【作品紹介】不揃い栗粒三兄弟 -失敗に思ふ-
余暇の愉しみを越えた領域に入っている僕の手仕事人生。
それが故に「失敗」に対する捉え方・考え方も、従前とは異なるフェーズに入ってきた感があります。
かく云う僕とて、いい歳をした小父さんですから、諸事万事に対して鷹揚になってきたのは認めざるえないところではあるものの、こうした経年変化を加味してもなお、失敗に対するレスポンスの質が変わってきたという点だけは明言できるかと…。
とかく、何を作るにしても、前回よりも良く仕上げたい、前作とは違ったマテリアルを使ってみよう、プロセスを変えてみよう、といった具合に、何某かの変化を加えている以上、常に失敗とは隣り合わせになるわけですから、いちいち落ち込んではいられないのです。
まぁ、これもまた手仕事人の観念という奴ですね(笑)。
言い訳がましい前置きは、ここまでとして…。
つい2日前のことです。この僕に似た「不揃い栗粒三兄弟」が、観念の場面を与えてくれました(苦笑)。
未完熟で不揃いで、おまけに北風に負けて落下してしまった生存競争の落伍者的栗の実に、我が身を重ねて製作していたこともあり残念至極でしたが、果敢に攻めた結果なので悔いはありません。(無論、猛省中!)
※製作の経緯は、下の過去記事にて。
さわさりながら、失敗には「程度」というものがあるはず…。
そう、あるはずなのですが、今回の失敗は、根付を根付たらしめる「紐通し」に関わる部分なので、こればかりは ”切った貼った” は通用しません。
されば、要因を探る必要があるでしょう。
現段階では、 使用した黄楊材の部位(根本要因)・穴のあけ方(失敗を誘発)・染色の養生法(失敗を助長)の3要素に分類した次第。
何れの要素も、単体であれば失敗には繋がらなかったと推測する一方、各要素が絡み合ったことで致命的な不具合に発展したのだと捉えています。
とりあえず、早期欠落の回避を目指すべく、ヒビの入った部分に含侵性の高い接着剤を流し込んでみましたが……どんなもんでしょうかねぇ(汗)。
この様な経緯もあり、次男坊に耐久テストを兼ねて使ってもらうことにしました。もっとも、根付というよりは、キーホルダー的な使い方にはなりますが、それは良しとしましょう。
此度協力を依頼した次男坊も、来年はいよいよ高校3年生。
この栗根付(栗・勝栗には武運長久を願う意がある)をぶら下げて、目指す大学へ首尾よく滑り込んでもらいたいものです(希望)。
一方、単体の栗根付(2品)は首尾よく仕上りました。
今回は私淑でもある藻己の栗根付に習って、野趣溢れる姿の栗(座が三角形)に仕立ててみました。
※藻己の紹介は、下の過去記事にて。
この秋、色々な姿の栗根付を彫ってみて、五里霧中になった時(基本に立ち返る必要を感じた時)だけではなく、日常的に手掛けるべきだと考え直しました。
元より、根付は全方向から愛でて愉しむ物なので、自分の中に存在する栗の固定概念に捕らわれること無く、自然な有様を丁寧に表現していかねばと、改めて決意した次第です。
こうした心境の変化も、今秋の収穫のひとつに加えたいと思います。
蛇足ながら、御紹介をば。
目下、一つだけ栗根付を販売中です。
ご興味のある方は、一度ご覧になって下さいませ(低頭)。