tatta

「たった一冊でいいのだ」をモットーに、本のある毎日を綴っています。 中のひとは、音声コンテンツ制作の仕事に従事するつくばの民。ダンスと読書とコーヒーがすき。 最近一児の母になりました。 中のひとのnote⇒https://note.com/sora_toe

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最近の記事

2023.01.02〜目の見えない白鳥さんとアートを見にいく〜

自分の中に偏見なんてない、と誰だって思いたいと思う。 「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」は、自分の中のそんな願望を軽々と打ち砕いてくれる本だった。 だってそもそも、この本を手に取り「興味深い」という感情を抱いた時点で、私は「目の見えない白鳥さん」と自分の間に、線を引いていたのだろうから。 この本は、筆者の川内さんが全盲の白鳥さんと出会い、彼と全国各地の美術館めぐりをしながら対話をした日々の記録が綴られている。 白鳥さんは、当時気になっていた女性と美術館でデートをし

    • 2022.12.21〜DarkHorse 好きなことだけで生きる人が成功する時代〜

      好きなことだけで生きる。 タイトルどおりそんな人生が送れたら幸せだなと誰もが思うが、果たして私達は自分の「好きなこと」を、本当に理解できているのだろうか。 そんなことを考えさせられる本だった。 タイトルにもなっている「ダークホース」とは「既存のやり方とは異なる方法で、成功に到達された人」をいう。 大学を中退したり、職を転々としたり、一見するとどこに向かっているのかわからない人たちだが、彼らなりの方法で着実に「自分にとって最適な道」を選び取っている。 この本は、こうした何百人

      • 2022.12.16〜ニュートリノの夢〜

        2002年にノーベル物理学賞を受賞した、小柴昌俊先生のエッセイ。ポリオに苦しんだ少年期、学問や恩師との出会い、研究に邁進する日々とノーベル賞受賞、財団の創設など、物理学に尽くした人生がユーモア溢れる文体で綴られている。 最も驚いたのは、小柴先生が物理学科を受験した理由が、高校時代の物理の先生に「あいつは勉強しないから物理学科なんて絶対入らないだろう」と言われ、絶対に見返してやると決めたから、というものだった。それまでの小柴先生はどちらかというと文学少年で、ドイツ文学の専攻を

        • 2022.12.11 〜サンタの友だちバージニア〜

          サンタクロースっているの? こどもが生まれて、幼い頃抱いた疑問に、別の形で再び向き合うときが来た。周りのお家は、家族でどんなクリスマスを過ごしているのだろう。 いまから100年ほど前も、やはりサンタクロースはこどもたちにとってワクワクの存在だったようだ。そして「サンタクロースいる/いない」も、盛り上がる話題のひとつ。そんななか、学校の友だちとのサンタ論争にどうしても納得が行かず、新聞社に「サンタクロースっているんですか?」と、投書した女の子がニューヨークにいたらしい。 こ

        • 2023.01.02〜目の見えない白鳥さんとアートを見にいく〜

        • 2022.12.21〜DarkHorse 好きなことだけで生きる人が成功する時代〜

        • 2022.12.16〜ニュートリノの夢〜

        • 2022.12.11 〜サンタの友だちバージニア〜

          2022.12.08 〜海からの贈りもの〜

          この本との出会ったのは、大洗にある里海邸という旅館の本棚だった。 旅館の女将さんのコレクションが並ぶ中、表紙が素敵だったという理由でたまたま手にとった一冊が、アメリカの女性飛行家が女性の生き方について綴った本だったというのは、なんというか不思議な縁を感じる。 主人公は、女性飛行家であり、妻であり、6人のこどもの母親でもある。社会的な役割が増えれば増えるほど、積み重なっていく日々の猥雑さ。 それに飲み込まれそうになり危機感を覚えた彼女が、離島にひとりで滞在し、女の幸せについて

          2022.12.08 〜海からの贈りもの〜

          2022.12.4 〜冬の本〜

          急に気温が下がりましたね。 暖房やら加湿器やら服やらなんやら、いろいろな準備が追いついていないので、いまは寒さ対策のことで頭がいっぱいだけれど、その厳しさ辛さと同じくらい温かな瞬間が多いのも冬という季節なのかなと思ったりする。大人になってもクリスマスにはわくわくしちゃうし、鍋はすごぶる美味しい。 命を奪うほどの残酷な季節でもあるのに、ハッとさせられるほど美しい瞬間があるのもこの季節だ。 私は冬の早朝が好きで、学生の頃、最寄り駅のホームから見る朝焼けを毎日楽しみにしていた。

          2022.12.4 〜冬の本〜

          2022.11.21〜歴史思考〜

          最近夜間授乳のお供に、音声コンテンツが欠かせない。改めて「オーディオブックっていいなあ」と、自分の仕事を前向きに捉えられて嬉しい瞬間だ。 もちろんオーディオブックだけでなく、ラジオやPodcastも楽しんでいる。その中でも今個人的にアツいのが、歴史系PodcastのCOTENRADIOだ。 国内外の歴史について多面的に解説しながら、現代の状況やビジネスと照らし合わせることで、リスナーに「明日から使える」気づきを与えてくれる。 最新話の構造学に関するエピソードは、数学科出身な

          2022.11.21〜歴史思考〜

          2022.11.19〜マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ〜

          おいしい料理が出てくる小説には間違いがない。 とある商店街の片隅で、深夜にひっそりと営業しているカフェ「マカン・マラン」。様々な理由でその場所に流れ着いた人々が、ドラァグクイーンの店主シャールさんと、そこでもてなされる料理を通じ、心と身体に栄養を取り戻していくお話。 出てくる料理はどれも細やかで、時間をかけ、丁寧に作られたものばかり。そして、お店に現れる人々の心の内も、それらの料理と同じくらい、とても、とても繊細。 4つのエピソードそれぞれの登場人物が葛藤している内容は、

