崖っぷちコンビニ、その先は? ~ものづくりと店づくり~ (後編)
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5.ものづくりの始まりは商品提案シートから
商品提案シートは、仮説イメージづくりとコンセプト開発のベースとなります。
シートが具体的であればある程、商品開発する仲間や関係者とのコミュニケーションが深まっていきます。
商品提案シートの要点は、「5W2H」で説明と、「商品イメージ」を見せるの2つです。
5-①商品提案は「5W2H」で説明する
1)Why
なぜ必要なのか?
お客様の不満・不便を解決できるか?
2)Who
どのような人に?
誰と一緒なのか(+with)?
3)What
どんな名前で?
どんな独自商品なのか?
4)When
発売時期はお客様の欲望や行動と合致しているか?
開発に十分な時間を費やせるか?
5)Where
どの店?
どの売場?
どの棚?
6)How to
どのような話題で売るのか?
どんな陳列で売るのか?
7)How many
お得感のある価格で、どのくらい販売するのか?
そして、いくらもうけるのか?
5-②商品提案は「商品イメージ」を添える
多くの場合、お客様も、商品開発者自身も、それを目にするまでは、何が欲しいのか分からないものです。
ポケットに入るコンピューターという商品も、スマートホンという形になってはじめて、「欲しい」という想いを強くさせたと言われています。
マーケティング・リサーチの現場では、助成物を活用して、お客様の求めるものを形にしていく事があります。
商品提案も同じで、関わるメンバーに対して、自分が作りたいものをイメージさせることで、討議が具体的に進んでいきます。
6.ものづくりの押さえ8カ所
6-①ものづくりチェックポイント5つ
チェックポイント1 試作品開発
試作品開発の目的は、商品提案シート通りの商品ができたか、材料・加工・包装・ノウハウの整備を行う事にあります。
食品では試食、非食品では試用が、お客様の立場で確認するキモになります。 味はどうか、時間経過による外形変化は、温度高低による異臭はと、お客様が食べる状態を想定して、改善していきます。
<食品開発のチェックポイント事例>
-1 食材・資材スペック指示書の作成
-2 食材加工・加熱・冷却指示書の作成
-3 半製品工程指示書の作成
-4 治具・器具・設備の決定と調整
-5 盛り付け又は封入工程指示書の作成
-6 表示ラベル指示書の作成・テスト出力/確認
--官能評価、細菌検査、ラインテスト、原価計算などなど
チェックポイント2 テスト販売
テスト販売の目的は、お客様視点での最終確認になります。 結果、販売予測が導かれ、精査されていきます。
テストマーケティングの場として、バーチャルの活用も進んでいくと思います。
<食品開発のチェックポイント事例>
-1 どの「不」を解決したか? ・・・不満/不便/不快/不安
「添加物が多そう」「塩分が多そう」「カロリーが高そう」
-2 どこが優れて評価されたか? ・・・再購入意向が高かった項目は?
「オリジナリティ」「即食簡便性」「おしゃれ感」
チェックポイント3 販売(登録・受注・納品・陳列)
チェックポイント3は、販売段階です。
本社・本部と、個々の店舗が分担するケースが多いと思います。
本社・本部は登録・受注・納品までを担い、個々の店舗は検収・陳列・販売を担う事となります。
商品改善の声(含む苦情)は、関係者で共有して、即応する事項と次の開発に活かす事項に峻別します。 即応事項は実行記録を、次開発事項は
<食品開発で起きるトラブル事例>
全てのトラブルは、お客様の期待を裏切る事に繋がっています。
-1 システム登録ミス ⇒ 会計ができない
-2 計画数を上回る受注数 ⇒ 売り切れている
-3 事故・災害等による遅延・欠品 ⇒ 商品が無い
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チェックポイント4 現場・現品点検
現場・現品点検の目的は、商品提案シートで意図された製造、納品、陳列、販売がされているかを確認します。
<食品開発のチェックポイント事例>
-1 現場(店舗)でのお客様動線・行動、陳列・演出の実施有無
-2 陳列された現品の確認(陳列状態、試買試食)
-3 現場(工場)での仕様書通りの製造有無、出荷前品の確認・試食
-4 現場・現品に潜む次のヒント探し
チェックポイント5 予算実績検証
予算実績検証の目的は、継続販売・撤退判断を行う事です。
PDCA(Plan ⇒ Do ⇒ Check ⇒ Action)のCの部分になります。
計画⇒実行⇒検証⇒改善(継続販売)と進む場合と、検証⇒撤退(Exit)となる場合があります。
PDCAは、全関係者のお仕事を回す力となって、商品開発の継続性を生み出すと考えております。
<検証の為に最低限整備する記録事例>
-1 商品提案シート
-2 商品化計画書
-3 商品化決裁書
-4 数値実績記録
6-②支える3つの仕組み
①チームMD
チームMDとは、あなたを助ける専門家の仲間です。
あなたが得意なものはなんでしょうか。
発想力、企画力、実行力、創造力、数値勘、食感、栄養、調理、法令、品質管理、財務経理、、、社交的で座持ちが良い?
