『バッファロービル』
Buffalo Bill
Charles Bukowski
大家とその女がビールを飲み酔っ払うと
女のほうがオレの部屋へやって来てドアをノックする
オレは下の階へ降りやつらと酒を飲む
2人は昔流行った歌を歌い
大家はイスに座ったまま気を失うまで飲み続ける
オレはその場から立ち上がり
やつの座っているイスを蹴り飛ばす
やつは再びテーブルに戻り飲み残したビールに手を伸ばす
オレたちの会話はいつもバッファロービルの話題に行き着く
バッファロービルの話題は尽きることがない
だからオレはいつも聞く
バッファロービルはどうしてる?
まいったよ、まただよ
捕まっちまったよ
やつらがやってきて連れてっちまった
何があったんだ?
同じことだ、今回はエホバの証人の女だった
女はドアベルを鳴らしアイツはドアを開け女が話しているときにパンツを下ろしアレを見せたってわけだ、わかるだろ
女がやってきて私たちにそのことを話した
私は女に言ったよ、「なぜアイツの邪魔をした?なぜドアベルを鳴らした?アイツはあんたを煩わせるようなことをしなかったはずだ!」女にそう言ったが、女は出て行き警察にそのことを話した
バッファロービルが刑務所からオレに電話をかけてきた
「クソっ、またやっちまったよ!」
「なぜ同じことを繰り返すんだ?」オレは聞いた
「わからねえ」ヤツは言った
「俺にだってなぜかわからねえんだよ!」
「あんなことはやるべきじゃなかったな」オレは言った
「そんなことは俺だってわかってるさ」ヤツは言った
これでヤツは何度めなんだ?
さあな、よくわからん、8回かおそらく10回か
アイツはいつもだからな
いずれにしろアイツには腕のいい弁護士がつく
話のわかるいい弁護士がいるんだ
そのあいだアイツの部屋を誰に貸すんだ?
アイツの部屋は誰にも貸さないよ、アイツの部屋はいつも取ってある、私たちの大事な客なんだ、私はある夜のことを話したかな?アイツは随分酔っ払って素っ裸で芝生に寝転んでたんだ、航空機が1機頭上を飛び去った、アイツはその航空機の灯りを指差した、私たちに見えたのは航空機のテールランプだけだった、アイツはそのテールランプを指し示し叫んだ、「俺は神だ、俺が空に星明かりをつけたんだ!」
その話しはまだ聞いてなかったな
もう1本ビールでも開けろよ、詳しく話してやる
オレは新しいビールを開け喉に流し込んだ