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2022.07.17〜青空のかけら〜

独立書店さんたちシェア本屋BOOKSHOP TRAVELLERで思わずジャケ買いしてしまった一冊。1980年代のイギリスを舞台に、孤児院で暮らす姉弟が、自分たちの運命を切り開いていく物語。


弟思いで、周りのことを冷静に捉え、期待に応えられるよう振る舞う姉と、自分の信念のままに、真っ直ぐに突き進む弟。
孤児院での生活、受け入れ家族との日々、人頭税の導入で揺れ動く民衆、実母への想い、などなど、幼いふたりに降りかかる試練は過酷で、どうか二人に穏やかな日々が訪れますように……と終始願わずにはいられなかった。


この物語は、姉が過去を振り返る形で紡がれていくが、彼女の観察眼や想像力の素晴らしさが、語りからひしひしと伝わってくる。彼女が話す情景のひとつひとつが、まるで目の前にあるみたいに瑞々しくて、独特の比喩や、心のなかで密やかに吐くちょっとした毒舌には、クスクスと笑わずにはいられない。特に絵の具の色を覚えるために独自の名前をつけるエピソードが素敵だ。そんな彼女の才能の豊かさが感じられる描写に、最初から最後まで引き込まれっぱなしだった。

そしてお話の最後。密かに静かに組まれていた伏線が、さっとほどける瞬間、なんとも言えない、あまりにも切ない、でも、ものすごく温かい気持ちが胸の中にが溢れた。様々なシーンの見方がひっくり返ってしまって、つい、頭から読み返したい気持ちに。
何が起きたのかはぜひ作品を読んで味わってほしい……

すずき出版の海外児童文学は、児童文学シリーズで世界一周!をかかげており、そのとおり様々な国の、少年少女を主役にした作品を翻訳・刊行している。
世界を知り、その国の子どもたちを知る。大人も子どもも楽しめるシリーズなので、今後も他作品を楽しんでいきたいな〜。

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