バーンアウトの対処法 〜理学療法士の燃え尽き症候群〜
前回の記事で、燃え尽き症候群(バーンアウト)の概要をお伝えしました。
バーンアウトは対人援助職が陥りやすいとされています。
患者や医療者との関わりが重要な役割を果たす理学療法士もまた、バーンアウトに悩まされる可能性が高いと言われています。
そこで今回は、
スペインの理学療法士を対象とした論文を基に、バーンアウトの実態とその対処方法についてお伝えしていきます。
まずは、上記参考資料である論文の詳細から。
対象
評価バッテリー
日本語に対応した簡易チェックが上記サイトから行えます。
気になる方は試してみてください。
結果
バーンアウトになりにくい要素
①経験年数が長い
経験年数が浅い人は、以下の要因によってバーンアウトのリスクが高くなる
②大学院を卒業していない
高度な専門資格や知識を持っているが故に、以下の要因によってバーンアウトのリスクが高くなる
身につけた知識、技術を適応することが不可能になった結果、バーンアウトに至るということですね。
当然、意に沿わない業務を命じた組織への好感度が下がり、それがさらにバーンアウトのリスクとなります。
バーンアウトへの対策
かなり多くの理学療法士がバーンアウトに陥っていることが理解できたと思います。
個人的にも、当てはまる項目が多くてびっくりしました…汗
さて、ではバーンアウトしないために出来ることはないのでしょうか?
意外なことに、
エビデンスに基づいた治療(EBP)によってバーンアウトが改善することが分かっています。
スペインの看護師は、EBP を実施する上で次のような障壁があると報告しています。
これらの側面は理学療法士の仕事状況にも当てはまりますね。
異なる研究報告によると、
EBPを実践する機会の少ない医師はバーンアウトしやすい傾向があることが判明しています。
EBPの実践を後押しする一つの方法として、
EBPを実行する高い能力があると自己認識することが、EBP使用量の増加と相関することが分かっています。
経験年数が多いとバーンアウトしにくいというのは、こうした理由なんですね。
では、EBP の実践によってなぜバーンアウトしにくくなるのでしょうか?
対象とした論文ではいくつかの理由が挙げられています。
そのうちのひとつは、
EBPの実践によって「個人的達成感の低下」を改善する可能性がある、というものです。
これは、より効果的であると思われる治療介入を通じて、
スキルの習熟感と自己効力感が改善されることを意味しています。
同時に、EBP に基づいた行動とケアを実施することで、
リハビリ介入に伴う不確実性の感覚が軽減し、バーンアウトの予防につながります。
参考論文では、「EBPQ-19」という質問紙を用いてEBPの実践度を評価しています。
EBPの実践
EBP は、「実際のケアに活かすための意思決定を⾏うプロセス」のことを指します。
そしてこれは以下の5段階に分類されます。
Step1: 患者へのケアに対する疑問の定式化
「どのような患者に対して、どのようなケアをすると、どのようなケアと比べて、 どのような結果が得られるのか」
Step2: 患者へのケアに対する疑問についての情報収集
「Step1 で定式化した疑問について、関連する文献を検索する」
Step3: 得られた文献の批判的吟味
「チェックリストを用いて⼊⼿した文献を評価し、臨床で適用可能かを検討する」
Step4: 得られた情報の患者への適用
「医療従事者の臨床能⼒、患者の価値観をふまえて、実際の患者へ適用する」
Step5: 1〜4 の Step の評価
「エビデンスに基づく実践の結果を評価する」
「EBPQ-19」において、
EBPの実践レベルが高いとはどのような状態を指しているのでしょうか。
最後に確認してみましょう。
EBPの実践度チェック
以下の項目に「Yes」と答える数が多いほど、EBPの実践レベルが高いことを意味します。
大学病院に勤めていたり、積極的に学会発表を行なっている職場に勤めていないPTでは、
なかなか上記の項目に複数該当する人は少ないような気がします…
だからこそ、バーンアウトしやすいのかもしれませんね。
いずれにせよ、
日々の臨床で感じた疑問点を自分で調べて、治療介入の方法を変え、その結果がどう出たのかを評価する。
そのくらいの試みは続けていきたいものです(患者さんのためにも)。
ただ単にルーチンでマッサージするだけのセラピストはバーンアウトしやすい、
というのは知っておいて良いと思います。
難しいのは、
頑張って勉強したり資格を取ったりしても、それが全く活かせない、評価されないとなると、それもまたバーンアウトの原因になるという点です。
ここは管理者の人にぜひ知っておいてもらいたいですね(汗)
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