㊗エミー賞史上最多の18部門受賞の歴史的快挙の傑作!「SHOGUN 将軍」に込められた真田広之と全クルーの想いと日本人としての誇りに感動!
世界中で話題沸騰の「SHOGUN 将軍」全10話を一気見した。
今、見終えたばかりの余韻に包まれて、レビューを書き始めた。
なんという傑作だろうか。全く隙が無い。
何度鳥肌が立ったことか。
鬼気迫る役者の表情に。
想像を絶する過酷な決断に。
目を奪われる美しい場面に。
では、歴史的快挙を成し遂げた「SHOGUN将軍」のレビューを始めよう。5965文字渾身レビューです!
是非、Voicy音声配信でもお聴きください♪
【作品概要】
真田広之が主演・プロデュースした「SHOGUN 将軍」は、天下分け目の合戦「関ヶ原の戦い」前夜を舞台に、「トップガン マーヴェリック」の原案を手がけたジャスティン・マークス、レイチェル・コンドウらハリウッドのクリエイターたちが、徳川家康や石田三成ら歴史上の人物にインスパイアされた、将軍の座を懸けた陰謀と策略が渦巻く物語を紡いだ。
今まで何度か映像化され、特に三船敏郎の映画は有名なジェームズ・クラベルのベストセラー小説『将軍』にかなり忠実に徳川幕府が成立へ至る時代を舞台に描かれている。
ディズニープラス「スター」オリジナル作品として、ディズニー傘下のクリエイティブスタジオFXプロダクションズが同社史上最大の製作費を投入して制作し、公開後は全世界で絶賛を浴びて、今や熱狂の域に達している。
9月15日(現地時間)、ロサンゼルスのピーコック・シアターで開催された第76回エミー賞では、ドラマシリーズ部門の作品賞をはじめ、真田広之が主演男優賞、アンナ・サワイが主演女優賞など主要部門を席巻し、エミー賞史上最多の18部門を制覇する歴史的快挙を達成した。そのうち、日本人受賞者は史上最多9名となる。
真田広之は、徳川家康にインスパイアされた武将・吉井虎永を演じて主演男優賞を獲得したが、これは’80年にドラマ化された『将軍 SHŌGUN』で、主演を務めた故三船敏郎さんが受賞を逃していた賞で、真田広之が悲願の受賞を成し遂げる形。
作品賞を受賞後、彼は日本語で「これまで時代劇を継承して支えてきてくださった全ての方々そして監督や諸先生方に心より御礼申し上げます。あなた方から受け継いだ情熱と夢は海を渡り国境を越えました」とコメントして、感無量の面持ちだった。
私はこのスピーチを感慨深く聞いていた。
近年、韓国エンタメの勢いはすさまじく、素晴らしい成果を上げてきた。KPOPの全世界的ヒットだけでなく、映画では「パラサイト」がアカデミー賞を席巻し、エミー賞でも韓国ドラマ「イカゲーム」が作品賞にノミネートされた。
でも、正直、韓国エンタメの世界的活躍に完全に後塵(こうじん)を拝してきて、悔しい想いをしてきた日本のクリエイターたちはきっと多かったはずだ。そんな中で、今回の「SHOGUN将軍」の受賞は日本人としてどれだけ嬉しい事か。勇気をもらったことか。
大谷の50-50達成の話題一色の日にもう一つ、こんな凄いことが起こったことなんて、その日は本当に素晴らしい一日になった。
エミー賞の主演俳優賞は日本人初の歴史的快挙でしかもW受賞であり、
日本語字幕(全編の7割)の作品が受賞するのも初めてだ。
欧米の人がアジア系の作品を字幕視聴で見るという習慣はこうした韓国エンタメの躍進で徐々に深まってきたものの、「SHOGUN将軍」はほとんどが日本語での会話で、ほとんどが日本語字幕でその割合も今まででも群を抜いている。
まさに「SHOGUN 将軍」は日本のエンタメ界として「歴史を変える作品」となったと思う。
