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【2023年3月31日まで】東海大の博物館に行ってみた

結論

・長年築き上げても破壊は一瞬
・クマノミに癒やされる
・海の恩恵を受けている一方、汚している人類

 静岡県三保半島へ清水駅からバス、清水港からフェリーで三保半島へ行くことができます。三保半島の北側にある東海大学の2つの博物館、東海大海洋博物館と東海大自然史博物館に行ってきました。そのきっかけは、2つあります。
 1つは、1冊の博物館特集に取り上げられていたこと。もう1つは、水族館以外は非公開になるため、2023年3月の一部閉館の前に訪れたかったこと。
 予約なしで見学できるのが2023年3月31日まで。4月以降、水族館のみ1日100名程度の予約制に変更されます。2階の海の博物館、自然史博物館は閉館します。
 今回は、閉館直前の博物館を見学しました。

東海大海洋博物館

 2階建てで1階が水族館、2階は海についての科学博物館という構造でした。

1階(水族館)

 1階の水族館では400種類もの生物を展示。駿河湾の生物の展示、クマノミの繁殖が主なテーマ。駿河湾に生息している生物の標本展示から、深海の生命の生態について勉強できます。リュウグウノツカイ、ラブカの標本も見どころです。
 高さ6mもの巨大な海洋水槽、くまのみ水族館が特に印象に残りました。巨大水槽の中には、巨大なシロワニ、ウツボなど海の様々な生物を観察できました。トンネルもあり、下から水槽を覗くなど、さまざまな角度で眺められることができます。昔ながらの水族館という雰囲気を感じました。

海洋水槽を見上げて

 クマノミ水族館には、世界で20種類ものクマノミが展示されています。ベンチに座りながらクマノミを観察できる仕様。1977年、世界で初めてカクレクマノミの育成に成功して以来、クマノミの繁殖に力を入れており、大人になるまでの成長も見られました。生後1ヶ月は目を凝らさないと見えないほど小さく、1年経っても数cm程度のかわいらしい姿、2年経って、やっと水族館で見られる大きさに成長します。

クマノミの成長記録

 生まれたての小さい姿を見ると、魚がなぜ、大量に産卵するかがわかります。食べられたり、潮に流されるなど大量に生命を誕生させても次の世代へつながるまで、生き残るのはほんのわずかということがわかりました。自然界の生存競争の厳しさを感じました。
 津波実験コーナーもあり、1時間ごとに開催されています。たかが20cmの津波とはいえ、津波の恐ろしさを体感できます。揺れを感じたときは海岸や河口から直ちに避難しましょう。詳しくは、こちらをお読みください。

2階(科学博物館)

 2階は海の博物館。海の研究のために使用されている機器から環境問題について触れられていました。巨大な標本も展示されていました。
 メカニウムという海の生物の動きを再現した機械が展示されており、操作もできます。動きだけではなく生物からヒントを得て改良しようという研究は世界中でみられます。例えば、蓮の葉の表面の構造によって水をはじくすることに目をつけて撥水性の傘が開発されました。
 全長18.6mものピクシーシロナガスクジラの全身骨格、メガマウスの剥製も見どころの1つ。巨大な口をもつメガマウス、巨大クジラの迫力に圧倒されました。
 海洋調査についての展示もあり、海底の採掘、生物の捕獲に用いられる道具、機械の展示もあります。海洋環境、地形を調べるために利用されています。
 SDGsに関する展示もあり、現在、問題になっているマイクロプラスチックや漂流するゴミ。プラスチックは紫外線、波の力などによって細かく砕かれます。自然界で分解され、土などに戻ることはありません。大きなゴミを食べて窒息してしまう生物、胃腸に溜まり、餓死していく生物の現状が伝わります。ポイ捨てされたゴミが海岸に打ち上げられます。海岸でゴミを見ると、他国の言語が書かれたゴミが落ちていました。
 レジ袋の有料化、ホテルでは歯ブラシの無料配布の停止、カフェでは、紙製ストローの提供など、日本でもプラスチックの消費を減らす取り組みが行われています。

