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12/18 【”Bad News is Good News”から”Bad News is Bad News”への転換】

●米11月消費者物価指数(CPI) 5カ月連続の伸び鈍化


米労働省が12月13日に発表した11月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で7.1%(予想:7.3%、前回:7.7%)の増加で、ヘッドラインの伸びは5カ月連続で鈍化した。

(米消費者物価指数推移、出所:Investing.com)

また変動の激しい食品とエネルギーを除くコア指数も前年同月比で6.0%(予想:6.1%、前回:6.3%)増と事前予想及び前回を下回る結果となった。

品目別にみると、ガソリン価格は前年同月比で8.8%の上昇となり、昨年21年3月以降では初めて1桁台の上昇率と縮小で、ヘッドライン伸び鈍化の要因の1つとなっている。

一方で食品は10.6%と依然高い上昇を続けており、またサービス価格にも伸び減速の兆しは未だ見られない。

●米FOMC 利上げ幅は減少も金利見通しは


FRBは12月13~14日にかけて行われた連邦公開市場委員会(FOMC)で0.50%の利上げを決定した。前回会合まで4回連続で0.75%の利上げを行っていたため、利上げ幅は縮小。

併せて政策金利見通しを発表し、最大の注目点であった2023年末の政策金利見通しについては、中央値が5.1%となり前回(9月)から引き上げられた。

(出所:Reuters)

然しながら、市場予想では依然として2023年末の政策金利は4.25-4.50%となっており、来年後半の利下げを見込んでいる状況でFRBの認識と大きな乖離がある。

(市場の米政策金利見通し、出所:CME Fed Watch)

目先の利上げについては、2023年に入ってから0.25%利上げを3回行い、その後は利上げを停止する見方もある。その場合、ターミナルレートは5.00-5.25%だ。

FOMC後の声明文公表及びパウエル議長会見を受けた市場の反応では、金利及びドルの上昇はさほど強くない。市場はインフレ率鈍化及び景気減速を見越しているものと思われる。

●米11月小売売上高 予想を上回る下落


米商務省が12月15日に発表した11月の小売売上高は、前月比▲0.6%(予想:▲0.1%、前回:1.3%)で、事前予想及び前回の結果を下回った。

詳細を見ると、自動車及び自動車部品が▲2.3%、ガソリン支出▲0.1%、百貨店▲2.9%、家具▲2.6%、インターネット通販▲0.9%など。

11月下旬には「ブラックフライデー」などの大規模なセールがあり、年末商戦のピークであるが依然として続くインフレにより家計が圧迫されているとの指摘がある。

また消費者の購買意欲減退に伴う景気後退を市場は織り込みだし、安全資産である国債が買われ金利は低下、一方で株式は売られており主要3指数は下落した。

ここ数カ月は経済指標に関して、悪いニュース(Bad News)が出ると金融引締めの緩和が意識され株式市場には好感(Good News)されていたが、足元ではBad Newsを素直にBas Newsと市場は受け止めている。

(米小売売上高推移、出所:Investing.com)

●ECBラガルド総裁 タカ派姿勢を強める


欧州中央銀行(ECB)は、12月15日に開催された政策金利決定会合で0.50%の利上げを決定した。

利上げ幅は前回の0.75%から0.50%へと縮小したものの、ラガルド総裁が会見で非常に強いタカ派姿勢を打ち出し、サプライズとなった。

ラガルド総裁は記者会見で「ECBが方針を転換したと考える人は間違いだ。転換したわけではなく揺らいでもいない」と発言し、利上げ幅を0.5%に縮小したことを引き締め減速局面に入ったと受け取られないように市場を強くけん制した。この超タカ派発言を受け、ユーロ圏内の株式は大きく下落。

(ドイツDAX推移、出所:Trading View)

この発言を受け、次回以降3回にわたって0.50%の利上げが行われる可能性が指摘されており、金融引締めから金融緩和への転換は相当困難な道のりになると予想される。

(ユーロ圏消費者物価指数推移、出所:Investing.com)

確かにアメリカとユーロ圏のCPIを比較すると、前者は伸びが鈍化傾向にある一方で、後者は高止まりしている。

然しながら、ユーロ圏内には経済の強弱及び財務状態の強弱が入り混じるため、どこまで金融引締めに関してタカ派姿勢を維持できるか、その難易度は相当に高く、やや懐疑的だ。

●中国 11月小売売上高 需要減速で再び失速


中国国家統計局は、12月15日に11月小売売上高を発表したが、結果は前年同月比▲5.9%(予想:▲4.0%、前回:▲0.5%)と再び失速となった。

(中国小売売上高(前年同月比)推移、出所:Investing.com)

サービス業の生産指数も▲1.9%となり、5月以来6カ月ぶりに前年同月を割り込む結果となった。

また工業生産の増加率は▲2.2%と生産活動もさえない。自動車やスマートフォンの生産量はマイナスに転じ、パソコンは減少幅を広げた。

主要な経済指標の低迷の要因は、国内外の需要が落ち込んでいることだ。ゼロコロナ政策に伴う厳しい移動制限で消費を左右する雇用が打撃を受けており、特にサービス業の比率が高い大都市ほど雇用が悪化。

中国経済は供給サイドの混乱による減速ではなく、需要不足により減速傾向が鮮明であるため、ゼロコロナ政策の緩和が今後どこまで需要を喚起できるか関心が集まる。

中国のGDPは約4割を個人消費が占めており、ゼロコロナ政策が緩和される旧正月で需要が回復しなければ今後の先行きは一層不透明になるだろう。


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