質問058:無心のプレーが目指すものは?
回答
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▶「人のため」ではなく「自分のため」
多くの人が、「やるからには何かを目指さなければならない」という価値観で動いているのかもしれません。
だから、悩んだり、上手くいかなかったりします、余計に。
何かを目指すと、「今」に集中しにくくなるからです。
仕事をするからには、お金持ちにならなければならない、高い地位に就かなければならない、あるいは人のお役に立たなければならない、かというと、必ずしもそうではない。
私自身、このテニス上達研究所「テニスゼロ」を「人のため」とは思っておらず、「自分のため」に運営しています。
仕事そのものに集中し、充実感を覚えるならば、それが最もパフォーマンスの高い状態に近づけると思いますし、あくまでも結果として、先のような目標が、達せられる可能性も高まります。
こちらでも述べていますが、コートにお辞儀する人だからといって、テニスが上手くなったり強くなったりするわけではありません。
▶「思考の飛び火」に要注意
もちろん、勝ちたい志はあってよい。
だけどいざプレーが始まったら、頭によぎらせないようにする、というのが集中するための手順といえます。
特にテニスなんていう、0コンマ数秒の精度でタイミングを合わせる非常にデリケートな作業を繰り返す場合、わずかな雑念(勝ちたい思い)でも、それが手先指先に伝わると、すぐにエラーとして結果が示されてしまいます。
勝ちたい思いが頑張るための原動力となるのは事実かもしれません。
だけどテニスは、頑張れば勝てるわけではないというのも事実。
むしろプレー中に「勝ちたい」を意識すると、そこから思考が飛び火し、「あと2ポイントで勝利だ!」「ここは慎重にいこうかなあ」「大事なところでミスっちゃったよ。あーあ」などと、いろんな思いが渦巻きやすくなるから注意が必要です。
▶「勝ちビビリ」が「自滅」を招く
勝ちがリアルに意識される「勝ちビビリ」なんていう例は、まさにその最たるものではないでしょうか(参考記事:ノボトナの涙)。
たとえばノーヒットノーランを継続中の、野球のピッチャーがいたとする。
調子はイケイケ、自分ではそう(ノーヒットノーラン継続中)だと気づかないうちは、「無心」です。
「打ち取ろう!」とか、「ノーヒットノーランを達成しよう!」などとは、つゆも考えていません。
ところが何かをきっかけに、ノーヒットノーラン継続中だと本人が気づいたり、チームメイトから気付かされたりすると、「意識」して、途絶えるケースが少なくありません。
要するに、「自滅」なわけです。
▶プレーを「楽しむ」のが最高(フェデラーの例)
勝ち負けを、上っ面ではなく、本当に忘れるくらいに度外視して、プレーそのものを楽しめるのが最高。
このエピソードを語るうえでいつもご紹介するのが、いかにも象徴的な、こちらの動画です。
錦織圭のショットがネットミスして、主審がゲームセットを告げたにも関わらず、まだ試合を続行しようとするロジャー・フェデラー。
マッチポイントを迎えるそれまでのプレー中にも、カウントのことなど、一切気にしていなかったのでしょう。
アンパイアのジャッジも、観客による声援も耳に届かなくなった、超越的集中。
すでに試合が終わっていたことに気づいたときに、「ゾーン」から、日常の意識状態へと帰ってきました。
少し照れた様子で、両手を振り払う仕草がお茶目です(笑)。
▶「セルフジャッジ廃止論」
私はよく、「セルフジャッジ廃止論」を唱えます。
確かに現状では、人員確保の制限があり、廃止するのは難しいのかもしれませんけれども、セルフジャッジをしている限り、どうしてもプレーヤーはポイントやカウントについて、覚えておかなければなりません。
それが勝ち負けを意識する、確かなきっかけともなるでしょう。
もちろん、対戦相手との駆け引きや作戦立案のために、ポイントやカウントを数えざるを得ないシチュエーションも、あるに違いありません。
ですがポイントやカウントを「意識」するあまり、ボールに対する集中力がかき乱されるのは、本末転倒です。
特にジュニアプレーヤーには、ポイントやカウントにとらわれず、のびのびプレーしてもらいたいものです。
ポイントやカウントのことなどはアンパイアに全権を預け、一切を忘れて(これが度外視という意味です)、ただボールに集中し、体が動くままに任せてプレーするのが最高。
そうですね、あの動画のなかの、フェデラーのように。
▶ 起死回生の「まくり」が起こる!
「勝ちを目指すぞ!」
「ノーヒットノーランを達成するぞ!」
プレーに入る前なら、そういう気持ちがあれば、頑張る気力を高める原動力になるかもしれません。
だけどその思いが制御できないほど強くなりすぎて、プレーの最中まで引きずって考えてしまわないように、気をつけたいものです(思考の飛び火)。
「意識」した途端、たった今の今まで継続していたノーヒットノーランが、途切れるピッチャーのようになりかねません。
確かにゲームカウント0-5になったら、あきらめかけてしまいがちです。
下手をするとポイントが0-40になるだけで、なかば投げてしまうプレーヤーもいるかもしれません。
しかしポイントやカウントを度外視するプレーヤーだと、ここから「まくれる」のです。
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(テニスゼロ)
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