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映画『ビッグフィッシュ』 物語は、人に永遠の生命を与える
近所のGEOを時々覗いては、DVDのセル品を5枚1000円で購入している。昔見てもう一度見たいと思うものと見逃していたものを漁るのが楽しみ。
今回の掘り出し物は、ティム・バートン監督の『ビッグフィッシュ』
映画好きには、今さらな20年前の作品だけれど。私にとっては、初見。見逃さずに良かった。
あらすじ
エドワードは彼が語るお伽話で有名になった人物。未来を予見する魔女のこと、一緒に旅をした巨人のこと、人を襲う森とその先にある美しい町のこと。彼が語る「人生のストーリー」に誰もが楽しく、幸せな気分になった。しかし、一人息子のウィルはそんな父の話が嫌いだった。長い間すれ違う父と子。そんなある日患っていたエドワードの容態が悪化し、実家に戻ったウィルに、残された時間があとわずかだと告げられるー。
公式サイト
生きれば生きるほど、現実の過酷さや全ての人に平等に優しいわけではない世界の現実に晒され、誰しもが少しは強くもなり、狡くもなる。
自分の思う正義に理を見出し全てを知りたいと考えることがあっても、袋小路に入りこんでしまう。現実を知れば知るほど苦しくなることもあるから…。
世界の善悪は、いつも危ういバランスの上に成り立っている。
映画『君たちはどう生きるか』の方がもちろん後発の作品だけれど、主人公眞人の大叔父が、汚染された地下世界を取り戻すために、悪意に染まっていない石を探し、積み木を積んで世界のバランスを取ろうとしていたのを思い出した。
市井の人の営みにあっても誰かの幸せは、他の誰かの不幸せであったりする。バランスを保ち続けることは難しい。
ウィルよ、長い人生、現実の世界だけを見ようとして生きていくだけでは乗り切れないこともあるのだよ。
時には、尾鰭をつけてホラ話のように物語りながら、そこに真実を織り込んでいくことも生きる技術なのだ。
真正面から突っ込んで、えっこれが現実なのかという事態を作り出すこともリアルの世界で時折起こっているではないか。
「小説は、タペストリーのようなもの」と言ったのは、安部公房だったような。
物語もいろいろな要素が編み込まれたタペストリーのようなもの。縫っているうちは、なんの形かわからないが、出来上がった作品を眺めれば、いろいろな模様が浮かび上がってくる。
印象深い言葉があった。
"A man tells his stories so many times that he becomes the stories. They live on after him."「人は自分の物語を何度も語るうちに、その物語と一体化する。物語は彼が居なくなった後も生き続ける。」
エドワードの生き方をなぞった台詞。
自分の人生は自己理解によって変化し、その物語は誰かの記憶に残る限り生き続ける。
味わい深いのは、ティム・バートン監督の、否、全ての作家の想いのように感じるから。
自分の信じるテーマを繰り返し語ることによって、作家が永遠の生命を手に入れようとしているかのように。
私は、そんなだいそれたことは考えないけれど、ささやかながらこのnoteを孫のRちゃんに残すことを企んでいたりして。笑