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season 1

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様々な背景を持つ複数人でそれぞれ綴る公開日記/エッセイ。 同じアパートに暮らす住人のように、交わりそうで交わらなさそうなそれぞれの日常。 (第1期は7〜9月)
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#エッセイ

[第1期]書き手紹介

様々な背景を持つ複数人でそれぞれ綴る公開日記/エッセイ。アパートに暮らす住人たちの交わりそうで交わらなさそうな、それぞれの日常。 (第1期は7〜9月) re デザイナー IT企業のインハウスデザイナー。UI/UX・グラフィック・プロダクトのデザインやマネジメント・データ分析・社長のためのバンド奉公など仕事の幅が広すぎて何もわからなくなってきた。デカい水を見て煙草を吸うことと無防備な時間帯に人と話すことと水色と紫色がすき。ゴキブリ以外は多分食べれる。 Instagram

満月はまた溶ける | motoi

今日は満月かな… スーパー銭湯からの帰り道、川に渡る橋の上で空を見上げる。 同じような形と色味の街灯が、月の隣に並んでて、双子みたいだと思う。 今日の月は街灯と同じくらい明るいな、と思った後に、この感想はどうも趣きが無いなと苦笑する。 深夜0時を回った道路は、昼間の賑やかさが嘘のよう。 夜の街は、ぼぅっとした切なさが漂う。久しぶりの感覚。 淡路島の家の周りは、街灯が無くて、夜は文字通り、真っ暗。 何にも見えない。運が良ければ月と星が見える。 近くで、遠くで、鳴く虫の声に

たわいもない | ちろ

日々余計なことを考えすぎている。 朝起きて仕事に出るまで。今日も結構暑いな。こないだニュースで「地球沸騰化」とかいう物騒なことばを目にしたけど本当なのかな。でも日陰はすずしい。お盆明けたらマシになるんだろうか。毎年こんなもんだっけ?サンダルで出たのに足に日焼け止めを塗り忘れた。今の時代に生まれて生きていく人たちはどんな気候と環境の中暮らしていくんだろう。いきなりすべての物事が大丈夫になったりしないかな。温暖化は心配なくせに今朝エアコンをうっかりつけてしまって後悔してる。8時

アリとキリギリスとネロ | 橋口 賢人

アリとキリギリス。 アリは美学じゃない。キリギリスは反面教師ではない。 と最近思い始めた。 「アリとキリギリス」は簡単に説明すると、 アリ=貯蓄や投資など将来に備える キリギリス=毎日の生活を充実させて楽しむ で、備えていたアリは冬を乗り越えられて、備えていなかったキリギリスは冬を越せたり越せなかったりするイソップ童話です。(結末が色々ある) 小さい頃からずっとアリ的教育を受けてきた。 目の前の興味のあることや楽しいことを我慢して勉強をすることが評価された。 勉

自然とアスファルト | HINATABOKKO

札幌にも、ようやく夏がやってきた。歩くだけでじんわりと汗をかく、そんな陽気。こういう日は梅シロップのソーダ割りがいい。とろっとした飴色のシロップに炭酸を注ぐ。シュワシュワッと爽やかな音を聞くだけで、体温が少し下がったような気分になる。 ソーダ割りをすすりながら、窓の外の一本の木を眺める。我が家の庭には、松の木が生えている。樹齢はわからないのだけど、多分自分よりもずっと長いこと、生きているのだろう。カラスがよく巣を作るからと、あたまの方を斬られて以来、少し不恰好な形をしている

梅雨明け | re

最近雨が多かったせいか太陽を見ると「外に出なければ…」という謎の焦燥感と「この日差しの中外に出たら後悔するに決まっている」というこれまでの学習の鬩ぎ合いで、結局日が暮れるまで家で横たわり、ぬるくなった時間帯に自転車で銀座までサイクリングをして欲しいのか欲しくないのか分からないものを買ってしまう日々。 そんな梅雨明けを皆様いかがお過ごしでしょうか。 ケントハシグチの「交換日記的なことやりたい人~!」という誘いに考える前に「やりたい」と言い出していたのですが、特段書きたいことや

