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十二月大歌舞伎・二部『加賀鳶』『鷺娘』*着物用コートの季節が到来!

昨日、千秋楽を迎えた歌舞伎座。地下のお土産売り場がヤケに空いていて……。私、時間間違えていた。

『鷺娘』の絵看板を浮世絵と比べてみた
歌川国貞・昨「東八景ノ内 中村歌右衛門」

30分早く着いちゃったので、普段やらないことを色々とやってみた。歌舞伎座の入り口を眺めたり……。

この日は防寒コート(着物用のウールコート)の初おろしだったので、地下のロッカーを利用してみた。幕間の休憩時間に、同じ列の手慣れた感じの人(紙袋を横倒しにして、素早く、椅子の下に入れていた)を追いかけ、鯛焼きを食べてみた。餡子に紅白の白玉が入っているので、さほど大きくはないのに、お腹が膨れる。

めでたい焼き

さて、一幕目の『盲長屋梅加賀鳶(めくらながやうめかがとび)』は時間も長く(100分)、「河竹黙阿弥の芝居を見た」という印象。内容がハードで、幕末の『不適切にもほどがある』だわいなぁ。

加賀鳶とは加賀藩お抱えの大名火消し。ダブルワークの鳶職だ。序幕『本郷木戸前勢揃い』は歌舞伎らしい七五調の台詞が見所。対立するグループとのケンカで、集まってやってきた若い衆を、日蔭町の松蔵(勘九郎丈)と、天神町の梅吉(松緑丈)が止める場面だが、後のストーリーには繋がらない。というのも、過去に六代目・菊五郎が、加賀鳶のくだりをはぶいて、悪役・道玄のドラマに場面を絞ったからだ。

文字通り、揃いの半纏を着た加賀鳶が花道にずらりと居並ぶ、「歌舞伎版レビュー」のような場面で、若い左近くんのバレリーナのような脚首にうっとり。

ええと、道玄の話だった。

按摩の道玄(松緑丈・二役)は小悪党。御茶ノ水の土手で「強盗殺人事件」を起こす。その後、女按摩・お兼(雀右衛門丈)の姪・お朝(鶴松丈)の奉公先へ、金をゆすりに行く。そこへ、松蔵が現れて、道玄に迫る。松蔵は、道玄が土手で落としていった煙草入れを拾って持っていたのだ。「マズイことになった」とお兼に目配せする道玄。すかさず、松蔵が10両の身銭を切って仲裁し、漢気を見せて話が終わってしまうのかと思ったら、本郷の東大の赤門前(旧加賀藩邸)での、だんまり(真っ暗闇)の捕物が始まり、笑いで幕を〆た。

二幕の舞踊(所作事)『鷺娘』は「七之助を観た」感じで、三味線が素晴らしかった。息を殺して見つめ、あっという間に終わってしまった。立て唄の芳村辰三郎さんは、滔々と歌いあげ、若々しい。三味線・杵屋五吉郎さんの合方(三味線だけの独奏部分)は、めっちゃ速い。長唄『鷺娘』の魅力を再認識。

ちなみに、『鷺娘』の舞踊は「地獄の責め」に着目することが多いけれど、七之助丈がやりたかったのは、命の炎が消える間際の一瞬の美しさだったのではないか? 

歌舞伎座の広い舞台をアクロバティックに動き回る姿よりも、止まっている姿を美しく感じた。七之助丈の舞踊『鷺娘』への新解釈なのか、自然とそうなったのかは、今の私にはわからない。

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