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術前検査てんやわんやと感謝、感謝、感謝

手術を控え、術前検査をすることになった。

血液検査、心電図、エックス線など一通り。
これで終わりかなと思ったら、循環器の先生が言う。

「心電図、ちょっと気になるから運動負荷後の心電図をとりましょうか」

そんなわけで、安静時の心電図をとった後、2段の階段を3分間昇り降りした後の心電図をとることになった。

看護師さんがとても優しく、1、2、3、4、5のカウントのうちどのタイミングで毎回振り返ればいいか、振り返った後に出す足は左か右かどちらかとどうでもいいようなことを聞いたときにも笑顔で答えてくれた。


運動負荷心電図のデータを先生のところに持っていくと、先生は渋い顔をする。

「いやあ、微妙。98%大丈夫だと思うんだけど、このまま送ると麻酔科医が嫌がる」

手術では器官挿管しての全身麻酔をすると聞いていたが、この結果のままでは麻酔はできないという。

狭心症の疑いを晴らす必要があるとのことで、心臓専門の病院でトレッドミル検査をすることになった。


トレッドミル検査というと、ベルトコンベアの上を歩くやつだ。


先生は紹介状を書きながら言う。

とにかく日にちがないから、週明けすぐに行ってくること。ゴーサインをもらってくること。もしもゴーサインがでなければ、今回の手術は延期で別の治療が必要になること。結果が出たら、自分に電話かメールすること!


気持ちがゆっくりしないまま週末を過ごした。

オンラインで予約をとり、昨日の朝、紹介状を持って病院に向かった。
以前かかったことがある病院で、ありがたいことに昔診てもらった先生が外来に出ている日だった。

紹介状を読んだ先生が言う。

「そうなんですよ、〇〇先生のおっしゃる通りです。おそらく大丈夫なんですが、患者さんをこのまま手術に送るわけにはいかないんです。手術中に心筋梗塞になったら大変ですから」

先生の見立てでは、階段を昇り降りする検査でひっかかったのだから、トレッドミル検査でもひっかかる可能性があるため、造影剤を入れて冠動脈CTをした方がよいそうだ。

造影剤、冠動脈CTと聞いて、思考が一瞬止まった。


数秒考え、このままではどうにも何にも進まないので、やることにした。

腹が減っては戦ができぬというではないか。

午後からの検査に備え、中華料理屋さんに入る。
私が何をするわけでもないが、気合いを入れるためには食べたほうがい。
青椒肉絲セットを頼み、サラダと杏仁豆腐をお代わりした。
夫は四川麻婆豆腐を注文し、大好物の杏仁豆腐が食べられて嬉しそうだった。

病院に戻るとすぐに、トレッドミル検査の部屋に案内された。

明るい看護師さんがずっと話しかけてくださる。
スペインのこと、夫のこと、趣味のことなど、いろいろご質問頂いたが、ベルトコンベアの上を早足で歩きながら答えるのはいささか難しい。心拍数がだいぶん上がっているが大丈夫かと聞かれる。大丈夫です、まだできますと答えると、傾斜とスピードがひとつ上がった後、しばらくして検査は終了となった。


ベルトコンベヤから降り、CT検査へ向かう。
造影剤を入れるのに戸惑いがあったが、今日この病院でできるのだから全てお任せしようと思った。

検査室の前にいると、夫がふー!と言う。
ああ、心配しているのか。
そう思ったのに、今回も違った。

「あのね、私、あっちに行っていましょうか。おそらく私は検査室に入れないことですしね?」

上目遣いで伺いをたてる夫を見て理解した。

この人は、院内のテレビで放送している高校野球が見たいのだ!


夫の意図を察した私を見た夫は、視線をそらした。


「し、心配は心配なんですよ!でも、私部屋に入れないでしょう?そしたら、ここよりもテレビのあるところにいた方がいいですよね。試合、とっても白熱しているんですよ。私だけでも見ておかないとと思って!」

夫を待合室に送り出し、検査室に入る。

検査着に着替えたはずが、気持ちが慌てているのだろう。
いざ筒の中に入るぞというときに、下着を脱いだかどうかわからなくなった。

「すみません、私ブラジャー外しましたか?」

ムロツヨシ似の検査技師さんは、私の検査着の肩のあたりをそっとまくり、肩のあたりには何も見えませんが、と優しく教えてくれた。

血管を広げる薬やら心拍数を下げる薬が投与された後、造影剤が入ったときはびっくりした。

体が熱くなりますよと言われたが、おしっこを漏らしたか?と思うような不思議な感覚を覚えたからだ。

「皆さんそうおっしゃるんです!」

看護師さんが後から教えてくれてほっとした。

夕方、名前が呼ばれたので先生の部屋に入る。


どうでしたか?検査はこわかったですか?

いたずらっ子のように目をきらきらさせて先生が言う。

自分の心臓はこんな風になっているのか。
初めて見る画像に感動していると、先生が言う。

「全く問題ない。正常です!」

疑いが晴れてよかったと安心する先生にお礼を言うと、手術がんばってきてください!とにこにこ顔で送り出してくださった。

後から聞いたら、大学病院での冠動脈CTは通常1-2か月待ちとのことだった。当日検査をしてもらえたのは奇跡であり、本当にありがたいことだった。

その足で、手術をする病院に向かう。結果レポートを渡すためだ。受付で経過を話すと、循環器の先生が受付まで来てくださった。ふふふと笑いながら椅子の後ろに立っている先生は、エルサレムで見た神様、ヤマアラシのようだった。

「これで安心だ。よかったですね!」

慌ただしく決まった手術に向けて、先生や看護師さんや紹介先の病院の先生がなんとかこいつをどうにかしてやろう!と動いてくださっている。最初から最後まで感動しっぱなしだった。ありがとうを何度言っても足りない。

私はどうやってお返しできるだろうかと考えたが、それはやはり元気でいることだ。

15日朝、検温する。

入院数日前から朝と夕方に体温を測らなければならないのだ。


37.2℃だった。

ここ数日はずっと36.6℃だ。

微熱だろうか。
顔もかゆい気がする。
造影剤の副作用だろうか。

病院の先生から連絡が来ていたので、お礼の返事を書くとともに現在の状況を一応伝えておいた。

2時間後、先生から連絡があった。

コロナだったら手術ができない、副作用だったら抗アレルギー薬を処方したほうがいいかもしれない、午後に病院に来てもらいたい

昨日のCTでゴーサインが出たと思っていたが、そういえばコロナの検査はしていなかった。

めちゃくちゃ元気なので大丈夫だろうとは思ったが、万が一手術ができなければ先生方に合わせる顔がない。あんなにいろいろ手術に向けて準備して頂いたのに、私のせいでキャンセルにするわけにはいかない。

慌てて支度をして病院に向かった。


「見るからに元気だから、きっと陰性でしょう」

看護師さんにそんな風に言われながらも少しばかりの不安はあったため、実際に陰性の結果をもらったときはほっとした。




今、スイカを食べながらこのnoteを書いている。

「まさにてんやわんやですね」

今日の病院からの帰り道、夫が笑った。


手術が決まるまで、そして決まってからも何が何やらわからないまま進んできたが、ようやく明日は深呼吸して過ごせそうな気がしている。


私の仕事というのは特にない。
明後日に向けて気持ちを整えるだけだ。

とにかく感謝、感謝、感謝しかない。


一泊二日なので、始まったらあっという間に終わって帰ってくるだろう。

それでは、行ってきます!

皆さまもどうかステイ元気に!!

にゃー!



















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