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医療・薬の技術

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吊り下げない点滴

吊り下げない点滴

重力による吊り下げ点滴療法は、輸液バッグを点滴スタンドに吊るし、重力によって生じた圧力を利用して薬液を患者の静脈に投与するもので、一般的な医療行為として世界的に普及しています。

しかし、この医療法は患者の移動を制限し、移動の際には転倒事故や血液の逆流事故を引き起こす可能性があります。

産業技術総合研究所は、大気と真空との差圧を利用した空気加圧技術により、点滴スタンドを用いることなく、電源を必要

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魚の鱗で宇宙病の予防

魚の鱗で宇宙病の予防

国際宇宙ステーションでの長期宇宙滞在は、既に日常的に行われている。今後は近い将来、月面での基地建設や長期滞在、あるいは重力の小さな月面から他の惑星への探査ロケットを飛ばし、宇宙での長旅を人類は経験していくことになるだろう。

宇宙での長期滞在は、地球と比べて著しく小さな重力のもとでの生活を強いられ、かつ宇宙放射線被ばくや1日の長さが異なる環境に置かれるなど、地上とは様々な違いがある。これらの影響で

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虫歯治療

虫歯治療

虫歯治療に行くと、プラスチックとシリカの粉末を混ぜた複合樹脂「コンポジット・レジン」を虫歯の穴に入れ、紫外線ライトを照射すると瞬時に固まり虫歯治療が終わる。実に簡単に虫歯治療は終わる。

一昔前は、合金「アマルガン」が使われていた。水銀を含む液体を虫歯の穴に入れ、銀とスズを混ぜると水銀が反応しはじめ、固体になる。有害な水銀が常に口の中にあるのは、今考えると怖いことだ。
さらに昔の人は、虫歯とどう付

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化学兵器から生まれた『抗がん剤』

化学兵器から生まれた『抗がん剤』

第二次世界大戦中、イタリアのバーリにある連合国軍の重要な港に、ドイツ軍が大規模な空襲を行った。この攻撃は「バーリ空襲」と呼ばれ、連合国軍にとって恐るべき大失態となった。その理由が、マスタードガスの流出だ。
被害を受けたアメリカの輸送船の一つ、ジョン・ハーベイ号は、2000発ものマスタード爆弾を極秘裏に積んでいた。ドイツ軍の攻撃により、この化学兵器が海水に流出、蒸発して毒ガスとなり街に拡散した。マス

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咳の音で診断

咳の音で診断

ワシントン大などの研究チームは、せきの音を手掛かりに、結核患者を見つけるAIを開発した。ケニアで103人の肺結核患者と46人の他の呼吸器疾患の患者を対象に、自然に出た約3万3000回のせきと、意図的に出した1600回のせきの音をスマートフォンで録音してAIが学習させた。結核患者を見分ける精度は76%、さらなる向上を目指している。

音を分析すれば、さまざまな病気を判別できる可能性がある。米テキサス

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ADHD治療アプリ

ADHD治療アプリ

塩野義製薬は、ADHD治療アプリの申請を行った。画面上で乗り物を操作し、ADHD治療で重要な脳の前頭前野を活性化するように設計されているという。

治験では6〜17歳の患者164人にアプリで1日25分遊んでもらい、6週間後にADHDの症状の緩和について聞いた。すると主要評価項目の「不注意」や「多動/衝動性」などのスコアで、精神療法など既存の治療法に比べ統計的に有意な改善が認められた。

『参考資料

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マダニのタンパク質

マダニのタンパク質

九州大学の研究チームはマダニが血を吸う際に血液が固まらないようにするしくみを解明した。マダニが分泌するたんぱく質「マダニン」が化学変化し、血液の凝固を抑制する働きが1000倍高くなっていた。輸血などに使われる血液凝固抑制剤やマダニ駆除剤などへの応用が期待されるという。

『参考資料』

https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1045/

睡眠革命

睡眠革命

「立ち寝」ボックスが注目を集めている。

ボックスの高さは約2.5メートル。立ったまま寝ることで知られるキリンにちなみ「ジラフナップ」と名付けた。ボックスの中に入り、椅子に腰掛けて足裏とすねを固定する。上半身をアームレストにもたれかけると、体を動かさずに眠ることができる。

横になると深い眠りに入りやすい。立って眠ることでちょうど良い睡眠を維持できるという。

『参考資料』

https://g-

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【医療機器の歴史】心臓への電気刺激とペースメーカ

【医療機器の歴史】心臓への電気刺激とペースメーカ

心臓ペースメーカの歴史の原点はどこに置くのか、明確にするのは難しい。というのは、心臓ペースメーカーそのものよりずっと昔から、心臓に電気刺激を与えれば仮死者が生き返った例が伝えられている。しかも、心臓が電気で動いていることを証明したアイントーフェンの発見より、さらに前の時代から、電気刺激法があったことがわかっている。

古い例の一例として、1874年にロンドンで発刊された「仮死者の蘇生に関する評論」

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【医療機器の歴史】脳波計

【医療機器の歴史】脳波計

アイントーフェンのノーベル賞受賞から5年、ドイツの精神科医ベルガーは、脳波を発見した。心電図の電圧が1mVなのに対して、脳波の場合は、さらにその1/100~1/10に当たる10~100μV程度しかない。微弱な電圧、心電図の測定でさえ難しいのに、脳波測定はさらに工夫が必要だった。
さらに、脳から出ている電位であることを証明するのも難しい。「心電図が心臓から」という根拠は、脈拍との一致であった。しかし

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飲むセンサー

飲むセンサー

アメリカの研究チームは、便秘など胃腸の運動障害が起きている場所を特定できるカプセル型のセンサーを開発した。

長さが2センチ程度のカプセル型センサー、このセンサーを飲み込んで、皮膚に貼り付けた電磁コイルから届く磁力の大きさをセンサーで検出することで位置を特定する。

センサーの位置の時間変化を調べることで、胃腸のどこで運動障害が起きているかを特定できるという。飲み込んでスマートフォンなどで胃腸内で

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骨を3Dプリンターで作る

骨を3Dプリンターで作る

大阪大学の研究チームは、3Dプリンターで印刷できる、骨に似た性質の合金素材を開発した。

この合金は、6種類の元素を混ぜてることで優れた性質を発揮している。鋳型で冷やし固める鋳造で作製した模型と比べ、3Dプリンターで印刷したにも関わらず、強度は約1.4倍に高まり、弾性率は2割ほど下がって柔軟性が増したという。

今後、5年以内をめどに人工椎間板や人工関節、歯のインプラント(人工歯根)に向けた実用化

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在宅医療

在宅医療

新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけに、日本でも在宅医療の議論が活発化している。

在宅医療というと、オンラインで医師に診察してもらったり、ウェアラブル端末を身につけて遠隔で体の状態をモニタリングしてもらうなど、言い方は悪いかもしれないが、その程度くらいしか自宅医療はできないだろうと思っていた。

しかし、海外の研究事例によると、病院や点滴センターで受ける透析などの点滴治療を、自宅で受けられ

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BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)

BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)

米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームは、脳とコンピューターを電極でつなぎ、声を出さなくても脳の電気信号を文字に変換する技術を開発した。

開発したのは、脳とコンピューターを直接つないで情報をやりとりする技術「BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)」だ。脳に電極を付けて、脳の信号をもとに文字などを伝えられるようにする研究が進んでいる。

脊髄損傷患者の実験では1分間に29文字入力

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