非常に辛口で有名なアメリカの映画・ドラマ批評サイト「Rotten Tomatoes」で「SHOGUN 将軍」は、批評家の99%、一般視聴者の91%からフレッシュ(肯定・推薦)という異例の高い数字を獲得した。本作を鑑賞した海外のメディアも絶賛の嵐だ。
作品概要の最後に物語の導入を伝えると、この作品は幾度の危機に見舞われながら絶大な権力を誇る“将軍”の座を目指す武将、吉井虎永の物語だ。
吉井虎永は徳川家康がモデルで、物語の中心になるのは、吉井虎永と、イギリス人航海士、按針ことジョン・ブラックソーン、そして運命に翻弄されるキリシタン、戸田鞠子だ。
1600年を始まりとする関ケ原直前の物語は、初回から緊張感が張り詰めてい亡て、太閤亡き後、権勢を巡る5人の大老たちの駆け引きの中、虎永は窮地に追いやられるところから物語は始まっていく。
【作品感想/レビュー】
「SHOGUN 将軍」は全編カナダで撮影が行われたが、戦国時代の日本を一から念入りに作り上げて、画面の隅々まで美しさが広がり、まるで1,600年頃の時代にタイムスリップしたかのような感覚を覚えた。
この日本らしさの再現度の高さは主演と共にプロデューサーもしている真田広之の貢献が大きいと思う。真田広之はプロデューサーとして「日本人が観てもおかしくない日本を描くうえで最高のチャンス」と確信して制作に全精力をつぎ込んだ。
真田広之がハリウッドに渡ってから20年以上が経つが、彼は、俳優として参加した現場でも、日本に関する描写に違和感があればアドバイスをするという立場になっていたし、今回、プロデューサーとして大きな責任を与えられて、その能力をフルに発揮したのだ。真田広之は今まで出演した作品の縁から数多くの時代劇のエキスパートたちを現場に集め“リアルな日本”を実現したのが、その心意気を全うするのは並大抵のことではないと思う。
真田広之は「日本人として日本の文化を正しく世界へ紹介したかった」という思いを貫いて「日本の時代劇のスペシャリストを各部署に配置することができて、日本人の役はすべて日本人の俳優を呼ぶことが実現でき、ハリウッドでは画期的なことなので、これが大きな布石になればいいなと希望を抱いております」とインタビューで語っていた。
そのリアルな日本の美学が見事に反映したのがこの作品の大きな魅力ではあるが、それと共にこれほどまでに海外の熱狂と絶賛に至ったのはもう一つの視点があったからだ。
「SHOGUN 将軍」の原作はイギリスの作家、ジェームズ・クラベルの小説で、その視点は劇中に登場する英国人航海士<按針>ことジョン・ブラックソーンの視点が多く含まれる。彼の「外国人が見た日本」という視点を通して世界中の人が日本の美や武士道、生き方を共に体験し、熱狂にまで至った。
戦国時代の戦闘シーンのスケールもさることながら、サムライの研ぎ澄まされた所作や忍耐や忠義、自己犠牲といった武士道の生き方、それと共にその時代の女性たちの信念・覚悟が宿った眼差しや、麗しい着物姿や情緒ある美しさ、大阪城内の格式美や庭園の美しさ、また、侍の覚悟の末のリアルな切腹シーンや素顔を隠す忍びの者の存在など随所に「外国の人が憧れるミステリアスな日本の美学」が研ぎ澄まされて美しく表現されている。
じっくりドラマを見ていて、日本人の私もまるで瞑想しているかのような気分になる静けさがこのドラマにあった。
山々と湖に囲まれた村の美しい風景と、対比的に風格のある大阪城とその周辺の賑わい、そこでもてなされる豪華な食事と華麗な衣装を驚くほど美しく捉えたカットが次から次へと出てくる。
