On Drinking3

オレとアイリスとの関係はそれなりに楽しく充実感のあるものだった
オレが彼女に惚れ込んでいたわけでもなく
彼女がオレに惚れ込んでいたわけでもなかった
ただ相手のことを気にかけるのは簡単で
気にかけないのは難しいことだった
だからオレは気にかけた
オレたちは駐車場の屋上に停めたフォルクスワーゲンの中にいた
ラジオが流れていた
ブラームスだった
「また会えるよな?」オレはアイリスに聞いた
「どうかな」
「バーで少し飲んでいかないか?」
「ハンク、アナタは私を依存症に追い込んでるわ。あまり飲めなかったのに今じゃ歩くのもやっとよ」
「酒だけが原因か?」
「そうじゃないけど」
「なら飲めばいいだろ」
「酒、酒、酒!アナタはそれだけしか考えられないの?」
「そうじゃない、空いた時間に酒を飲んで空白を埋めるのは悪くない、こういうときがそうだ」
「もっと物事に正面から向き合えないの?」
「できるさ、でもそうはしたくない」
「それは現実逃避よ」
「世の中の事はすべてそうだ:ゴルフをすることも、眠ることも、食べることも、ケンカも、ジョギングも、呼吸も、ファックすることも、、、」
「ファックすることも?」
「もういいだろ、オレたちは10代のガキみたいなことを話している。そろそろ搭乗時間だろ」
物事はうまい具合にはいっていなかった
オレはアイリスにキスをしたかった
だが彼女はそれを拒絶するだろうことがオレにはわかった
壁ができあがっていた
彼女は調子が悪かったんだろう
そしてオレも調子が悪かった
「そうね」アイリスは言った、「チェックインをしてそれから1杯飲むわ。それで私はここを去る永遠にね:スムーズに、気楽に、痛みなく」
「そうだな」オレは言った
そういうふうに物事は収まっていった

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