はじめてのインスタントポット:魅惑の納豆メイキング
インスタントポットを買った理由の一つが、鍋一つで簡単に納豆が作れること、だ。アメリカでも日本人が多いカリフォルニアとかなら日系食料品店でなんでも買えるのだろうが、田舎だと日本食材全般手に入れにくい。私の住んでいる町から直近で納豆を売っている町まで120キロほどで、まさに東京から茨城県の水戸まで納豆を買いに車を飛ばすようなものだと言ったら距離感がわかってもらえるだろうか。買えるときに沢山買って冷凍保存しておき1パックずつ解凍してはありがたくいただく。いっぱい食べたくなった時は買ってきた稀少な納豆を種菌にして家で納豆を作る。大豆は自然食品の店で手に入るのでそれを一晩水につけて圧力鍋で蒸し、少量の納豆を混ぜて摂氏45度で一日発酵させる。発酵は、以前は園芸の育苗用ヒートパッドをサーモスタットにつなげたものをクーラーボックスに入れて使っていた。少量だけ作るのも難しいので1回に2リットルくらい仕込み、半分は納豆好きの友達にあげる。滅菌作業やボックスのセッティングが億劫になり最近作っていなかったがインスタントポットを使えば大豆を蒸すのとその後の発酵を鍋ひとつでできるので手間も場所もとらず好都合だ。
知らない人に励まされる
SNSで日本人のインスタントポット利用者が意見交換する場があり会員になった。インスタントポットはカナダ発で最初に北米で爆発的に売れたこともあり、そのコミュニティも海外在住者が多い。レシピのシェアや機材の使い方の質問が主だが、中でも納豆の作り方は終わることのない熱いトピックだ。誰かが納豆作りに失敗したと写真を載せれば、わっと、次はああしたらよい、こうしたらよいというコメントが集まる。海外では私と同じく納豆入手に苦労している人が多いのだろう。それぞれに納豆の作り方について熱く語る。なかにはものすごく発酵に詳しい人たちが居て読んでいるだけで大変な情報量だ。いままで作ったことのない人がインスタントポットを買ったのがきっかけで初めて作ってみたと写真を投稿すれば、うまくできて良かったですね、私も作ってみます等、会話が弾む。
煮る派?蒸す派?
納豆を作るときいくつか押さえないといけない点があるが、ひとつ重要なのは大豆が十分に柔らかくなるまで調理することで、よく言われるのは親指と薬指で豆をつまむと簡単につぶれる程度のやわらかさ、になっていること。十分にやわらかくなっていないと発酵中に豆が縮むときにかたくなる。さて豆を柔らかくするにあたって、豆を煮る派と蒸す派に分かれる。煮る派の人にはさらに選択肢がある。豆を吸水してから煮るか、乾物のまま煮るか。インスタントポットを使えば乾物の豆をあらかじめ水にひたして戻さなくともいきなり煮ることもできるらしいのだ。アメリカのインスタントポット社のサイトによれば大豆2カップに豆がかぶる程度の充分な量の水を入れて、圧力強設定、クイックリリースで、乾燥大豆を使うなら圧力調理時間35分、吸水した豆ならば17分でゆであがると記載してある。(クイックリリースとは圧力弁を開けて強制的に圧を抜くこと。)SNSのコメントを読んでいると一度茹でこぼして水を変えてから茹でなおす人等、いろいろだ。私は大豆を蒸す派なので、煮た場合の調理時間がこれくらいの時間で本当に納豆に使えるやわらかさになるのかはよくわからない。何故わたしが蒸す派なのかというと蒸したほうが豆の皮が外れにくく味が濃い、それから調理後の鍋と蓋を洗うのが簡単だから。私は大豆を一晩吸水させてからざるに入れて強圧で1時間蒸し、ナチュラルリリース(自然に圧力が下がるまで放置)する。
そのまま鍋で発酵か容器に詰め替えて発酵か?
柔らかくなった大豆が熱いうちに市販の大豆を少量お湯で溶いたものを混ぜ合わせる。SNSの投稿によれば納豆菌の素をお湯で溶いて使うほうが仕上がりが確実らしいが、私は解凍した大匙1ほどの納豆で特に問題なく作れている。ここでそのままインスタントポットの内鍋に直に豆をキープしてヨーグルトモードで発酵に入る派と別容器に入れ替えて発酵する派とに分かれる。私は別容器派だ。ガラスの容器に小分けしてから、針で細かく穴をあけたサランラップを豆の上層に密着させる。これは市販のパック入り納豆には薄いビニール膜が密着しているのを自己流で真似たもの。鍋の中の水滴とか余分な水分が外から入らなくていい感じ。豆を蒸すのに使ったインスタントポットの内鍋はいったんきれいに洗い、水は張らずに乾いた状態で豆をいれた容器を並べる。ヨーグルトモードで摂氏45度で24時間の設定をしたらキッチンペーパーを内なべのうえにかけて蓋を軽く置いて放置。空気が入ったほうがいいので蓋は圧をかけるときのようにかっちりとは閉めない。もしかしたら内鍋で直接大豆を発酵させた方法のほうが空気が当たる面積が広くて良いのかもしれないが、発酵後に粘りが増してから小分けしたりネバネバいっぱいの内鍋を洗うのは嫌だから自分は発酵前に容器にいれてしまう。SNSのコメントによれば豆はなるべく平たい状態で空気に触れるようにして発酵すべしという話で「豆が重なっても厚さは3センチ程度に」とのことだ。
ネギ
最後に、趣味のガーデニングとインスタントポットによる納豆メイキングがここで融合する。毎度納豆を食べる前にアクアリウムのような園芸用ライトに照らされながらインドアで育つ青ネギの前に立ち、「さて今日はどれを切ろうかしら」とキッチンバサミ片手にネギ鑑賞をする。青ネギというのは素晴らしく旺盛で切っても切っても伸びてくれる。もとをたどればこの青ネギは春先にアジアンマーケットで買った活きのよい太めのネギの根(生ごみ)をガーデンに埋めておいたもので、夏中繰り返し青い部分を収穫したのになぜか株数さえ増えて、晩秋にプランターに植え替え家の中でまだ収穫している。新鮮な刻みネギがいつでも食べられるのはすごくありがたい。チューブ入りの練りからしと麺つゆとたっぷりの刻みネギとともにぐるぐるかき混ぜれば、おいしい自家製納豆の出来上がりだ。インスタントポットについてはまだ書きたいことがあるので、それはまた後日。