目が飽きることは静寂のシーンであっても全くない。
そんな美しく静寂に満ちたシーンから突然に画面に現れる死と暴力。刃が障子を切り裂き、雪の上に死体が横たわる残酷な運命を目の当たりにして息もつかせない。
美術セットは豪華絢爛だが全体の描写はダークな色調で、武家社会の厳しさと死と隣り合わせの日常の緊張感がよく表現されていると思う。
海外評の中には傑作ドラマとして名高い「ゲーム・オブ・スローンズ」への言及もよく目にする。
2011年から2019年にかけて世界的人気を集めたドラマだが、中世ヨーロッパの時代をモチーフにした壮大なこのスペクタクルロマンと「SHOGUN 将軍」は、お家騒動や権謀渦巻く権力争い、過酷な運命が壮大な描かれる点で共通しており、再び’真の傑作時代ロマン’が誕生したことに歓喜している海外の人が多い。
「SHOGUN 将軍」は、16世紀当時日本で力を拡大していたカトリックと、日本に辿り着いたジョン(プロテスタント)の野心と攻防や、ポルトガル貿易の利権など、これまで日本の時代劇ではあまり深掘りされてこなかった視点を取り込んでいる。
日本文化を全く知らない「異国人」とジョン<按針>を助ける通訳の鞠子との会話によって、東洋と西洋の関わりと違いが伝わり「宿命」「忠義」「イエ」といった当時の日本的価値がわかりやすく海外の人に、日本字幕満載なのにもかかわらず、興味を駆り立てることに成功した。
世界が「分断」が進みつつある今の時代に、異文化間のコミュニケーション丁寧に繊細に描き切ってまさに日本の魅力が「再発見」されるようなドラマになっているのは日本人としても嬉しく誇らしい。
「異なる文化がいかに交流できるのか」という全世界共通の興味をこれほどまでにうまく脚本に取り込んだ作品を私は知らない。
ここからはキャストの魅力について話そう。
まずはなんと言っても真田広之である。
彼は撮影が始まってからも真田は自ら衣装や小道具、セットを綿密にチェックし、俳優たちには所作や殺陣を指導して、なんとエキストラの動きまで確認した後、自身のトレーラーで衣装やカツラを着けて俳優モードに切り替えていたという。
そしてもちろん、俳優真田広之も素晴らしかった。まさに将軍になる前に、将軍の器たる人間の苦悩を時に静かに、時に烈火のごとく激しく演じていて圧倒された。
彼が演じた吉井虎永は冒頭から絶体絶命の危機にある。
亡き太閤の幼い後継者が元服するまで国を治める五大老の4人の大名たちは虎永の権力を奪おうとしているが、虎永は堂々とした威厳に満ちている。鋭い洞察力と、時に非情な決断もする恐ろしさもある。
五大老の中で孤立無援の虎永がいかにして将軍への道を切り拓いていくか様を描き、段々と彼を応援したくなっていく。
真田広之のプロデューサーと役者の二刀流は本当に信じがたい程に凄いと思う。そして日本人として初めて(もちろんアジア人としても)作品賞と主演男優賞の栄誉に輝いた。本当に尊敬の念が絶えない。
そんな真田広之の二刀流の過酷な日々を目の当たりにした鞠子役のアンナ・サワイや浅野忠信など共演者たちも相当の覚悟で取り組んだようだ。
その役者陣の並々ならぬ決意と努力が作品の全編に渡って、見事な役者陣の演技を披露してくれ、数々なエモーショナルな場面を創り上げてくれた。
命の危機にもさらされる彼らの運命が終盤になるにつれて緊迫感をもって迫ってきて、それが役者たちの渾身の演技で体現され、全く目を離すことができなかった。
『SHOGUN 将軍』において、吉井虎永とジョンと共に、3人目の柱となるのは、ジョン<按針>を導き続ける戸田鞠子(アンナ・サワイ)だ。
