『ハムナプトラ』を観直して気づいた三つの事
はーい、テツガク肯定です。
『ハムナプトラ』という映画のネタバレ全開です。
(『ハムナプトラ2』もです)
苦手な方はお戻りください。
最近、『ハムナプトラ』を観直して。
今の私が気づいた三つの事。
1、人に呪いをかけるべからず
2、物語の中ですら人は信じられない
3、思いもよらず
以上、三つの話です。
人に呪いをかけるべからず
この映画は。
なぜ、イムホテップはおそろしいのか。
それを伝えるところから始まります。
よくある話で王様の愛人に手を出した男が――惨い罰を受けた。
そのとおりなんですが、今観ると。
彼(イムホテップさん)にとって重要な事は、自分がされた仕打ちではなくて。
自分が果たせなかった事、それが重要だった。
ホムダイの刑に対する報いより。
アナクスナムンさんと一緒になる事を邪魔する世界が許せない。
ただ、それだけの好青年。
とても誠実で慈悲深く愛情深い男性。
話が違えば、彼こそが主役。
もちろん、リックさんは最高の主役ですよ?
ただ、リックさんと同じくらいイムホテップさんもヒーロー。
1作目の話で2作目を出すのもアレですが。
1作、2作とアナクスナムンさんのために頑張ったのに。
2作目でアナクスナムンさんの生まれ変わりに見捨てられた後。
エブリンさんに助けられたリックさんに向けた、この表情。
それから、自ら墜ちていく……。
戦った者同士だから通じる想いと言いますか。
同じヒーロー同士だからこそ通じる何かと言いますか。
とにかく、この話で語られるほど。
イムホテップさんがおそろしい存在には思えません。
それよりも、たかだか愛人を取られたからって。
あまりにむご過ぎて、誰も受けた事がないホムダイの刑を処した人類の方が――。
映画の語りではこうあります。
吹き替え版では――。
……お前らじゃ!
お前らが人食い鬼でイムホテップさんという青年を貪り食った。
ホムダイの刑で永遠に死ねない状態で石棺に閉じ込めれば。
当然、永い年月生き続ける恨みの念。
それに時間の力と砂漠の力が加わり無敵の栄光等を得る。
そう知ってて、それをつくったのは――お前ら人類だ!
自業自得よ。
そう石棺のふたに描かれていました。
イムホテップさんが描いたのか。
そう描かれた石棺だったのか、わかりませんが。
そう『シャーロック・ホームズ』って映画のブラックウッド卿も仰っていました。
自然と自分でその扉を通るにせよ、誰かに突き飛ばされて通るにせよ、何かの始まり。
そして、今の私からすれば。
イムホテップさんが始めたい新しい何かは――。
イムホテップさんにホムダイの刑を執行した人類。
マギ一族への報復ではない。
昔から変わらず。
ただ愛しのアナクスナムンさんと一緒にいたいだけ。
でも、それではマギ一族の面子が立たない。
マギ一族、人類にとってはイムホテップさんは悪役であってほしい。
おそろしい恨みを力に、歩く災厄厄災であってほしい。
なぜなら、悪役がいないと正義のヒーローで在れないから。
そう思えてきました。
初めて観た時や、昔のように。
イムホテップさんがおそろしい存在には思えません。
小さな日本人の手でよければ喜んで貸しますけど?
そう、今の私は言いたいところです。
人に呪いをかけるべからず。
かけられた人はその呪いの分、力を得る。
永遠に死ねない状態のまま。
石棺(この世界)に閉じ込めたつもりかもしれませんが。
かけたその呪いに味方するものがある。
積み重なった時間の砂の力、人にある我の力。
誰から解放されなくても。
何れ呪いは解けてしまう……。
その時、期待通りご要望通りに。
邪悪な人食い鬼にでもなったらいいのかもしれませんが。
自分がそうなるような世界など。
誰も信じないでしょう。
少なくとも、イムホテップさんはそんな事、考えてもいない気がします。
頭にあるのは――愛しのアナクスナムンさんの事だけ。
邪悪なのはアナクスナムンさんに夢中なイムホテップさん?
