(当日支払い)
お申し込み:lplc.of.art@gmail.com/
へんなことばで遊ぼう!
へんなことばを使って、実際に詩を書いてみませんか。今まで全く詩を書いたことがない人も、書いたことのある人も、へんなほんに囲まれながら一緒に詩を書きましょう。僭越ながら、私が詩の講師をさせていただきます。
一体どんなやつなのか、と疑問に思う方もいると思いますので、今年出版した詩集について、ベテランの先輩詩人たちから様々な批評をいただいたので、参考までに載せます。
詳細
「展示会場にある本や、青梅の街並みをテーマに詩を書いてみませんか。頭に浮かんだちょっと変わった言葉やイメージをあなたの自由な感性で表現してみましょう。たった一言でも、何行ものことばでも構いません。とにかく一緒に書いてみましょう。もしかしたら、次のへんな本はあなたの本かもしれません。あなたの心に潜んでいるへんな言葉を引き出してみませんか。」
ファシリテーター:井上正行(詩人)
日時:9月2日(月)、4日(水)、6日(金)、8日(日)
時間:15:00ー16:30(90分程度)
場所:THE ATELIER
青梅市本町130−1ダイアパレスステーションプラザ青梅204
定員:5名
参加費:1500円(当日支払い)
お申し込み:lplc.of.art@gmail.com/
おわりに
いかがでしたか。少しでもイメージが湧いたなら幸いです。
皆さんのご来場をこころよりお待ちしております。
■へんなほんてん
会期 2024年8月25日(日)〜13日(金)
時間 10:30ー18:30(会期中は無休)
料金 入場無料
場所 THE ATELIER(青梅市本町130−1ダイアパレスステーションプラザ青梅204)
連絡先 lplc.of.art@gmail.com/0428-84-0678
(喫茶ここから内10:00-18:30/担当:風間真知子)
お知らせ
アトリエ利用者募集中!
現在、「THE ATELIER」の利用者を募集しています。2024年の8月1日以降から利用可能です。見学するだけでもとても嬉しいです!
随時募集を受け付けております。
イベント開催!
8月24日、9月14日、28日には青梅の写真家八野好洋さん、同じく青梅で活動するチョークアーティスト茂木あかねさん、御朱印アーティストのAPOホリグチさんが御登壇されます。
THE ATELIERで開催しますので、見学も兼ねてぜひいらしてください!
応募はこちらから
■第8回ゲスト:八野好洋氏
日付:2024年8月24日(土)
■第9回ゲスト:茂木あかね氏
日付:2024年9月14日(土)
■第10回ゲスト:APOホリグチ氏
日付:9月28日(土)
いずれも
時間:14:00開始 15:00終了予定
場所:THE ATLIER(青梅市本町130−1ダイアパレスステーションプラザ青梅204)
定員:15名
参加費:1000円(資料代)当日お支払い
主催:合同会社ARTの地産地消
lplc.of.art@gmail.com
0428-84-0678(喫茶ここから内10:00-18:30/担当:風間真知子)
奉納舞踏開催!
そして、2024年10月6日(日)の16時頃からは武州青梅金刀比羅神社にて「奉納舞踏」が開催されます。参加費無料なので、ぜひ足を運んでくださいね!
【お問い合わせ】
0428-84-0678 /lplc.of.art@gmail.com(喫茶ここから/担当風間)
おわりに
イベントのご案内はもちろん、その他会社の詳しい内容は直接私たちにご連絡いただけると幸いです。
会社の拠点となりますTHE ATELIERには、同じフロア内に喫茶店を併設しております。基本的には定休日なしで営業しておりますので、お気軽にご来店いただき、お話出来たら嬉しいです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?