東北地方で誕生した肉をムダにしない知恵とは?
結論
終戦直後、駐留米軍関係者が食べなかった部位を安く手に入れ、美味しく食べる方法が現在の名物料理につながる。
いい肉の日
11月29日は、いい肉の日です。「より良き宮崎牛づくり対策協議会」によって、2004年制定されました。より良き宮崎牛づくり対策協議会は、宮崎牛のPRのため、宮崎県、JA宮崎経済連など30の団体によって1981年に設立されました。九州場所の千秋楽、幕内優勝力士の賞品として、宮崎牛1頭分のお肉が贈呈されます。
現在では、全国各地の精肉店、焼肉店など、お肉を扱うお店で、オトクに楽しめるキャンペーンなど展開されています。
2023年のテーマは日本三大和牛
2023年は、日本三大和牛の食べ比べについて話しました。日本三大和牛は、三重県の松阪牛、滋賀県の近江牛、兵庫県の神戸牛を指します。三大和牛の味が気になる方は、ぜひ、下の記事をお読みください。
2024年いい肉の日のテーマは、東北地方で出会った肉料理。
2024年は、東北地方で出会った肉料理について解説します。終戦直後の日本は貧しく、食べることすら苦労する時代でした。GHQによる占領戦略により、マッカーサーをはじめ、多くの米軍関係者が日本へやって来ました。食べなかった牛肉の部位を有効活用することによって飢えをしのいだり、生計を立てていました。
十和田バラ焼き
十和田バラ焼きは、青森県三沢市で誕生し、十和田市に広まりました。三沢市は戦前、日本海軍の航空基地が置かれました。戦後、自衛隊と米軍共同の航空基地に変わりました。米軍基地の関係者も多く移住しています。現在も三沢市の人口の2割程度、米軍関係者が住んでいます。
米軍関係者の食べ残しを美味しく食べるために開発された
1950年代の米軍関係者は、牛バラ肉を食べず、捨てていました。その牛バラ肉に目をつけ、美味しく食べる方法として、バラ焼きが開発されました。隣の十和田市に伝わると、町おこしとしても活用されるようになりました。
牛だけではなく、豚、馬のバラ肉を使っているお店もあります。バラ肉を大量の玉ねぎ、醤油ベースのタレを加えて鉄板で炒めるだけです。レシピがシンプルなため、タレさえあれば家でも再現できます。タレも、自分好みでよいです。
今回は、馬のバラ焼きをいただきました。ご飯がすすむ甘辛い味です。馬肉は、豚肉、牛肉より脂身が少なく、あっさりしていました。
パイカ
パイカとは、豚バラ肉周辺にある軟骨のことを指します。沖縄では「ソーキ」と呼ばれています。パイカは1頭に500g程度しかとれない貴重な部位です。しかし、豚バラブロック肉を切り分けるときに、捨てられることが多かったです。2006年、三沢市畜産公社によってイベントで提供したことがきっかけで食べられるようになりました。三沢市では、カレー、煮込み、焼きなどで食べられています。
レトルトカレーはお土産で購入できます。じっくり煮込むことによって、軟骨の部分はモチモチしてとろけます。野菜も煮込んでいるため、うまみと深みが増します。硬い骨の部分がないため、気にせず食べられます。
仙台牛タン焼
仙台名物といえば、牛タン焼きです。仙台市内には100店舗以上もの牛タン焼き専門店があります。伊達の牛たん本舗など、名店では家庭でもお店の味を楽しめるように、冷凍のタンがお土産に販売されています。温める駅弁も有名です。牛タンラー油など、牛タンを使ったお土産も続々と誕生しています。
フランス料理+焼鳥→牛タン焼き定食
1948年、味 太助で誕生しました。元々、太助は仙台市で営んでいた焼鳥屋さんでした。
戦後、米軍関係者は仙台にも駐留していました。当時、米軍関係者はテールとタンを残していたため、安く仕入れることができました。
太助の創業者はフランス出身のシェフから「牛の舌が最も美味しい」と聞いていました。焼鳥の屋台の経験から、炭火で牛タンを焼いてみたところ、美味しいということに気づきました。
テールスープはフランス料理のタンシチューがモデルです。日本で牛肉を食べる習慣がなかったため、日本人の味覚に合うように塩味のあっさりしたネギたっぷりのテールスープに変化しました。
主食は麦飯です。当時、白米は高価でした。とろろとの相性も抜群です。大量の白菜の漬物、青南蛮(青唐辛子)を添えると、牛タン定食の完成です。
牛タンの調理法が仙台名物になった。
宮城県には、仙台牛などブランド牛もあります。しかし、ブランド牛のタンは貴重なため、仙台牛の牛タンは高嶺の花です。多くのお店では国産牛ではなく、アメリカ、オーストラリアの牛タンを使用しています。
仙台の牛タンとは、仙台牛など宮城県で育てられたブランド牛からとったタンではなく、牛タンの調理法が名物です。
仙台で牛タンを食べた。
仙台市に行くと、必ず1度は食べます。1枚1枚大きく、厚く、サクッとコリコリ食感を楽しみます。お店によって、塩味をしっかり利かせたり、やわらかく加工するなど、ちがいも見られます。
牛タン焼きの元祖である太助は、塩分控えめです。仙台市で牛タン焼きのお店を探して食べ比べると、自分の好みがわかります。
2024年肉の日は、東北地方の肉料理について取り上げました。現在、名物として注目されている東北地方の肉料理は、米軍関係者が食べずに残していた部位をうまく活用していました。