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ムゲンのi(最高傑作だ❗️)
書名:ムゲンのi(上)(下)
著者: 知念 実希人
出版社:双葉社
発行日:2019年9月18日
読了日:2019年9月22日
ページ数:352ページ(上)、368ページ(下)
9月 :9・10冊目
年累計:105・106冊目
こんにちは。
この3連休で知念さんの最新刊を読破しました❗️
(ページ後半からネタバレしますが、途中まではネタバレなしです)
前評判通りの超大作でした❗️
上下巻で720ページありますが、一気読みできます。
上巻は新しい世界観に慣れるまで時間かかりますが
下巻はあっという間に感じました。
正直、何を書いてもネタバレになるので
本の帯から引用するとこんなお話です。
知念さんの医療ミステリーは何冊も読んでいますが
今回のは予想できない、全く異なる世界観です。
『若き女医は不思議な出会いに導かれ
人智を超える奇病と事件に挑む−。
夢幻の世界とそこに秘められた謎とは!?』
そして、こちらの装丁。
美しいですよね。
読了後に改めて眺めてみると
映像化するとこんな世界が広がっているんだろうな
下巻の表紙の神秘的な生き物の姿の理由も
わかる気がします。
表紙からファンタジーを想像するかもしれませんが
医療ミステリーである事に変わりはないです。
お医者さんだから書ける作品でもあります。
様々な事件、過去、現在。
怖い世界もあり、優しい世界もあり。
真実は何なのか?
家族とは何なのか?
愛とは?
まさかの展開の驚きもあり
これぞミステリーという真髄を体感。
下巻の後半で目が潤んできました…。
久しぶりに小説の世界に没入してしまって
主人公への感情移入度合いが高まり
感極まってしまいました…。
これだから読書やめれないよね…。
出会わないと人生損してるレベルだわ。
感動しました❗️
導入から大きく物語が動き出し
読者を知念ワールドへ惹きつけ
ムゲンのiへと誘う。
最後の着地点は見事としか言いようがないです。
出会えてよかった。
余韻も素晴らしいです。
これが”ムゲンのi”です
…
さて、ここからはネタバレでいきます。
そのため、読んでない方は絶対読まなようにしてください。
現実世界と夢幻の世界を行ったりきたりするお話。
語彙力がなくて表せないのだけれども、これは物語の一面にすぎない。
夢幻の世界はトラウマや忘れられない過去に囚われて
抜け出せない、精神世界みたいなものかな。
その精神世界に擬似的に入っていき
そのトラウマ、イレスの原因となった出来事を突き止め
それを主人公の愛衣が解決していく。
そんなお話である。
その解決していくにあたりキーとなるのが
”ククル”という精神世界に存在する自分の分身・心を
具現化したうさぎのような猫のような生物。
このククルはその人自信を擬態するようなものだから
愛衣のククルは非常に愛らしい。
このククルとのやりとりを通して自分自身を知り
患者の心に寄り添っていく。
当然、トラウマを抱えている患者の精神世界は
非常に混沌・カオスになっていて
現実ではありえないような恐怖な世界が待っている。
ククルに励まされながらも、その世界を彷徨い
見事に救っていく。
目覚めない患者を救うのに
こうした世界観を演出して、過去、トラウマを表現する。
すごい筆力を感じました。
こんな物語はみた事がない。
精神世界を描くとこんな感じなのかなぁって思わせる
知念さんの表現力・描写力に圧倒されました❗️
そして、イレスで4人眠りから冷めない
その4人目が少年Xだとずっと思っていたら
なんと、愛衣自身であると明かされる終盤の驚き。
マジか…って感じでした。
愛衣も23年前の事件でトラウマを抱えていて
ありえるし、読み返すと伏線もあったんだけど
全く気づかなかったので衝撃は人一倍でした。
そして、少年Xがまさかの自分自身を救ってくれて
誰よりも尊敬していた院長・袴田先生である事や
その袴田先生が愛衣の父も手にかけていた…。
ものすごく悲しい。
でも、そんな愛衣を救ってくれたのはククル。
それも愛衣だけのククルではなくて
家族の”愛”が詰まった多くのククルに支えられている。
とても温まるストーリー展開に
涙せずにはいられませんでした。
心が通じ合うとか、誰かを心のそこから思うっていうのは
魂、ククルとして大切な人の中に宿って永遠に引き継がれる。
そんな知念さんの愛を感じました。
ムゲンのiは夢幻の世界であり
そして私という”i"でもあり
誰もが持ち得ている”愛”でもあるのである。
壮大な世界観で描かれた医療ミステリー。
素晴らしいの一言に付きます。
読まれた方は同じ感想を抱いたのではないでしょうか。
ますます、知念さんのファンになりました💫
以下、登場人物などまとめ(壮大なネタバレ含む)
<病院>神経精神研究所付属病院
識名愛衣(主人公、23年前の通り魔事件で心の傷)
袴田聡史(精神科医、院長、真犯人)
杉野華先生(愛衣の先輩)
<第1章> 夢幻の大空
片桐飛鳥(21歳、パイロットを夢見るが事故で右目を失明し断念)
羽田将司(飛鳥の父、パーキンソン病、末期ガン)
<第2章> 夢幻の法廷
佃三郎(冤罪専門の弁護士)
南方聡子(三郎の妻。3年前に乳がんで他界)
久米隆行(大学研究室講師
佐竹優香(福岡生まれ、母子家庭、母親は高校時代にがんで失う、久米の元恋人、殺害される(実は自殺)、醜形恐怖症)
加納環(第3のイレス患者、久米の恋人)
小宮山浩太(自白調書作成した刑事)
<第3章> 夢幻の演奏会
加納環(耳硬化症、久米と同級生)
<警察>
・園崎伸久(巡査部長 警視庁捜査一家)
・三宅(練馬署)
少年Xは袴田聡史の戸籍を乗っ取り、なりすます。
23年前の通り魔事件の犯人。愛衣の母を奪った。
愛衣にマブイを奪われて、放心状態になり、事故に遭う。
愛衣の父親は少年Xを突き止めるようと動いていたところ、この袴田に殺された(アパートで殺された中年男性)。
23年前に少年Xを捕まえたのは愛衣の父。
袴田は久米を無罪にする。そして、
久米を中年男性(愛衣)の殺害者として警察に思い込ませる。
草薙蓮人=少年X=袴田聡史=病院の院長
☑︎ユタ(マブイが抜けた体、「夢幻の世界」へ入り込める人)
☑︎マブイ(魂)
☑︎マブイグミ(マブイを吸い取られた人を起こす方法)
☑︎ククル(マブイを映す鏡のようなもの)
☑︎サーダカンマリ(他人のマブイを吸い取る能力がある人)
☑︎マブヤー、マブヤー、ウーティキミソーリ(呪文)
・マブイは喜怒哀楽で落としてしまう事がある
・マブイは落とす場合と吸い取られる場合がある
・マブイグミが成功すれば、体にマブイが戻る