Dear | motoi

18日で個展終了。 裏舞台はいつもドタバタ。無事に終えれることが嬉しい。 個展に合わせて作った新作の指輪は‘ Dear ’と名付け、個展タイトルも同じものにした。 コンセプトが無いと作れないというのもあり、シリーズごとにコンセプトを掲げている。 Dearも同じく。 4月、南仏のMarseille。 Airbnbで見つけた宿は、アパートの最上階に住むカップルの家の一室。 セミダブルベッドと椅子、机、壁には世界地図と恐らく過去の宿泊者からの手紙が貼られた部屋に案内され、私は荷

身になるもの | オオタミユキ

「趣味ってなんですか」 わたしはこの質問にいつも戸惑う。 趣味という趣味が思いつかないから。 陶芸を、映画鑑賞を、お菓子作りを、 趣味ということができる人生がいいな。 これと言えるほどではないけれど 日常的に息抜きとしていることは料理だ。 特別ではない、ただ自分が食べるためだけのごはん。何でもいい。その開放感が不思議とやる気を育ててくれる。 元々、料理が好きなわけではない。 21歳で実家を出てから25歳くらいまでは料理に積極的ではなかった。 食べることは大好き。小

こじらせないためにも書いていたい話 | ちろ

すっきりとした文章を書ける人が羨ましい。 ここで言う「すっきりとした文章」というのは、どこか淡々としていて、大概「〜だ」「〜である」で締めくくられていて、感情も多少露わになっていて、他者の目をあまり気に留めていないように思える、カラッとした文のことだ。なんとなくのびのびしていて読んでいて気持ちが良いと思う文。そういう文章が生まれるまでに、計り知れない苦悩も苛々も背景がたくさんあるとは重々分かっている。それらを経て綴られたすっきりした文章にあこがれる。 わたしはどちらかといえば

週末のこと | 池上まい

週末、友人に会いにハンブルクへ行ってきた。 初めましてGermany! 今わたしはイギリスに住んでいるけれど、それまではヨーロッパなんぞ来たこともなく、噂で良いところだよ!1-2時間飛行機に乗ればヨーロッパ界隈どこでも行けるんだよ!などと聞いていただけだったので、イギリスに住んでいることを良いことに近隣の国へ行きまくってやろうと企んでいたところ、友人が仕事で長期滞在するとの噂を聞きつけアポを取り、ついにこの日がやってきたのだった。 飛行機が揺れるたびに向田邦子のことを思

才能 | ハコミドリ 周防

自分には才能があるだろうか。 「あなた、自分に才能があると思いますか?」と聞かれたら、 あなたはなんと答えるだろうか。 憧れと虚無感と羨望と嫉妬は、容易に自分の中で渦巻く。 才能のある、何者かになったひとたちのことを思うと。 私は、スヌーピーの『配られたカードで勝負するしか無いのさ』というセリフが大好き。だって『人生、諦めが肝心』と言われるよりもウィットに富んでいる気がする。そう、才能のカードが配られなかったんだから、仕方ないじゃないですか。と、ちょっとだけ気が楽になる

投げた杭は波を漂う | motoi

一番古い日記は、ウサギのキャラクターと小さな花が散りばめられた、ピンク色の日記。小学生に上がる前の子どもが書いた字は、象形文字にも見える。 4歳から日記を書き始め、途中何年も空いたりしたけれど、今も細々と続けている。 日記の良いところは、何と言っても、すっきりするところ。 話を聞いてもらいたいと思うことはあまり無くても、文字に書いて整理したい!は、ほぼ毎日思う。 人に話をするのは、難しい。 物心ついた時から、ひとりで絵を描いたり、本を読んだり。 おままごとも「お母さん役」