見出し画像

コミュニケーションの教科書

コミュニケーションに悩んだことのある全てのセラピストへ向けて記事を書きました。

僕の以前働いていた病院では、入職3ヶ月目くらいで部長との面談がありました。

そこで新人さんたちから挙がってくる悩みの多くが、
「患者さんとのコミュニケーションに自信がない」というものなんですね。

最初はそんなもんだよ、
って受け止める先輩が多いようですが当人にとっては切実な悩みですよね。

僕もそうでした。
患者さんどころか同期とのコミュニケーションにすらつまづいてましたから(笑)

考えてみれば当たり前です。
同じ年代の、同じ目標を持った同級生と過ごしてきた大学あるいは専門学生生活から数ヶ月しか経っていないんですから。

年代は違うし、病気を抱えた、それも難聴や認知症のある高齢者と何を話したらいいか分からないのは、
ある意味仕方がないこと、なのかもしれません。

「とりあえず世間話からで構わない」
というのがよくあるアドバイスですが、その世間話が難しいから悩んでるんですよね。

コミュニケーションについて学ぶ場がない

考えてみると、僕らは今まで「会話」について誰かから学んだことがありません。

日本語は両親から学びます。
道徳も学校で習います。
社会人としてのマナーも研修で叩き込まれます。

でも、コミュニケーションについては誰も教えてくれない。

なぜか。
形にするのが難しいからです。
誰も正解を知らないからです。

「相手の話はちゃんと聞きましょう」

当たり前の言葉でしか表現されてこなかった「コミュニケーション」というスキル。
僕は長いこと、それは生まれつきのものだと思ってました。

コミュ力のある人と、ない人がいる。
それは持って生まれた能力値の差、なのだと。

いろいろ勉強してわかりました。
コミュ力は生まれつきの能力ではありません。パーソナリティ(性格)の差の問題です。

だから、変えられます。
患者とのコミュニケーションに悩まなくてもよくなる方法をこれからお伝えしていきます。

そのために、まずはパーソナリティの話からしていきたいと思います。
以下に詳しい記事があるので、ぜひ参照してみてください。

自分の性格を知ることが必要

その人のパーソナリティ(簡単に言えば性格)を構成する要素はいくつかありますが、
外向性はその一つです。

【5つの特性で表される性格分析】
性格分析の中で最も信頼性が高いと言われているビッグファイブでは、性格を5つの特性に分類しています。

🍁外向性:社交性を表す
🍁協調性:やさしさを表す
🍁誠実性:まじめさを現す
🍁開放性:好奇心を表す
🍁神経症傾向:心配性を表す

あなたの一番高い性格特性はどれでしょう?

そして重要なのは、
パーソナリティの半分は遺伝子で決まる、という事実があるということ。

もう半分は今まで身を置いてきた環境で決まります

つまり、変えられる余地がある。
でも重要なのはパーソナリティを書き換えることではありません。

気がついて欲しいのは、外向性はパーソナリティとして半分は持って生まれるけれど、
コミュニケーション能力とは関係がない、ってことです。

物静かだけど話していて落ち着く人っているじゃないですか。
そういう人ってコミュ力高くないですか?

逆にめっちゃ元気で声も大きいけど、そっとしておいて欲しい時に遠慮なく話しかけてくる人っていますよね。
コミュ力低いじゃないですか?

外向性が高いから良い、ってものじゃないんですよね。
内向的な人にも良いところっていっぱいありますから。

パーソナリティを変えようとするんじゃなくて、
僕みたいな内向的な人がコミュ力を上げるためにはどうすればいいか、
を考えればいいわけです。

そしてそれは、
外交的な人がコミュ力を上げる方法とは違う、ということ。

まずはこのことを理解するのが大切です。

内向的な人が陥る罠

ここからは、内向的な人が陥りがちな罠について説明していきます。
僕もハマった罠です。

「人と話すのがめんどくさい」

これです。

自分で言うのもなんですけど、内向的な人って心根が優しい人が多いんですよ。
だから他人と会話していると、相手のことを考えすぎてしまう。

「こんなこと聞いていいのかな」
「自分はどんなふうに思われてるんだろう」
「嫌われたなくないな」

って。

ひとりぼっち=かわいそう、ではないんです

だから一人の方が楽なんです。考えなくて良いからね。
でも仕事となるとそうもいかない。

患者さんとコミュニケーション取れない人が、
同僚と楽しく会話してる姿ってあまり見かけない気がします。

僕なんか一人になりたくて、臨床と臨床の合間にロッカーに行って一人で水分補給してましたから。

時には良いと思うんです、それでも。
自分の心が休まるのであれば。

けれど、コミュ力を鍛えようと思ったらそうするべきじゃない。

コミュ力を上げるために一番大切な習慣は「人と話すこと」です。
当たり前なんですけどね。

でもね、これが意外とハードルが高い。
内向的な人は、他人との対話に重きを置かないパーソナリティを持っているからです。

生きていけるんですよ、別に。人と会話しなくても。
それで辛いとか寂しいとか、あまり思わないんです。

むしろ一人で本読んだり映画見たりする方がいい。
もちろん個人差はありますけど、僕はそうです。

でもね、それじゃあ成長しません。感情が動きません。
人生って結局は人との関わりで出来上がる道のりなんです、きっと。

そのことに最近ようやく気がつきました。

外向性が最低レベルに低い僕でさえ、
店員さんに笑顔で「ありがとうございました!」って言われたらあったかい気持ちになりますもん。

美容師さんと世間話をしながら散髪してもらった後は、体も軽くなった気がしますもん。

人間って社会的な動物なんです。オラウータンと違って。
知ってました?オラウータンは単独で生活する類人猿なんですって。だから別名「森の賢者」って言われてる。

群れを作る必要がないってことです。はたして人間はどちらなのか?