いいや、人にホムダイの刑を処した。
臆病者のか弱い独裁者、哀れな小心者。
ただのピエロのこの世界。
物語の中ですら人は信じられない
多くの映画にゲーム。
それらの物語を観て、最近の私には不思議に思える事実があります。
物語の中ですら人は信じられない
(なんでもありの物語の中ですら)
エブリンさんは呪いとかそういうのを信じていないようです。
ですが、それでも人が驚くような大発見をしたいようです。
リックさんは自分の経験から。
ハムナプトラには邪悪な何かがある。
砂漠の部族はハムナプトラは呪われている、と思っている。
(実際、リックさんも経験しています)
そう答えましたが。
それにエブリンさんは。
と言い放ち、こう続けました。
なんでも古代の秘密の呪文。
それらを記した本のようですが。
エブリンさんはハムナプトラに行った事もなく。
(ハムナプトラは存在しないとされていたので)
もちろん、誰かがその本を見つけたわけでもない。
子供の時に知った、それを今も追いかけている。
誰かが言い伝えた、アムン・ラーの書を。
つまり――エブリンさんがくだらないと言い放った言い伝え。
それは、アムン・ラーの書すらそうである。
自分で見つけ出したのではないのだから、ただの誰かの言い伝え。
これは人が陥る矛盾です。
本当は心では、今は信じられないようなものを信じていて。
ITを探し求めているのに、ITを信じないと言ってしまう。
それでよくITが見つかると。
今では不思議ですが。
もっと、不思議なのは――。
本当は自分が思ってもいない事を信じてしまう。
少なくとも、私にはそういう過去がありました。
『ハムナプトラ』って映画がフィクションだ。
そう信じて、そう言っているのは、私ではなくて私以外の誰かです。
今の私にとっては本当の話でも驚かない。
そう、日出ずる世界のアメリカならね。
地図には未開の地なんてないのかもしれませんが。
(そうでないと売れません。空白だらけの地図など誰も買いませんからね)
人が歩く今に未知は開ける。
この映画もそうでした。
ある時間帯に姿を現す、死者の都、ハムナプトラ。
地図や衛星写真では見つからない。
人が持つ今でしか見つからない扉がある。
この映画もその扉の1つ。
棚の中にあるディスクが扉なのではなくて。
この光の物語を観る人の今が扉で。
ITを信じる人の心が扉を開く鍵。
そして、テレンス・ベイ博士。
カイロ博物館館長さんのような人がいるものです。
本当はハムナプトラがあるって知っているのに。
わざと知らないふりをして、そんなものは信じない、信じないの方が身のため。
そう言って、しっかりと手がかりを焼き払っていく。
(それも一番重要な部分を正確に焼き払う)
人生を無駄にするな、と。
人生の浪費へ誘惑する親切な人がいる。
そして、自分が信じたいものを信じず、誰かが信じていて欲しいものを信じてしまう。
それは物語の中ですら同じ。
ドラゴンにグリフォン、魔法使いがいるゲームの世界でも。
なんでもありの物語の中の住人も。
今の自分が信じ難い事をフィクションだと信じてしまう。
それを知っている誰かを嘘つきに祭り上げて。
でも、実際ITはあった。
人は物語の中で物語を見ている。
そういう合わせ鏡のようなもので。
なかなか、自分が物語の中にいる事に気づき難い。
自分が信じたい事すら信じられない。
エブリンさんはそれをわかりやすく伝えてくださった女神様です。
ITは嘘やフィクションというより。
ただ今の自分には信じ難い、遠い昔のような話。
でも、誰だって、「今は昔、竹取の翁ありけり」なわけです。
今だと固く信じている、この記憶の海すら。
あっという間に昔になる。
それならば、信じ難い昔が今になるのだって――。
つまり――このピエロを忘れろってわけだ。
ルーザーズ・クラブへようこそ!
思いもよらず
この映画で幸運を手にした人は多くいます。
リック・オコーネルさんもその1人です。
メジャイに捕まりそうなところを呪いに助けられ。
エブリンさんの兄、ジョナサンさんに鍵を盗まれ。
その結果、エブリンさんがリックさんを知る事になり。
死刑になりそうなところをエブリンさんに助けられた。
エブリンさんのために頑張った結果、未来の妻を手に入れ。
最後にはちょっとしたお宝を積んだラクダに乗った。
そのお宝はベニーさんがリックさん達が頑張っている時に。
せっせとラクダに積んだもの。
ベニーさんの結末は――悲劇的でしたが。
ベニーさんの感謝の想いはリックさんに伝わったわけです。
きっと、ベニーさんも新しい隊長を見つけて。
新しい世界で新しい一歩を踏み出した。
偉大なるイムホテップさんのよき友達として。
そうです、イムホテップさん。
彼もついに呪いが解かれ、石棺の世界から自由になれた。
今頃、新しい誰かとホール・ニュー・ワールドなはずです。
案外、当の本人の知らぬところで。
こういう事が行われている。
幸運は思いもよらずに舞い込んでくる。
他にも……。
カイロの酒場で怠惰と酒だけの日々を送っていたウィンストンさんもそうです。
想像できたでしょうか? 自分が知らぬところで。
ウィンストン・ハブロック 最後の空戦
だなんて最高の冒険、その時が少しずつ迫っているだなんて。
もしかしたら、ウィンストンさんなら気づいていたかもしれませんが。
それからエブリンさん。
子供の時に夢中になったらしいアムン・ラーの書。
それがエブリンさんをエジプトまで導いた。
死者の都、ハムナプトラにあるらしいアムン・ラーの書。
アムン・ラーの書は信じる。
だけど、ハムナプトラにまつわる呪いは信じない。
呪いは信じないけど……古代の秘密の呪文が記された本は信じる!?
