『日本史の法則(著:本郷和人)〜元寇の役、それは無学が招いた危機だった
【内容】
東京大学史料編纂所で研究してきた著者が、日本史に関する独自の見解をまとめた本。
【感想】
この本で一番インパクトがあったのは…
元寇が日本を攻めた理由は、当時の政権運営者が無学で、モンゴルから丁重に送られた使者にきちんと対応しなかったために、怒ったモンゴル軍が軍隊を送ってきた。
嘘でしょ、そんなこと聞いたことない…
これは研究者の間では常識かもしれませんが、教科書には記載されておらず、私自身も今まで聞いたことがなかったので、非常に驚きました。
そこで、ふと思ったのですが…
「なぜ勉強するの?」と子供に聞かれた際、この事例はその答えとして最適ではないかと感じました。
モンゴル軍による侵略を防げたものの、結果的にこの対応の失敗が遠因となり、当時の政権は崩壊してしまったのです。もし学校の歴史教育でこの点をきっちりと勉強すれば、教育の大切さや、無学が危機意識の欠如を招き、破滅へと繋がるという教訓を伝えられるのではないかと思いました。
振り返って、私の学生時代に元寇についてどのように教わったか振り返ってみると、「神風」によって侵略を退けた、ということだけが強調されていた記憶があります。
これでは、元寇から学ぶべき教訓が全く伝わらず、むしろ誤った認識を植え付けてしまったのではないでしょうか。
実際、この「神風」によって「日本は神に守られている国だ」という誤解が広まり、その延長線上で第二次世界大戦における惨敗へと繋がっていく遠因の一つとなってしまった…
というか、無知ゆえに強者に噛みついて酷い目に遭うというパターンは、鎌倉時代から第二次世界大戦まで、同じこと繰り返しているのではとも思ったりしました。
近年の研究では、元寇で日本にやってきた軍勢の多くは、周辺国から召集された戦意が低い兵士たちだったことや、海戦に不慣れなモンゴル軍にとって、日本への侵攻は得意な戦い方ではなかったことがよく語られています。
また、この本にはそもそもモンゴル側の調査では、日本は文明レベルや資源面で魅力がなく、侵略する意味がないと記録されていたということにも言及されていました。
これからの学校教育では、こうした再検証された歴史を基に、子供たちにその本質を伝える手段として活用されることが望ましいと思いました。
私のようにそれなりに歳を重ねた者にとっては、新たな教訓や味わい深い学びの機会となりますし、こうした面から歴史を読み直すというのも、とても意義深いものであると感じました。
この本全体として、著者ならではの視点で、日本史をつまみ食い的に語っており、非常に興味深く読み進めることができました。
ただ、著者と他の研究者との関係性や対立のエピソードについては、私にはあまり関心がない部分で、単純に歴史の興味深い話に集中しても良かったのではないかとも感じました。
https://www.kawade.co.jp/sp/isbn/9784309631370/