『コンビニ人間/村田沙耶香』感想。多様な価値観とかの次元を超えた主人公が好き!
コンビニ人間大好きなのでみんなぜひ読んでください!
簡単な作品紹介とネタバレがあります。
【登場人物】
主人公
幼少期から公園で死んでいた鳥を家に持ち帰って焼き鳥にしたら父親が喜ぶと思っているなど普通の人の気持ちが分からないズレたところがある。
現在はコンビニというマニュアル化されてオートで動ける環境に癒され週5コンビニアルバイトを10数年もの間続けている。
白羽
コンビニに婚活目的でアルバイト入職するも、店長を見下したり36歳で恋愛経験がなく未婚である。主人公を見下すが、自らも就職していないため社会的劣等感がある。
縄文時代男は狩りをしていて、女は家を守っていたことをよく持ち出し、寄生が許される女に対しての恨みがある様子。
【あらすじ】
元からのサボり癖によってコンビニアルバイトをクビになった白羽は主人公の家に転がり込むことになる。
主人公は恋愛感情を持たないが、女友達や家族に異質だと思われるのを避けるために成り行きで白羽との入籍を提案する。
白羽は主人公に就職を提案する。
(自分の非正規雇用に養われるという立場を、正規雇用に養われる立場に変換することで社会的違和を最小限にするため)
主人公は普通の生活を得るためにコンビニのアルバイトを辞職するが…
【感想】
新鮮さもありつつ読みやすく大好き!
主人公は変だけど、真っ直ぐで嫌いになれない。
ここまで変なのは中々居ないけどこういう人間はそこそこいるなと思った。
結局主人公の行動理念は産まれ持ったものだし、それを否定して(周囲の人間の価値観での)改善をさせることは誰一人として出来ないという話だと思った。
主人公の妹や親はもちろん善意から主人公に普通の人生を送って欲しいと願っており、愛情を注いでもらって育った主人公はその恩のため家族を傷つけたくない一心で一般的な行動理念や社会的評価に従った選択をしようとする。
絆や愛情が理由にあって変わろうとしているのにも関わらず、こういった結果になるのは主人公の価値観が社会から離れすぎていたからだと思う。
白羽は社会的地位についてコンプレックスを持っており、非正規雇用である主人公を罵倒する場面がある。
(他人を見下し貶めることで自分を慰めている)
しかし主人公には、全くその罵倒は響かない。
客観的に見るとそうだろうという様なことをぼんやり思うだけで感情的になることはない。
同じような社会的地位にも関わらず、主人公が焦りを感じないのは、白羽は根本的に社会的基準に沿った行動理念であるが、主人公は社会的基準を無視した独自の行動理念だからであり、対比構造になっていると思った。
こういった場面からも主人公の社会の価値観に左右されない強固さが分かる。
ラストで自身の行動理念の強固さに改めて気づいた主人公は社会では評価されずに生きていくこととなり、将来的には破滅を迎える(コンビニは立ち仕事であり、年齢を重ねる毎に身体的に働くことが難しくなる)可能性が高い。
そのためこの小説の終わりはバッドエンドだとも言えるが、主人公が行動理念に基づいた選択をし身内の評価という殻を破ることができ、新しい自分の誕生(主人公が誕生した甥をガラス越しに見ていたシーンは殻を破った自身と重ねている気がする)を感じたことはむしろ爽快感のあるハッピーエンドとも言える。
この後主人公が幸せになろうが、不幸になろうが、主人公は自らの行動理念に基づいた選択をすることしかできないため、安直な言葉選びにはなるがそれが主人公の運命だったと言わざるを得ない。
主人公に共感する場面も、白羽に共感する場面も、主人公の妹や親に共感する場面もあり、様々なことを考えさせられた。
あえて小説や社会の中の大多数という目線から主人公を客観的に見るとすれば、やはり破滅の道を辿ることを予測して主人公を心配してしまう。
しかし小説の一部始終を見るうちに主人公に何も言っても結局こうなるという半ば諦めに近い感情が芽生えた。
この場合、主人公の行動や選択についてとやかく言うことは無駄でしかない上に主人公を追い込むことになるので、主人公に選択を任せつつ干渉せず見守る程度が望ましいだろう。
この主人公ほどに強固で人と違う価値観をもつ人は少ないだろうが人には多種多様な価値観があり、それが多少なりとも社会の一般常識から離れていることもある。
だからこそ読者は主人公に多少共感することが出来るのだ。
もし自分が主人公の親や妹の立場であれば人の価値観を尊重することを念頭に置くことが大切だと思う。
また主人公の立場からは時には社会的に認められなくても、自分の生き方を進む強さを持つことが結果的に回り道をして苦しまず結論にたどり着くためのライフハックかもしれない。
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