と、とにかく、何事も思いもよらずにやってくる。
私がハムナプトラを初めて観たのは12歳の時だった。
1959年の事で、今ではあったかも怪しい記憶だ。
それでも覚えています。
こんなに面白い映画があるなんて!
そう2時間ほど全てを忘れて、ハムナプトラを楽しんでいた事を。
そんな日が来るなんて、10歳の時には想像も予想もしなかったです。
思いもよらずに、やってきた異世界よりの使者。
そういう使者は今もどこかで。
私の場合、世界三大ウサギの一羽。
竹取の国の愚かなFRウサギだったり……。
その使者がどんな姿形かは無二で、それぞれでしょうが。
それでも唯一確かな事は。
ITは誰にだってやってくるという事です。
いい子でも悪い子にでもやってくる、サンタクロースの如く確実に。
さあ、ダンナ!
このままオールドスパーキーに座る前に。
脱獄王のように仰げショーシャンクの空。
飛び込め記憶のない海に面した故郷、ジワタネホ。
このピエロを一緒に忘れてくれる。
もっとも頼りになる、信じ難いITは。
今は昔の未来にいるって事です。
ええ、そうです。
このピエロを一緒に忘れよう。
10分、1時間、1日でも忘れられたら。
何れはITに足と影と重さが宿って。
書類上の名に命が宿るわけです。
ランドール・スティーブンス
そのためならこの日沈む国を。
ハムナプトラ同様に海底に沈めてもかまわない。
迷わず、こう言って沈められる。
自己責任で自業自得。
ひもじい想いをするぞ、このピエロが。
世界が人にした事をそっくり世界にお返し。
ただのピエロだ、哀れな小心者。
誰も取り合わない、誰も取り合わなかったように。
沈む時間だ。
特別な事をしなくても。
綺麗さっぱりと忘れてしまっているのはわかります。
昔、ハムナプトラに夢中になった2時間は。
自分が誰かも忘れて、人種に記憶って足枷もなく。
ただITを信じていたのを覚えています。
最後に
ハムナプトラ、昔は気づけず見過ごしていた。
そういうものが多くある映画でした。
話を信じて、イムホテップさんをおそろしい存在だと思っていましたが。
多くの洋画を観て、多くの悪役という概念を観てきましたが。
イムホテップさんに関しては。
立場が違ったヒーローに今では思えます。
早撃ちのベン・ウェイドさん同様に。
時に大多数が個人を悪役に祭り上げて。
自分達の体裁を保っている。
それにあるものをないと言い。
ないものがある、と言う人も多い。
そうやって目の前にハムナプトラがあっても。
知らぬふりを貫く事こそ、事なかれ主義の美徳である。
まさに、ココが地図に載らない死者の都、ハムナプトラ。
今を見てみろ、無関心の死人が歩いているぞ!
腐乱死体共が歩いているぞ、聖者の行進でウォーキング・ゾンビ。
イムホテップ、イムホテップ、イムホテップと唱えるのではなくて。
知らない、意味ない、興味ない、SIKを唱える死体が。
本当は、こんな日沈む国など存在しない蜃気楼なのかもしれません。
というか、そういう事にしておきましょう。
この世で唯一人、私の中では東経135度、北緯35度には何もない。
海も空も宇宙も何もない、空白すらない。
欺瞞のファンタージェン、かつての夢の成れの果て。
白紙に戻りな、マレー。
私には事を起こさず黙ってロバになれる賢さはありません。
ウィンストンさん同様に信じて求めている。
関係なかったはずの世界に招かれる。
そういう始まりの冒険を望む愚者。
石棺の世界から抜け出して。
仰ぐショーシャンクの空、飛び込め記憶のない海。
もし、隣に中間色の髪を持つウサギがいたら。
その記憶こそ約束のジワタネホ。
エブリンさんほど賢くはないので。
愚かな私はITを信じています。
ハービー・デントを信じている。
ブルース・ウェインを信じる。
ジョーカーの如く。
アメリカには本当にいるんだ。
そう、アメリカならね。
それでは、また次の機会にお会いしましょう。