インド洋に流れ着いたゴミ

 1m3の海水からとれる塩の展示もされていました。約35kg意外と少ないことがわかります。海水でとれる塩分は、食塩だけではありません。豆腐の凝固剤になる塩化マグネシウム、肥料の原料になる硫酸マグネシウム、石膏の元になる硫酸カルシウムがあります。塩も貴重な資源と言えます。

東海大自然史博物館

 ケティオサウルスのモニュメントが目印。入口では、トリケラトプスの発掘現場がお出迎えしています。3階建ての構造、入口から3階へエスカレーターで直行します。

エスカレータで体感する、生命誕生から動物が陸に上がるまで

 エスカレータを乗ると、生命が誕生した15億年前に戻り、動物が上陸するまでの歴史を振り返ることができます。地球が誕生した頃、隕石の衝突が頻繁に起きており、熱々で赤い溶岩がむき出しの状態でした。しかし、月の誕生により、隕石が月に引き寄せられます。これにより、地球への衝突が減っていき、大気が冷やされ、1000年にわたって雨が降り続きます。その結果、海が誕生。地表についていた塩化物が雨水に溶けこむことによって、海の水が塩辛くなりました。栄養豊富な海の中でアメーバのような微生物が誕生し、植物、動物に分かれました。植物は光合成によって二酸化炭素をエネルギー源にして必要な養分と同時に酸素も生み出します。これによって二酸化炭素の濃度が減少し、酸素が量産され、オゾン層が誕生。オゾンは酸化力が強く、紫外線を吸収する効果があります。紫外線は遺伝子を破壊するため、皮膚がんになることもあり、浴びすぎは危険。植物のおかげで紫外線の直撃を回避できるようになり、酸素も適度に存在し、植物が生い茂って動物の棲める環境が整ってから4.16億年前に陸上に動物が登場。これが両生類の誕生です。

3階 陸上生物の登場〜恐竜の時代(中生代)

 最初の陸上生物の展示があります。三葉虫など同時期に生息していた海洋生物の化石の展示もありました。爬虫類の誕生とともに、恐竜の展示もされていました。ステゴサウルス、トリケラトプスなど草食竜、アロサウルスなど肉食竜、セイルモサウルス巨大竜の全身骨格の複製の迫力がありました。この光景は、福岡県北九州市にあるいのちの旅博物館にもあります。

2階 哺乳類繁栄〜人類の環境破壊の時代(新生代)

 新生代は、ポスト恐竜の世界。現在のメキシコ北部、ユカタン半島に衝突した直径10kmもの巨大隕石。これにより、大気中に岩石の破片などが広がり、太陽光を遮りました。その結果、気温が低下し、植物が生育できなくなりました。これによって、餌もなくなり、恐竜はほとんど絶滅し、恐竜繁栄の時代が終息しました。ほんの一部の恐竜が生き残り、ニワトリなどの鳥類に進化して現在に至ります。
 恐竜の後を継ぐように、5000万年前、哺乳類の時代に変化しました。小型のネズミが進化し、大型哺乳類が繁栄。
 人類も450万年前のアウストラロピテクスの誕生、しかし、人類が肉を食糧、皮を衣服、脂肪を燃料に利用し乱獲されたことにより、マンモス、オオツノジカなど巨大哺乳類が絶滅してしまった説があります。

1万年前に生息していたナウマンゾウ

1階(静岡県の地理)

 静岡県にそびえる富士山、南アルプスなど地質についての展示、生物など自然環境について展示もありました。さらに、静岡県は東西に広く、浜松周辺、静岡市周辺、伊豆半島周辺でも環境が異なります。陸上の生態系、植生について地域に分けて説明されていました。さらに、博物館のある三保半島の成り立ちについても展示で説明されていました。

 完全予約制に変更する前に行きたかった東海大海洋博物館、自然史博物館。ここでは、海の生物の姿に癒やされました。それと同時に、長い年月をかけて築かれても、一瞬で破壊される地球環境、海洋調査の目的や手法についても勉強になりました。

参考文献


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