          2022.11.19〜マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ〜

          2022.11.17〜こどもへのまなざし〜

          名著である。こんなとこで紹介せずとも知っている方は多いだろう。前から気になっていて、本屋さんでパラパラと読んだことはあった。 だが、参加している産育休コミュニティMIRAISで出会った方が「この本おすすめ!」を熱く語ってくれたのをきっかけに、購入してしっかり読んだ。(ありがとうなっしー^^) この本の中では、乳幼児期が人間の基礎形成においてもっとも重要な時期だと語られている。人間の基礎=人を信頼できる力、を乳幼児期に育むとはどういうことなのかが、優しい文体で綴られ、夜間授乳

          2022.11.17〜こどもへのまなざし〜

          2022.11.16 〜調理場という戦場〜

          人生で大きな変化があったとき、何度も読み返している一冊。出産を控えたタイミングでまた手にとってみたけれど、やっぱり今回もとてつもなく勇気づけられた。 私には3冊ほど、お守りのように大切にしている本がある。10年に1回くらいそうした1冊に出会う。どれも自分の生きる指針に対して、強い影響を与えてくれた。 「調理場という戦場」は、その3冊のうちの1冊だ。(ちなみに残りの2冊は小川洋子の「猫を抱いて象と泳ぐ」と、佐藤多佳子の「黄色い目の魚」である) 自分の仕事への原動力は、こうした

          2022.11.16 〜調理場という戦場〜

          2022.11.12〜美しき愚か者たちのタブロー〜

          ちょうどいま、国立西洋美術館では「ピカソとその時代展」が開催されている。来年の1月までだ。 ドイツ生まれの美術商ベルクグリューンが、個人で収集した作品達が基になっているベルクグリューン美術館の作品が日本にやってきているのだ。その殆どが日本初公開。 ピカソの多才さにびっくりする展覧会なのでぜひ観に行ってほしい。 そんな国立西洋美術館もまた、ひとりのコレクターの収集品によってその礎が築かれた美術館だったりする。川崎造船所の社長、また衆議院議員も務めた実業家松方幸次郎氏による、通

          2022.11.12〜美しき愚か者たちのタブロー〜

          2022.10.31〜スタンフォード式人生デザイン講座〜

          プロダクト開発の世界で用いられてきた「デザイン思考」をベースに人生設計を見直していこう!という本。 プロダクト開発の過程で厄介なのは「もう、後戻りできない」状況を生み出してしまうことだ。1から10まできれいにまとめた仕様書、数年先まできっちり組まれた長期計画、手間暇かけて作った試作品……。 時間をかけ、丁寧にそして真剣に向き合った結果にも関わらず、周辺環境やユーザーが変化したことにより「できた頃には必要とないものとなっていた」なんてもう、つらすぎる。 こうした変化に柔軟に

          2022.10.31〜スタンフォード式人生デザイン講座〜

          2022.10.28 〜13歳からのアート思考〜

          美術鑑賞は、難しい。 そんな、なかなか教えてもらえない「美術」という学問との向き合い方について、初歩の初歩の初歩から、手取り足取り教えてもらえる本。 美術、とくに絵画は、写真という発明によって、かつてその価値が大きく揺さぶられた分野だ。 「目の前のものを正確に捉える」ことが評価され、それが生業となっていた時代は写真の登場で一瞬にして崩れ去り、「写真にはない絵画の価値とは?」「絵画が人に与えているものとは?」という答えのない問いと、絵描きたちは強制的に向き合わされるハメになる

          2022.10.28 〜13歳からのアート思考〜

          2022.10.24〜常識のない喫茶店〜

          「働いている人が嫌な気持ちになる人はお客様ではない」 そんな理念を掲げた喫茶店で働く筆者が、時に「出禁」、時に「塩対応」を使いこなしつつ、日々を生き抜く様を綴ったエッセイ。 もう、とにかくめちゃくちゃ笑った!筆者の人間観察力の鋭さと、その描写力がすごくて、店内の様子がありありと浮かんでしまうし、文章のリズム感の良さが相まって、繁盛している喫茶店の音まで聞こえてきそうな感覚に陥る。 「働いている人が嫌な気持ちになる人は、お客様ではない」 すべての飲食店でこの理念が大切にされ

          2022.10.24〜常識のない喫茶店〜

          2022.10.16〜傷を愛せるか(増補新板)〜

          精神科医であり、医療人類学という医学博士である女性のエッセイ。 これまたちょっとドキドキするタイトルだけど(笑)恐れることはなく、筆者の静かな日々の中で、クリアになっていく「決して強くなれない自分をどう生きるか」という内省の軌跡が、日々の様々なエピソードと共に紹介されていく。 ちょっとした事件に巻き込まれた幼少の記憶、身内の不幸、仕事の変化。私達は生きていく中で悲しいことを完全に避けることはできないし、それを完璧に克服できるほどには強くなれない。 特に筆者は精神臨床の第一

          2022.10.16〜傷を愛せるか(増補新板)〜

          2022.09.18〜北欧こじらせ日記〜

          フィンランドが好きすぎて、12年以上フィンランド通い続ける間に、寿司職人となり、今年の春からフィンランドに移住された筆者の、移住までの道のりを書いた本。 前作では、筆者のフィンランドへの愛が深まっていく過程と、それを通じて自分らしさや目標を確立していくまでの姿が、フィンランドの魅力と合わせて描かれている。これがもうとにかく、とにかく素敵な作品だったので、発売が決まった瞬間予約してしまった。 本作では、フィンランドよりも作者本人の生き方や考え方に焦点が絞られてまとまっている

          2022.09.18〜北欧こじらせ日記〜