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【記憶より記録】細く長く続く交流

 根付や彫刻を製作する合間に、手慰みよろしく端材を使った小作品を手掛けている今日この頃。
 ことに、ハンドメイド・ルアーの製作を休止した今秋は、隙間時間の全てを彫刻に費やすことができたので、様々な試みに挑戦することが出来たように感じています。


 話変わって、時は 2014年 7月
 苦肉の策で思いついた「僕が作ったルアーを使ってみませんか?」という僕の気まぐれ企画にのってくれたのは、北日本をホームグラウンドにしている5名のトラウト・アングラー達鱒釣りを嗜む釣り師でした。

※気まぐれ企画:佳境を迎えた高齢者問題により遠征ができなくなった僕の代わりに、拙作を使って各地の河川に棲むワイルドなトラウトを釣ってきて欲しい!という他力本願全開のプライベート企画。(参加特典は、僕の気まぐれワンオフ製作のルアーが非定期補給されることのみ。)

 もはや10年を経ようかという今現在に至ってもなお、彼らは季節の折々に釣行レポート(写真や文章)を送ってきてくれます。
 勿論、手間暇を要するハンドメイド・ルアーを無償で提供するからとて、釣行を強制しているわけではありません。
 僕自身がそうであったように、仕事や家庭の状況のみならず、その年の気象や河川の状況によっても、釣行の頻度や釣果が変わるのは当然のこと。だから、あくまでも「皆さんの釣りの一部に、僕のハンドメイドルアーも加えてみて下さい。」といった程度のお約束にとどめているのですが、義理堅い彼らは、なにくれとなく鱒族トラウトを釣り上げて僕の目を楽しませてくれるのです。

北海道の Tさん が釣ったイトウ (左下:今春/右側:今秋)

 今季は、北海道と秋田のアングラーから吉報が届きました。

 北海道のアングラー Tさん は、今年もイトウの姿を僕に見せてくれました。(上写真の右側のイトウは、数日前の釣果になります。)
 イトウのシーズンは、概ね2回(春と晩秋~初冬:地域にもよる)ありますが、自宅からオホーツク方面の河川までの数百キロの道程を厭わず、そして寒さに耐えてロッドを振り続けるのだから頭が下がります。
 そんな彼に触発されて、イトウ専用のミノー(小魚を模したルアー)を製作してきたこともあり、彼がイトウを釣り上げてくれること自体が、釣りから距離を取らざる得なかった僕の喜びとなっているのです。

 そして秋田の手練れエキップアングラー Hさん です。釣りのみならず写真も上手な彼は、剣呑とした深谷や嫋やかな里川へ赴くたびに、それは美しい秋田の自然(景色や山野草)と、それに負けない眉目秀麗なる溪魚を僕に鑑賞させてくれる稀有な御仁です。
 春の訪れが遅い秋田ではあるけれど、今年も定番の岩魚イワナ山女ヤマメを中心に、ブラウントラウト(秋田の河川で近年繁殖している外来鱒:釣ると複雑な思いになる悩ましい存在)等を釣ってくれました。
 また、トラウト・フィッシングの合間に、湖沼の小物釣りを嗜む彼は、繊細にして端麗なタナゴの姿も、僕に愛でさせてくれるのです。

秋田の Hさん が釣ったイワナ三兄弟(左)とタナゴ(右下)

 そんな律儀で義理堅い両君に、作ることでしか礼を尽くせない僕は、毎度の如く「次のシーズンに向けたハンドメイドルアー」を送り届けてきたわけですが、冒頭で記した通り、ルアーの製作を休止していることから、今年の返礼は「黄楊材のお魚ブローチ」とさせて頂きました。
 
 と言うことで、拙作が完成したとあらば、直ぐにでも届けたいところなのですが、少なくとも今月一杯はイトウのシーズンが続くことから、この返礼品を贈るのは今暫く先になることでしょう。(結局 クリスマスか?!) 

黄楊材のブローチ(手前:イトウ 奥:夫婦タナゴ)

 何はともあれ、多忙を極めるであろう師走を前に、御礼の準備が整ったことに安堵を覚えつつ、彼らが送り届けてくれた幾つもの釣行記録を反芻しながら酩酊のひと時を堪能することができる幸せよ … 。
 そんな温かくも静かなる時の中で、僕は両君の豊かな釣り人生安全釣行が末永く続くことを願うのでした。

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