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『チ。-地球の運動について-(アニメシリーズ 9〜15話)』〜陰鬱な展開の果てに見える希望ーー『チ。』の深い世界
視聴環境:Abema
※ネタバレします。
【内容】
中世ヨーロッパをモチーフとしたフィクション。禁じられた地動説を命がけで研究する人間たちの生き様と信念を描く。
話題となった漫画を原作としたアニメシリーズ。
【感想】
「本を読めるということは、奇跡じゃないですか」
目を輝かせて語る、真理を追い求める少女のこの言葉が、物語全体の核を象徴していました。知識や知性、その効用をこれほど説得力をもって描いた作品は他にないのではないかと感じました。
一風変わった題名『チ。』には、「地球の地」「知性の知」「血液の血」という3つの意味が込められているとのことでした。そのシンプルさの中に、物語の深遠なテーマが凝縮されています。
物語が進むにつれ、キャラクターの配置や展開の緻密さが際立っていきます。一方で、話が進むごとに陰鬱さも増していき、読者に重いテーマを突きつけてきます。この暗さが、作品に独特の深みを与えているとも感じました。
しかし、漫画やアニメという表現形式を採用しているからこそ、テーマが驚くほど分かりやすく、理解のハードルが下がっていると感じました。これが純文学や哲学書であれば、もっと難解で取っ付きにくいものになっていたかもしれません。それをエンタメの文法で語ることで、誰もがそのテーマに触れ、考えることができる。『チ。』は、その意味でも優れた作品だと感じました。
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