あなたが不得意と認識している分野・能力などに対して、補強する仲間を集める事で、あなたの持ち味が活かされます。
ネーミングやパッケージはクリエイティブ力が必要で、専門家を仲間にする事が多いと思われます。
最新のSNS活用法やデジタル技術に長けているマーケティングの専門家が必要かもしれません。
中食商品開発の場合は、食味評価が出来る事が重要になって来ます。 また複数で行うことで、改善方向性が出しやすいと思います。
あなたの飲食に好き嫌いはありませんか。
②お客様情報収集
お客様に寄り添う情報分析を心がけて下さい。
自分の周りにある情報の棚卸しをして、あなたが仮説としたお客様の
欲望の裏付けをしましょう。
まずは、店舗や街で、お客様の行動を観察する事をお薦めします。
「どんなお店が賑わっているのだろうか?」
「どんなものが今うれているか?」
「どんな人が買っているのだろうか?」
「どんな価格が手に取りやすいのか?」
「ネーミングは、食材は、加工法は、味付けは、デザインは・・・」
商売を始めた後でした、以下の整理と体系化をお薦めします。
-1 集まる情報と集める情報の仕分け
-2 集まる情報は、社内記録と市販情報
-3 集める情報は、マーケティング・リサーチとテスト・マーケティング
③工程管理(期限を共有する!)
小規模多拠点の先にいる多くのお客様の期待を裏切らない為にも、工程管理は重要になります。
商品開発の挫折や失敗の原因のひとつに、期限を決めなかった事が上げられます。
発売日は最終期限で、一人で商売していない限り、関係者がいると思います。 チームMDであれば、それぞれの分野に期限があると思います。
商品開発を行う、多くの仲間や企業の時間軸を合わせることで、商品提案シートで意図した「発売」が実現されます。
7.お店とモノ・イメージ
基本のキをおさらいした上で、ユニストストアという仮想小売店で、モジュールを組み合わせるという自由な発想で、ものづくりしていきましょう。
ひとつのモジュールは、3.3㎡を想定しています。
ぎっしり商品を並べるタイプも考えられます。 居心地の良い生活提案をする空間というタイプも考えられます。
7-①店づくりイメージ
ユニットストアは、次の2つを想定しております。
1)フル型(「食」+「健」+「養」対応品揃え)
10年常設をひとつの区切りとして、展開地域の10年に亘る様々な欲望を満たしていきます。
モジュールは50個前後になるのではないでしょうか。 3.3㎡が50個でおおよそ150㎡から200㎡をイメージしてはどうでしょうか。
2)スナックスタンド型(「食」対応品揃え、「災害」対応も想定)
移動販売、季節限定販売で、「食」に特化していきます。
非常時には災害モジュールとしても機能します。
車両とモジュール4個前後で構成します。
モジュールは据え置きと車両積載の両対応とします。
共通仕様としては、スマートストア、抗菌仕様、リサイクル建材使用、停電/断水対応を念頭に、一部は3Dプリンターなどで現場製造、レイアウトはAI支援を前提にしてはいかがでしょうか。
お客様空間モジュールとしては、トイレ、授乳室、休憩場所(大震災時一時医療)などを想定しております。
地域や自治体によっては、以下のモジュールも想定します。
7-②品揃えイメージ
ユニットストア構想は、全国の小規模多拠点事業を行っている企業との取り組みを想定しております。
また、展開地域の自治体との取組みも念頭にしております。
金融、エネルギー、クリーニング、理美容、薬局、医療関係などなど、2020年代前半において、事業方向性を模索している企業などが多いと想定しております。
現コンビニの品揃えイメージは、ざっくりこのように想定しております。
ユニットストアは、生活基盤型小規模多拠点事業者の現在の商売や、近い将来重要になって来る次世代エネルギー拠点や感染症/大震災対応型拠点に拠る品揃えを想定していきます。
7-③ものづくりイメージ
最後に、ものづくりの自由な発想が広がるように、その糸口をお伝えしてまいります。
◆「飲食する自由」欲望に対応したモジュールの商品イメージ
◆「健康でいる自由」欲望に対応したモジュールの商品イメージ
◆「教養を身につける自由」欲望に対応したモジュールの商品イメージ
以上、ものづくり機会に出会うであろう18歳(±5歳)のあなたへ、商品開発の基本をお伝えして来ました。 新しいお店をイメージしながらものづくりを発想していく楽しみの一端もお伝えしてまいりました。
尽きることの無いお客様の欲望を満たし続けて来た「コンビニものづくり」が、この先のものづくり、お店づくりのヒントになれば幸いです。
長文記事をお読み頂きありがとうございました。
引き続きご安全にお過ごし下さい。