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『トッカン the 3rd おばけなんてないさ』(高殿円 著)

※ちょっとだけネタバレ(?)します。

【内容】
東京国税庁の新米徴収官の鈴宮が、様々な税金未納者から税金を徴収するために奮闘する。
『トッカン』シリーズ第3巻。

【感想】
『おばけ』をテーマ、題材にして、幾つものレイヤーで話を積み重ねていく物語構成となっている本でした。

出てくるエピソードは…
新興宗教、檀家制度、災害支援、生活保護、家庭内DV、公務員の守秘義務、売掛金問題…
相変わらず、多岐に渡るネタで、大人の社会科見学的な面白さがありました。
毎回鬱陶しくない程度になることを考慮しながらも、知識やアイデアをギッシリ詰め込んでいるのもこの作者の本の魅力だと感じました。
この『トッカン』のシリーズにしても、『上流階級』のシリーズとしても、キャラクター小説として、量産しようと思えば量産出来るのでしょうが、なんならアイデア1つでそれなりの展開を引っ張れそうなのにそうしていない…

あと、毎巻毎巻、キャラクター設定の説明や、前巻のストーリーなどをちゃんと説明しているのも、エンタメ作品としての敷居を低いものにしているのだろうなあと思いました。
サブキャラなどは特に、記憶があやふやになっていたりするので、そこら辺の親切さも、こうしたエンタメ作品には必要なのだと感じました。

あと、なんでこんなに筆者の作品に惹かれるのかなあと思っていたら、自分とほぼ同世代の人のようで、就職氷河期時代の人ならでは仕事に関する感覚とか近いものあるのかなあと…

あとこの作者の本で毎回残念だなあと感じるのは装丁で、チープな装丁にしてしまうことで、かねりの読者を取り逃しているのではないかと…
この本の持つ密度感と、社会問題にもズバッと切り込んでいる内容を考えると、もっとシリアスめで密度感を感じさせる装丁にしたら、もっと読者を獲得できるのではないでしょうか。
もともとラノベを書いていたり、コメディタッチの作品だったりして、編集部もそこら辺の延長線上でしか作品を見ていないのではないかと…

https://www.hayakawa-online.co.jp/smartphone/detail.html?id=000000003080

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