【作品紹介】事を成して 無事に帰る
ようやく完成した拙作『茄子に蛙』。
この根付は ” 事を成して 無事に帰る ” という意を込めて製作しました。
即ち「茄子=成す」そして「蛙=帰る」を掛けているのです。こうした言葉遊びもまた、根付が内包する面白みのひとつと言えるでしょう。
此度は、古典からの引用ではなかったので、手本となるような雛形は無かったのですが、茄子にしても蛙にしても、数多の名人上手が題材にしてきたわけでして …… 。
さすれば、この凡庸なる若輩は、今は亡き名人上手たちが放つプレッシャーを感じながら、「静」と「動」という異なる性質のモチーフを違和感なくまとめ上げるべく、眉間の皺を深くしながら手を動かしておったと。
本作の製作動機を一言で表せば ” 時節 ” に尽きます。
後1ヵ月も経たない内に受験という ” 試練の時 ” が始まりますし、その後には卒業・入学はては就職なんて ” 節目の時 ” が訪れるんですよね … 。
誰もが経験する事とは言え、子を持つ親としては、” 挑戦する若人 ” に対して、ひとかたならぬ想いが湧いてくるのです。
とにかく、挑戦を終えたら無事に帰ってきて欲しい。
でもって、首尾よく事が運べばいいよね … と。
とまぁ、時節柄も手伝って、そんな ” 余計なお世話的 親心 ” を胸に製作しておったわけです(微笑)。
さすれば、不格好で不安定な茄子に、一所懸命よろしく雨蛙がしがみつく様子( かつての僕も同様 )から、生きとし生ける者の懸命さと滑稽さを感じて頂けたら幸いです。
【ご案内】
興味を持たれた方は、Creema の方へも遊びに行ってみて下さいませ。
【作品データ】
本体:黄楊(ツゲ:御蔵島産)
目の素材:水牛の角(象嵌)
仕上げ材:染料(ヤシャブシ)、イボタ蝋
サイズ:約 H53㎜×W36㎜×D30㎜(最大部分で計測)