シン映画日記『シン・仮面ライダー』
TOHOシネマズ日比谷にて庵野秀明監督作品『シン・仮面ライダー』を見てきた。
「仮面ライダー」のリブート作品にして、庵野秀明による「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」の4作目の本作、
1971年〜73年に放映された「仮面ライダー」を踏襲しながら、
怪人の設定や仮面ライダーそのものの設定などあらゆる部分で令和リブートがなされていて、
『シン・ウルトラマン』と同様に「新」であり、「進」であり、「SIN(罪という意味)」であるが、
あらゆる演出のクセが強い映画だった。
ストーリーはSHOCKERの怪人に狙われる本郷猛と緑川ルリ子、そしてアンチSHOCKERの情報機関の男たちと行動を共にし、SHOCKERの合成オーグメント(怪人)と戦う。
思っていた以上に怪人が次から次へと登場したり、
後半には本郷猛サイドとSHOCKERにそれぞれ重要キャラが表れ、展開としてはいい。そう、ストーリーはいい。
しかしながら、本作の何がクセが強いかというと、
ほとんどの登場人物のセリフが固い。
それは登場人物のほとんどが人間ではないからある意味理にかなってはいる。
けど、作中の大半が「棒読みか?」と思うほど、抑揚がないというか、ズバリ、非人間的である。
ただ本当に登場人物の感情がないかというとそうではない。その中では池松壮亮が演じる本郷猛が戦いの中で苦悩に苛まれるシーンがあり、そこにはヒューマニズムを感じ取れる。
しかし、この本郷猛の設定に「コミュ障」というのがあるせいか、半分ぐらい抑揚がない。
このセリフの抑揚のなさは庵野秀明による意図的なものが見える。たしかに抑揚をなくすことで非人間が蔓延る近未来感は出る。
そう頭では理解できるが、ドラマとしてみるとどこか奇妙な会話が続く。
それと仮面ライダーや合成オーグメントと呼ばれる怪人のフォルムも微妙と言えよう。
今回の仮面ライダーだが、ベルトに風を当てての変身は旧作を踏襲したながれだが、途中でやたらヘルメットが脱げ、そこからまたヘルメットを被ったり、「仮面ライダーV3」に出てきたライダーマンみたいな感じである。特に後から出てきた某キャラはよりライダーマンっぽいヘルメットの付け方をする。
怪人も特に女性怪人はほぼ人間態なので、怪人感が薄い。
そして怪人全体に言えるのはバトルはそこそこにとにかく能書きをたれる。そのほとんどが『シン・ウルトラマン』の外星人・メフィラスみたいな感じである。『シン・ウルトラマン』の時はそれがメフィラス一人だからいいが、『シン・仮面ライダー』はほとんどがメフィラスタイプ。たしかに怪人ではあるけど、もう少し違うタイプの怪人も見たかった。
唯一、怪人で唸ったのはわりと後半の方に出てきた合成オーグメントで、旧作仮面ライダーで言うところの「ゲルショッカー」の怪人タイプになる。
あと、ストーリー展開そのものはいいが、世界観がとにかく狭い。基本的に緑川親子と本郷猛、それと情報機関の男たち周りの話に終始するので、
SHOCKERが街に出て悪の作戦を繰り広げるとか、
一般人との交わりがあまりない。
そういう世界観で作ったのだろうけど……。
そんなワケで、『シン・仮面ライダー』は非常にクセが強い仕上がりになっている。
コンセプトに沿って作っているので作りそのものは悪くはないが、
『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』みたいに強烈にはのめり込みにくい。