僕らは街の賢者にはなれません。
それに、人と対話することを避けると協調性が低下します。

協調性って、簡単に言えば「優しさ」です。
これも人格を構成するパーソナリティの一つになります。

よく人と合わせることができるかどうかで、協調性のある・なしが判断されますよね。
他人と関わらない人が低くなるのはある意味当然だと思いませんか?

もちろん、協調性も高ければいいってものではありません。
パーソナリティはただの個性ですから。

ただ、
人との関わりを大切にして相手に合わせがちな人の方が幸福度は高い、
と言われているのも事実なんです。

「すべての悩みは対人関係である」と心理学者のアドラーは言っていましたが、
もう一つ引用するなら、
「すべての喜びも対人関係によってもたらされる」んです。

だから、
今より少しだけ積極的に人と関わる努力をしましょう、ってことですね。

とは言っても、
じゃあ具体的にどうすれば良いの?ってなると思うので、
ここからはコミュニケーションに使える知識とスキルについてお話ししていきます。

コミュニケーションに使える知識とスキル

1、一番大切なこと

自分が何を話すか、ではなく、相手が何を話したか

僕を含めて多くの人が勘違いしていたと思うんですけど、
コミュニケーションにおいて何を話すのかって、実はあまり重要じゃないんですよ。

興味がない話をベラベラ話す人って別にコミュ力高くないじゃないですか。

大切なのは、相手がどれだけ話したか、です。
そして、
相手が何を話したのか、に着目できているかどうかです。

そのためには、
相手が話しやすくなるような雰囲気を作ってあげる必要があります。

2、相手に興味を持つ

何を話そうかな、って悩んでる時って、思考のベクトルが自分に向いてるんですよね。

僕自身、これに気がついた時にハッとしました。

それじゃあダメなんです。

本質は、
「なんて言って欲しいのか」
「どうして欲しいのか」
「何を考えているのか」
を考えること。

思考のベクトルを相手に向けるんです。

そして、今の自分に何ができるのか、を考えてそれを実行する。

その繰り返しです。

3、好感度を上げる4つのテクニック

抽象的な話が続いたので次は具体的な話です。
FBI捜査官が情報提供者と信頼関係を築くために使っていた方法がとても参考になります。

Ⅰ 近接: 相手との距離を近くする

通りを歩いている男女が恋人同士なのか同僚なのか、それは二人の物理的な距離を見れば一目瞭然ですよね。

一般的に親密な相手ほど、人は自分のパーソナルスペースに入ることを許可します。

それを逆手に取った方法になります。

物理的に相手の近くに寄ることで、近しい関係であると脳に錯覚を起こさせるわけです。

専門的に言えば認知的不協和を利用して、好きだから近くにいる、を、近くにいるから好きになる、にすり替える。

簡単に言えば、仲良くなりたい人と話すときは近づけ、ってことです。

でも最初から近づきすぎるとお互いにストレスなので、
会話の中で近づいたり離れたりを使い分けると良いと思います。

対患者であればセラピストはやりやすいと思いますよ。

Ⅱ.頻度: 相手と会う回数を増やす

別名ザイアンスの法則と呼ばれる手法で、僕たちも常日頃から使われてます。

なんだと思います?

テレビやYouTubeです。
一般的に人は、よく見かける相手やよく会う人に好感を抱きやすい。

タレントや芸能人がCMに出るのは、広告収入をもらう事以上に好感度を上げたいからです。
視聴者の目に留まる事で。

この「単純接触効果」を利用した広告は最近YouTube(Google)でよく見かけるようになりました。

あるYouTuberの動画を再生した人には、それ以降その人の広告動画が配信されるようになる。

Googleの広告設定ではそんな事が出来るんです。

じゃあ僕らセラピストが使うとしたらどうすればいいか。

同僚に対しては、世間話なんてしなくていいから挨拶だけはする。
患者さんに対しては、他セラピストが介入してる場合でもひと言声をかけてみる。

「頑張ってますね」でも、
「脚の調子はどうですか」でも、
なんでもいいんです。

大事なのは内容じゃありませんから。

Ⅲ.持続時間: 相手と一緒にいる時間を長くする

最初のデートで朝から晩までのプランを立てるのはナンセンスですけど、
仲良くなったら一緒に過ごす時間って自然と長くなりますよね。

そういうことです。

時代が動いてアプリで恋人を作る人が増えてきましたけど(これからはどんどん主流になるでしょう)、
今のところ結婚する人達で一番多いのは社内婚です。
次は元同級生。

一緒に過ごす時間が長い人たちですよね。

隣にいて居心地が悪くない、ってかなり重要なことなんです。
セラピストは有利ですよ。
患者さんと一緒にいる時間が長いから。

もちろん勤め先によって変わりますけど、
少なくとも介護・看護師より一回の介入時間は長いですよね。

それだけ親密になりやすいってことです。

Ⅳ.強度: 言葉、態度の強度を上げる

ここから先は

4,202字 / 2画像

¥ 300

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?