クリーンミート 培養肉が世界を変える
書名:クリーンミート 培養肉が世界を変える
著者:ポール・シャピロ
出版社:日経BP
発行日:2020年1月9日
読了日:2020年8月19日
ページ数:368ページ
8月 :10冊目
年累計:31冊目
『クリーンミート』
最初は何だろう?って思った。
でも呼んでびっくり、人工的に作ったお肉という事である。
細胞を培養させて、お肉を作る。
なんかすごいお話である。
個人的な話になりますが、『ビヨンドミート』という
米国のフェイクミートの企業に投資していたのですが
フェイクミートとクリーンミートは
似て非なるものなんですよね。
(今までは少し混同していた部分もあり)
✍️クリーンミートは培養肉
こちらは人工培養して作るお肉であり
ベースとなるのは肉の細胞である。
でも、実際に家畜を育てる必要はないんだよね。
可食部だけを培養できるから、本来食用に値しない
臓器とか不要なところを除けます。
ここが大きなポイント。
✍️フェイクミートは代替肉(肉もどき)
こちらは植物性タンパク質をベースに作られた
代替肉ですね。だから動物性のお肉の要素は一切なし。
豆腐で作ったハンバーグとかあるじゃないですか?
あんな感じで食感や味わいをお肉に近づけているけど
お肉の成分は一切ないですよっていうものです。
このフェイクミートは多くの企業が実用化しています
例えば、フェイクミートの代表格は
米国の「ビヨンドミート(上場済)」や
「インポッシブルバーガー(未上場)」があります。
そもそも、なぜ現在お肉があるのに
わざわざ、クリーンミート(培養肉)を作る必要があるのか?
それは人工増加に伴い、家畜を増やす必要があります。
その家畜(牛など)は多くの水・飼料を必要としますし
その分の土地を切り開く必要もあります。
また、動物が吐き出す二酸化炭素も莫大な量です。
つまりお肉を作るためには牛を育てる必要があり
その牛を育てるために莫大なコストや環境破壊につながる事が
起きていて、問題になりつつあるという事です。
それに品質面でも牛肉を加工する工程で細菌などが
付着する点も指摘されているみたいです。
また、家畜が出した糞尿や排泄物は土壌汚染や河川に流れて
水害などを引き起こしているので環境面でもすごく良くない。
培養肉はそうした点がないので
”クリーンミート”と呼ばれているのですね。
例えば、世界で生産される大豆の大半は動物の飼料になっている。
その大豆の生産には広大な土地が必要であり
そのために熱帯雨林の森林伐採などが行われているみたいです。
クリーンミートと従来の牛肉生産方法を比較すると
・必要な資源の量は最大45%減
・土地の面積で99%減
・水量で96%減
で済む。
まとめると
・人間の健康を損なう可能性がある
・気候変動の原因になっている
・食料安全保障上の問題がある
・地球の資源を損なっている
でしょうかね。
そんなメリットが多いけど、一番の課題はコスト。
まだ量産化への道は程遠くて
ハンバーガー作るのにもものすごいコストがかかる。
2013年に世界初の培養肉が作られたハンバーガーは
なんと、パテの値段は33万ドル(約3,500万円)。
試験管・研究室で細胞から作られたので
すごく高価です。
培養の過程で”牛胎児血清”が必要なんですが
これが高価なのが理由の一つです。
またステーキのように成形するのも容易じゃないので
まずはひき肉のような形で流通すると思われます。
馬車が車に置き換わったように
もしかしたらフード業界でも
こうした事が起きるかもしれないですね。
培養肉というと拒絶反応を示すと思いますが
昔は氷も天然氷を使っていた1880年代には
人工氷が出てきた頃にはすごい反発があったようです。
冷凍に使われるアンモニアが漏れて水中に溶け出し
氷を汚染する恐れがあるのでは?という事です。
ただ、現代は家庭の冷蔵・冷凍庫で簡単に生成できます。
もしかしたら、クリーンミートも「人工氷」と
同じ道をたどるかもしれない。
最初は誰しもが受け入れがたいと思うものでも
その安全性が確認されて、少しずつ普及すれば
それが当たり前のものになると思っています。
ただ、そこにはストーリーが必要だと
著者は語っている。
例えば、米国で生魚を食べる寿司がどうやって普及したかに言及している。
今でこそ人気の寿司ですけど
海苔に抵抗があった米国人がいるので、
巻寿司を裏返しライスを外側にする。
そして、マグロをアボカドに置き換えて名称も変えたのが
カリフォルニアロールです。
きっかけはこうした事でも良いのかなという好例ですね!
社会課題を解決するクリーンミート
今後注目していきたいです!