シン映画日記『EO イーオー』
ヒューマントラストシネマ渋谷にてイエジー・スコリモフスキ監督作品『EO イーオー』を見てきた。
『水の中のナイフ』の脚本を手掛け、監督として『アンナと過ごした4日間』や『エッセンシャル・キリング』、『イレブン・ミニッツ』を手掛けたポーランドの巨匠イエジー・スコリモフスキ監督の最新作。サーカスで使われていたロバのEOが、サーカス団の団長の破産によりサーカスから離れ、牧場に引き取られるが、ある日EOは牧場を抜け出し、遠い街中に出てしまう。
ロバが主人公の映画、というのはある意味あってはいるが、全てはロバ視点というわけではなく、
EOが彷徨った先で出遭う人々の物語も時おり見せる。
サーカス団の人々と動物愛護を掲げるヴロツワフ市民のいざこざに始まり、ちょっと大き目のファミリー牧場に来たかと思えば抜け出してしまうし、
その先で地元のサッカーチームの試合に出くわし勝利を導くロバとしてもてはやされるも、パーティーの最中に対戦相手のフーリガンに襲撃されたり
。
ドストエフスキーの長編小説「白痴」のエピソードから着想を得たロベール・ブレッソン監督の長編映画『バルタザールどこへ行く』にインスパイアを受けた映画で、
ごく最近の映画ならスティーヴン・スピルバーグ監督作品『戦火の馬』にも通じる。
そこをイエジー・スコリモフスキ監督は現代に寄せ、六道の「人間道」に落ちてしまったロバの哀れなロードムービーを展開。
着地点は『バルタザールどこへ行く』とも『戦火の馬』とも違い、ナチュラルで、「あ、その方向もありかな」と思えるラストに仕上がっている。
中盤以降も気前のいいトラック運転手のエピソードとアラフォーぐらいの神父に引き取られるエピソードがあり、サッカー軍団エピソードも加えてドキュメンタリータッチでナチュラルだが意外性がある作りになっている。
その辺りが『エッセンシャル・キリング』や『イレブン・ミニッツ』のイエジー・スコリモフスキ監督らしい。
ロバを主人公にする発想自体斬新だが、
クセはあるが、
割と上手く描いている。
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