『かがみの古城(アニメ映画)』〜『君の名は。』との共通点?『かがみの孤城』の魅力と課題を考察
視聴環境:Amazon prime video
※ネタバレします。
【内容】
不登校の中学生女子の主人公が、鏡の中の世界で謎を解き、立ち直る物語。
【感想】
実は、この作品を最初から通して観る前に、テレビ放送でラスト20分ほどを偶然観てしまい、物語の核心に触れる重要なシーンを知ってしまいました。そのため、加入している配信サービスで観るのをためらっていたのですが、やはり気になって最初から観てみることにしました。
作品は、思春期の女子たちの繊細な心の動きや、友人との関係性を丁寧に描いており、現代風のハイクオリティな少女漫画の絵柄がそのままアニメーションでも忠実に表現されていました。映像のクオリティも非常に高く、細部まで丁寧に作り込まれていました。
ただ、昭和生まれでそれほど恵まれた環境で育っていない私から見ると、中学生の主人公の周囲にいる大人たちが非常に優しく感じられました。日本の貧困率の上昇により、経済的に恵まれた子供と、貧しい家庭の子供が、極端に二分化されていて、そうしたことを踏まえた作品にすることでも、今ぽい物語になっていると感じました。
ただ、原作は読んでいないのですが、アニメの中盤までは説明的なシーンが多く、物語の設定を説明するために時間を割きすぎている印象を受けました。特に「一定時間を過ぎて孤城にいると狼に食べられる」という設定が示されるものの、その恐怖が描かれないため、物語全体の緊張感が薄れていると感じました。本来であれば、設定を示した後すぐに狼に食べられるシーンを挿入することで緊張感を高めるべきでしょう。(思春期の女子をターゲットにしていることを考えると、あえてそうした展開を避けたのかもしれませんが…)
とはいえ、終盤になると物語が一気に展開し、最終的には良い映画だと感じました。特にアニメーションのクオリティは非常に高く、個人的には原恵一監督作品の中でも作画や映像の完成度が一番高いと感じました。
ここからはネタバレになりますが、違う時代に生きるメンバーが同じ空間で同居する、つまりパラレルワールドではなく、同じ世界線上で異なる時代が交差するというアイデアは、新海誠監督の『君の名は。』に似た設定だと感じました。原作小説は2013〜2014年に連載されており、『君の名は。』が2016年公開なので、何かしらの影響を受けている可能性もあるかもしれません。
最後に、映画は物語の積み重ねと感情の流れがあってこそクライマックスシーンが効果的に機能する、ということを改めて実感した鑑賞体験でした。
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