テニス上達メモ111.楽しい「禅的生活」で集中力をアップ
▶集中力は「細部」に宿る
集中力を上げる、あるいは鍛えるためのポイントは、小ささ、薄さや、淡さです。
すると相対的に、大きく、濃く、認識できます。
たとえば針の穴に糸を通すような作業は、集中しますよね。
あるいは聴力検査などでとても小さな音を聞くとき、集中します。
集中力は、小ささ、薄さ、淡さといった細部に宿ります。
集中力(とテニスシューズ)に限っては、「大は小」を兼ねません。
▶「ソッ」と鳴る音に、集中する
禅では、ふすまを閉じたり箸を置いたりする生活音を、なるべく立てないように1日を過ごします。
それはマナーであり丁寧な所作であると同時に集中力を上げる、あるいは鍛えるトレーニングにもなっています。
そして、箸を「トン」ではなく「ソッ」と置くわずかに鳴る音に、集中するのです。
すると、ASMRになって楽しくなる。
集中は楽しいのです。
テニスでも頑張ってボールを追いかけるのは「しんどそう」に見えるかもしれませんけれども、ボールに集中すると、犬がしっぽを振って追いかけるがごとく、ボールを追うのは「楽しい」のです。
まさに「動きたがる体になる」のです。
▶ボールが「スッスと消える」
一方では楽しいどころか、ボールを打つのが「怖い」プレーヤーは少なくないでしょう。
恐る恐るになる。
これは、ボールへの集中力を下げる、そして衰えるプレーになっています。
集中力も「力」ですから、使わないことには衰えるのは「足腰」と同じです。
具体的には、やっぱりボールがはっきりと見えていないのです。
自分でも気づかないレベルで、飛んで来るボールも飛んで行くボールも、「スッスと消える」。
もちろん本当に消えるわけではないのですけれども、ほかが気になって視覚が認識しないのです
▶視界に映る「すべて」を見るわけではない
私たちは視界に映るものすべてを見ているわけではありません。
気になる情報をRAS(網様体賦活系)がフィルタリングして見せているのです。
気になる情報がたとえば相手選手だったとしたら、ボールは、視界には入っていたとしても見えなくなります。
そして相手選手が見えるのだとしたら、ボールはよく見えていません。
なぜなら中心視野ではっきり見える領域は、それこそ「針の穴」のようなものだからです。
▶対戦相手が見えたらアウト
今、確かめてみます。
恐らく両方の文字を視界に収められると思いますけれども、「集中力は細部に宿る」のでしたね。
「い」の左上、書き始め部分の一点に目を凝らすと、「ま」は、存在は認識できるとしても、読めないはずです。
「読める」としたら、それは能力が高いのではなくて、集中力が低いのです。
ですからプレー中に、対戦相手もネットもパートナーも見えているとしたら、ボールは見えていません。
見ているつもりであっても、眺めているのであり、はっきりとは認識できないのです。
集中は細部に宿る。
インプレーが途切れたら、ガットの交点(一点)をジーっと見つめるなどするアウトオブプレー中のアイコントロールは、その(集中の)一種です。
▶集中的に情報をゲットする
視覚だけではなく、聴覚も同じです。
鼓膜に音波は同じように当たるとしても、すべての音を認識するわけではありません。
たとえば「カクテルパーティー効果」。
賑やかな中でも、「興味のある話題」や「自分の名前」は聞き取れます。
いろんな音が混じっていても、どれかひとつを聞き選ぶことができる。
セミの声と川のせせらぎと自動車の走る音が混じっていたとしても、どれかひとつに集中すると、それだけをはっきり聞けるのです。
視覚、聴覚に限らず、あらゆる感覚(および思考)がそうです。
受信した情報をすべて認識するのではなく、必要な情報を集中的に取り込めます。
認識、識別の字を当てる「識」は、RASのフィルタリング機能を担っているのです。
▶集中するとは、「考えない」こと
テニスで「集中する」とは、差し当って「考えない」とも言い換えられます。
ボールに集中すると、フォームについて考えられません。
フォームについて考えると、ボールに集中できません。
ですからフォームを教える常識的なテニス指導では、使わないと衰える足腰と同様に、ボールに集中できない衰弱化を招きます。
▶試験のときは「思考」に集中
念のため付け加えると、「思考に集中」ももちろんあります。
試験問題を解くときなどの集中は、思考に対する「意識」の集中です。
試験中に、カチカチと時計の音がする秒針を聞いていては(耳識)、問題は解けません。
眼識が問題文に接触したとき、降ってくる思考から意識をブラさない集中が大事。
すべての思考は、「能動的に考える」のではなくて、降ってきたり流れてきたりする考えを、「意識」という受容器がキャッチするということを、改めてお伝えしておきます。
▶「禅的生活」を楽しむ
改めて冒頭の話に戻ります。
禅の生活。
ボールの細部に宿る回転、毛羽、縫い目(実際にはフェルトの合わせ目であり、縫い目の入ったボールは規格外)、印字に目を凝らします。
そしてテニス以外の日常生活では集中のスペシャリストである禅僧にならって、物音を立てない所作、「そっ」と鳴った箸を置く音に、キーンと集中するのです。
「舌識」においては薄味に集中すれば、健康にも望ましく一石二鳥。
素材そのものが持つ甘味、辛味、苦味、旨味に、キーンと集中します。
そのためには体に入れるヘルシーな食材にも、気を配りたいものですね。
ますます楽しい「禅的生活」になりそうです。
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(テニスゼロ)
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