彼女は悲劇的な経験ののちにカトリックに改宗している。
通訳をするジョン<按針>との禁断の恋に発展する予感を抱かせるが、鞠子は復讐を果たそうとしており、易きには流れる展開にはそう簡単にはならない。
鞠子の抑制の効いた所作をサワイが本当に美しく演じている。それと共に、彼女には途轍もない芯の強さが垣間見えた。
具体的には差し控えるが、特に終盤のアンナ・サワイ扮した鞠子の壮絶な決意とあの表情は一生忘れられないほどのインパクトを私の心に残した。今も尚、目を瞑れば、彼女のあの表情と姿がありありと目に浮かぶ。
それと、忘れらない味のある演技を見せているのは、樫木藪重を演じる浅野忠信だ。藪重は表向きは虎永に仕える領主だが、拡大していく争いのなか、彼は常に勝つ側にいようとあからさまに策を巡らせている。
不器用な狡猾さを見せる彼は、特に英国人ジョンとのやり取りがどこか可笑しみがあり、コミックリリーフの役割を果たしている。
虎永の最大の敵・石堂和成(石田三成がモチーフ)を演じた平岳大の、虎永を執拗に追い詰める狡猾さを風格を持って演じていてよかった。
虎永の信頼する武将で親友・戸田広松に扮した西岡徳馬も素晴らしかった。終盤の彼も壮絶な演技に震えた。
そして、鞠子役のアンナ・サワイ以外にも女性陣で2人、とても印象的だったが、その1人、藤役を演じる穂志もえかに海外ファンから反響が凄いことになっている。
夫と子を亡くした後、虎永から家臣となった英国人航海士<按針>の正室となることを命じられた藤が、第4話で言葉の通じない按針との生活に不安を抱えながらも、屋敷で無礼な態度をとった侍に、鉄砲を構えたシーンの彼女が鮮烈!
「このシーンでハートを盗まれた」「何としても藤を守れ」といった海外ファンが急増中だが、彼女の心に覚悟を秘めた表情に心が揺さぶられ、とても美しくて、本当に素晴らしい演技だった。
そして、もう1人は終盤に行けばいくほど存在感を増した、太閤側室の「落葉の方」を演じた二階堂ふみの演技。その存在感、目線の動き一つでゾクっとさせる妖艶さと恐ろしさが伝わってきて、本当に凄かった。
このように役者全員、渾身の演技を魅せてくれて存分に「SHOGUN将軍」の世界にハマることができた。
全10話の後半に究極の盛り上がりをみせる構成力も本当に見事!
その結果、本格時代劇としての風格と共に全10話を貫く緊迫感とダイナミズムで圧倒され、終盤までひりひりするような傑作が出来上がった。
この作品はDisney+の独占配信だけど、私はこの作品を見るために契約して、一気に見てしまった。
正直、10倍以上の価値はあったと思う。
本当に、この作品は見てほしいと心から思う。
日本人としての喜びと誇りをたっぷり感じながら、存分に楽しんでほしい。
また、「SHOGUN 将軍」はシーズン2、およびシーズン3の製作に着手することが発表されたが、楽しみで仕方ない。
脚本もこれから開始とのことで見れるのはだいぶ先だと思うが、当然真田広之はプロジェクトをリードしていくので、心から期待したい。
感想の最後は心から経緯を評して、真田広之のスピーチで締めたいと思う。
ドラマシリーズの作品賞と主演男優賞で、2度ステージに上がった真田は、先人たちへの感謝を込めて作品賞の受賞スピーチをこう締めくくった。
「これまで時代劇を継承して支えてきてくださったすべての方々、そして監督や諸先生方に心より御礼を申し上げます。あなた方から受け継いだ情熱と夢は海を渡り、国境を越えました」
是非、多くの方に、この偉業を、この傑作を見届けてほしい。