シン映画日記『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』
ヒューマントラストシネマ渋谷で阪元裕吾監督・脚本最新作『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』を見てきた。
『最強殺し屋伝説国岡』や『ある用務員』を手掛けた阪元裕吾監督の女性バディアクション映画『ベイビーわるきゅーれ』の続編。女子高生殺し屋コンビのちさととまふゆが、高校を卒業してフリーターをしながら所属している殺し屋協会の依頼で殺しの仕事をこなしていく中、殺し屋協会のアルバイトをしていたゆうりとまことの兄弟が、正規のメンバーであるちさととまふゆを殺せば二人の空いたポストの分正規クルーに昇格できるとそそのかされて、兄弟はちさととまふゆを狙うようになる。
前作同様の女のコのポップさと本格的なアクションを組み合わせたオシャレなバイオレンスアクション映画だが、本作は明らかに脚本がパワーアップした。
前作は1作目とあって、二人の強さと社会不適合者ぶりを十分に見せつつ、対抗する敵グループも描いていたが、それぞれのエピソードの長さのバランスやストーリーテンポが悪く、ずば抜けたアクションと各キャラクターの個性の際立ちのわりには脚本の歯切れがあまり良くなかった。
が、本作は見事に各キャラクターのエピソードの配分、ストーリーのテンポが格段に良くなった。基本はちさと&まふゆの正規コンビとゆうり&まことのアルバイトコンビのエピソードを交互に見せ、合間にそれぞれの殺し屋協会のスタッフと協会員とのやり取りとちさと&まふゆの普段の生活を見せる。
激しい本格的なアクションと各キャラクターのまるで漫才のようなオフビートなトークと社会不適合者ぶりを見せるのは前作同様だが、本作はストーリー展開のテンポを明らかに意識し、無駄にダラダラせず話を進ませている。ちさと&まふゆとゆうり&まことの二組のニアミス、コンタクトが早かったのも功を奏し、そこも逆手に取ってギャグにしている。
さらに、本作のストーリーのアクセントに正規クルーの殺し屋ライセンス停止のエピソードがあり、この流れは『007/消されたライセンス』の系譜のライセンス失効危機からの奮闘が見られる。
オフビートな会話もクエンティン・タランティーノ脚本ばりで、これをまるで新進気鋭の漫才コンビのネタ並にキレがあるボケ、間合いで見せる。
アクションのキレの良さも相変わらずで、特に伊澤 彩織と丞威の本格的なアクションが光っている。中盤の銃撃戦からのクライマックスのバトルは明らかに阪元裕吾監督が好きなインドネシアのアクション映画『レイド』の影響であることが伺える。
また、ちさと役の高石あかりの可愛さと変なキャラクターも健在。無駄にドタバタする外出前の動きを見せたかと思いきや、突発的に参加した賭け将棋のシーンではスロー演出と表情を使ったモンタージュの連続で静のシーンをも見せる。
前作同様のアクションとオフビートな会話の良さをそのままに、脚本も無駄がなくなり、テンポも格段に良くなり見やすくなった。オシャレさや音楽の良さではどうしても後発の『ガンパウダー・ミルクシェイク』と比べられそうだが、本作は本作のオシャレさと激しさを見せる。そこそこのオシャレさと過激さは激辛の汁なし担々麺のオシャレ飯系のアクション映画である。
『キル・ビル』、『デス・プルーフ』、『ガンパウダー・ミルクシェイク』と並ぶ稀代のキッチュ・アクション映画である。