『ナイトメア・アリー』再び見てきた
今回もユナイテッド・シネマ浦和でギレルモ・デル・トロ監督作品『ナイトメア・アリー』を見てきました。
ギレルモ・デル・トロによるフィルム・ノワールの挑戦ながら、前作『シェイプ・オブ・ウォーター』を超える挑戦でもある映画なんだな、と改めて思い知らされた。
寓話、少女、怪物、水の映画だった『シェイプ・オブ・ウォーター』に対して『ナイトメア・アリー』は冒頭からラストまで大人の男による現実・トラウマからの逃避行の映画なんだよね。
それで逃げ込む先がカーニバル、酒、女、成功、欲望の世界というのが興味深い。
そこには獣人や蛇男、読心術、怪力、強い小人といったとことん胡散臭い世界観、精神学者や現実主義、テープレコーダー、ウソ発見器といった科学、酒やタバコといったフィルム・ノワールやハードボイルドのアイテム、そしてタロット占い、霊媒(偽)によるスピリチュアル・迷信の世界など相反するものが同居しながら、映画の世界観を作り上げてる。
主人公スタントンも、始めは何もないところから、まずは生活・役割りの定着→仕事での技術習得と自らのポテンシャルによる開花→愛欲とさらなる成功による独立→ペテンなので成功すればするほど塗り固める嘘、虚栄、欲望→決定的な乱れからの崩壊…と終盤は特にタロットの「塔」、「恋人」、そして本来の「吊るされた人」からの自ら進んで選んだ逆位置の「吊るされた人」へと墜ちていく男を見る映画なんだよね。
行き着く先がまさに悪夢の袋小路、と出来すぎた映画なんだよね。
この映画はかつてのフィルム・ノワールを自らの手法で蘇らせた、ネオ・フィルム・ノワールなんだよね。