【ヒモ男シリーズ】ヒモ男とツワモノ親子
俺はコンパスヒモ男。今日は中学で一緒だったユリが遊びに来るぜ。夏に地元で結ばれて以来だぜ。東京で用事があるとかで、俺の家を拠点に動くため、2泊3日するんだぜ。
電車の到着時刻に合わせ、14時過ぎに最寄りの駅に迎えに出たぜ。改札から出てきたユリは、やはり可愛いぜ。
「ヒモ男くん」
「おっす。飯食った?」
「うん、でも甘いもの食べたい」
俺たちは商店街にあるカフェに入ったぜ。ユリはカフェオレとケーキを頼んだぜ。俺のおごりだぜ。
「新宿ってここからどれくらい?」
「15分くらいかな」
「近いね。6時までに行かなくちゃいけないから、ヒモ男君のおうちを30分くらい前に出ればいいかな……一応、余裕持って40分前くらい?」
「そうだね」
家に着くやいなや、時間が許すまで連戦し、ふたりでシャワーを浴びてから、ユリを駅まで送ったぜ。
ユリと別れて30分もしないうちに、ユリから電話がかかってきたぜ。
「はい?」
──ヒモ男くん? ママが私を追いかけて東京に来たって言ってる。どうしよう。
「あー……、俺が相手してよっか」
──お願いしていい? ママの連絡先送るね。
早速ユリの母親と連絡を取り合い、最寄り駅まで迎えに行ったぜ。もうすっかり暗くなっているぜ。
「ヒモ男くん、お久しぶり。悪いわねえ」
改札から出てきたユリの母親のナデシ子は、相変わらず無駄に色っぽい声を出すぜ。夕食をご馳走すると言うので、商店街の居酒屋に入ったぜ。
「ユリはどこへ行くって言ってた?」
「あっ、聞いてないっす」
「えっ? 変なの……まあいいわ。それにしても、あなたとユリがこんな関係になってるとはねえ」
「あ、いや、別に、そんなんでは……」
「だって、家に泊めるんでしょう?」
「は、はい、まあ……」
「隠さなくてもいいのよ。私だって知ってる子の方が安心だしね。ところで、あの子は何時ころに帰ってくるのかしら?」
「12時くらいって言ってました」
「迎えに行くの?」
「はい、駅まで」
「じゃあ、それまでは私と楽しみましょ」
ナデシ子は酔いに任せて、俺とユリの同級生たちの色恋沙汰や、俺の姉ちゃんが最近男と一緒にいるのをよく見るなどと、べらべらと喋りまくるぜ。
「あなたのおうちを見せてよ」
「えっ……?」
「未来のお婿さん候補がどんな生活をしてるか、親なら知る権利はあるんじゃない?」
「いや……あ、はい、まあ、そうっすね……」
時おり体をふらつかせて歩くナデシ子を支えながら、何とかマンションの部屋へたどり着いたぜ。
「あらあ、綺麗にしてるじゃない」
ナデシ子は家中を隈なく見回してから、持参した大きめのバッグに手をかけたぜ。
「今からあなたをテストします」
「テスト?」
スッと立ち上がったナデシ子がブラウスのボタンを外し始めたので、俺はその手を取って止めに入ったぜ。
「お、お母さん、何してるんすか!」
「いいのよ、あなたに見てもらいたいものがあるの」
ナデシ子は俺の手を振り払い、するりとブラウスとスカート脱ぐと、お色気MAXの黒いエナメルのボンデージのコスチュームが露わになったぜ。俺が目のやり場に困っていることを面白がりながら、バッグから次々とSMグッズを取り出し、テーブルの上に並べ始めたぜ。黒い手袋やタイツを身につけたナデシ子は、
「あなたも脱ぐのよ」
と高圧的に言ったので、逆らえないことを悟った俺は、ナデシ子の命令に従ったぜ。目隠しをされ、腕や足を縛られ、鞭やロウソクの攻撃に耐えたぜ。いつか似たような光景を夢に見た気がするぜ。四つん這いの俺に馬乗りになったナデシ子の歓喜の笑い声を聞きながら、必死になって部屋中を動き回っていると、
「ちょっと、ママ!? 何なのこれ……」
というユリの声が聞こえたので、俺は四つん這いのまま急いで目隠しを外したぜ。俺から降りたナデシ子はユリのそばへ行き、立ち尽くすユリの肩に手をかけたぜ。
「ユリ、あなたがどこに行ってたか、私は知ってるのよ」
「えっ!?……何で?」
「安心なさい、あなたと私は似た者同士。血は争えないってこういうことね。2、3日前に、私の昔の馴染み客から連絡があったの。『カミダノミユリちゃんってナデシ子さんの娘さんですか?』ってね。その人こそ、あなたが今日女王様体験をしに行ったSMクラブのオーナーなのよ」
ユリの目は大きく開かれ、じっと母親を見つめていたぜ。
「じゃあ……ママも女王様だったの?」
「そうなのよ。言うきっかけがなかっただけで、別に隠してたわけじゃないんだけどね」
「パパは知ってるの?」
「パパは元お客さんよ」
「うそ……」
「今でもたまに呼ばれて店に出るのよ。私が時々東京に出てたこと知ってるでしょ?」
「うん……でも、パパはそのこと知ってるの?」
「もちろん。パパ公認よ。あくまでも仕事だもの、なんてことないわ。私の心はパパのものだから」
「信じられない……パパの寛容さにびっくり。パパのこと見直した!」
「そうでしょう? だから、今ヒモ男くんをテストしてたのよ。ユリの性癖に付き合わせられるかどうかね。ヒモ男くん、あなたは合格よ」
ユリは俺のそばへ駆け寄り、俺を立たせ、腕を絡ませてきたぜ。
「ヒモ男くんのお陰で自分のSっ気に気づいたの。感謝してるんだよ、ヒモ男くんには」
と言い終わると、俺の頬に軽くキスしたぜ。
「まあ、お熱いこと。あなたたち、お似合いよ」
俺とユリは互いに照れながら、笑顔で見つめ合ったぜ。
「さて、お邪魔虫は帰るわ」
「お母さん、もう遅いんで泊まって行ってください」
「あらヒモ男くん、ご心配ありがとう。でももうホテルを取ってあるの。一泊したらパパの元へ帰るわ。早くパパにあなたたちのことを伝えたいし」
ナデシ子がタクシーに乗り込むのをふたりで見送ったぜ。
「隠し事がないって、楽でいいね」
ユリはマンションのエレベーターの中で嬉しそうにそう言って、手を繋いでいる俺の肩に頭を乗せたぜ。
「女王様体験面白かった。明日も行くんだ」
「じゃあ、お昼はどっか出かけよっか」
「うん!」
部屋に戻り、ユリは店でしてきたことを俺を使って復習したぜ。勉強熱心な女王様だぜ。
(了)