見出し画像

『少年計数機 池袋ウエストゲートパークII(著:石田衣良)』〜現代の風俗と文化を描き出すシリーズ第二弾

【内容】
池袋西口の果物屋の息子のマコトは、“池袋のトラブルシューター”。依頼された難事件を次々と解決していく。
石田衣良の人気小説シリーズ『池袋ウエストゲートパーク』の第2作目。


【感想】
オール讀物推理小説新人賞を受賞した1作目と比べて、作者が書き慣れてきたからか、かなり読みやすく感じました。1作目は探り探り書かれたのだろうと想像させる部分があり、読みにくい箇所も散見されましたが、本作では文章がスムーズで、自然とページが進みました。もっとも、私自身がこの作者の文体に慣れてきたという要因もあるのかもしれません。
ただ、1作目のモノローグや比喩表現には違和感がありました。主人公マコトの内面というより、著者自身の年齢や知識が反映されすぎていて、マコトより10歳以上年上のインテリっぽさを感じたのです。それに比べると、本作ではキャラクターの自然さが増していたと思います。
物語の舞台となる地域に土地勘があることも、本作を楽しめた一因です。地名やちょっとした描写だけで、情景が鮮やかに浮かびました。池袋周辺を舞台にしたこの小説、住民でなければ書けないリアリティがあると感じました。当時『池袋ウエストゲートパーク』というタイトルが少々小っ恥ずかしいと感じたのも、地方出身者の物言いと感じたからかもしれません。
本作では、時代の世相やそこから派生する事件を巧みに物語に落とし込んでいました。たとえば、女性の日常のネット配信、非合法売春現場を襲撃する「パーティー潰し」、高級ファッションブランドのカリスマデザイナーといった設定。また、係数機で全てを数え続けるLD(学習障害)の少年や性転換した元女性といった、今っぽくキャラ立ちした登場人物も印象的でした。これらが独自の世界観を構築していたように思います。
作者は、現代の風俗や文化を丹念に描写することで、社会問題をリアルに紡ぎ出しています。この積み重ねが、本作の魅力を支えていると感じました。
また、最後の展開の巧みさも、この2作目の出来が、その後のシリーズを続けられる原動力になっているとも感じました。
宮藤官九郎の脚本でテレビドラマ化されたこともありますが、本作を読んで、人気シリーズとなった理由がよくわかりました。

https://www.amazon.co.jp/dp/4167174065/ref=cm_sw_r_as_gl_api_gl_i_WTQJPSVFYY0KF3A8D39V?linkCode=ml2&tag=tenten2021-22

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集