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第5話: 行動の科学 ~パブロフ、ワトソン、スキナーと行動主義心理学~


物語

20世紀初頭、心理学の世界に新たな潮流が押し寄せた。

「心の中を覗き込むのではなく、行動そのものを観察し、その法則を明らかにするのだ!」
そう高らかに宣言したのは、アメリカの心理学者

ジョン・B・ワトソン

彼は、人間の行動は、環境からの刺激に対する反応として形成されると考え、意識や感情といった内的プロセスを重視する従来の心理学を批判し、「行動主義心理学」を提唱した。
ワトソンの主張は、ロシアの生理学者イワン・パブロフの研究に大きな影響を受けていた。
パブロフは、犬にベルの音を聞かせながら餌を与える実験を繰り返し行うことで、ベルの音だけで犬が唾液を分泌するようになる「条件反射」を発見した。
この発見は、学習のメカニズムを解明する上で画期的なものであり、ワトソンは、人間の行動もまた、条件付けによって形成されると考えたのだ。

「私に、健康な乳児を12人与えて下さい。そうすれば、私が選んだどんな職業の専門家にも育て上げましょう。」
ワトソンのこの有名な言葉は、人間の行動が環境によって決定づけられるという、行動主義の考え方を象徴している。
行動主義心理学は、B.F.スキナーによってさらに発展させられた。
スキナーは、「オペラント条件付け」という概念を提唱し、行動の後に与えられる報酬や罰によって、行動の頻度が変化することを明らかにした。
彼は、 Skinner box と呼ばれる装置を用いて、ラットやハトの行動を操作する実験を行い、行動の法則性を詳細に分析した。

行動主義心理学は、学習理論、教育、行動療法など、様々な分野に大きな影響を与えた。
特に、問題行動の修正や、新しい行動の学習に効果的な手法として、現代社会においても広く応用されている。

解説

行動主義心理学とは?
行動主義心理学は、人間の行動を、環境からの刺激に対する反応として捉え、観察可能な行動を研究対象とする心理学の一派である。
意識や感情といった内的プロセスを重視する従来の心理学を批判し、客観的な観察と実験に基づいた科学的な心理学を目指した。

イワン・パブロフ
パブロフは、ロシアの生理学者で、消化の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した。
彼は、犬の消化液分泌の実験中に、条件反射を発見した。
条件反射とは、本来は無関係な刺激(条件刺激)が、ある特定の反応を引き起こす刺激(無条件刺激)と繰り返し対になることで、条件刺激だけでもその反応を引き起こすようになる現象である。

ジョン・B・ワトソン
ワトソンは、アメリカの心理学者で、行動主義心理学の創始者の一人である。
彼は、心理学を「行動の科学」と定義し、意識や感情といった内的プロセスを排除し、観察可能な行動のみを研究対象とすることを主張した。

B.F.スキナー
スキナーは、アメリカの心理学者で、行動主義心理学をさらに発展させた。
彼は、オペラント条件付けという概念を提唱し、行動の後に与えられる報酬や罰によって、行動の頻度が変化することを明らかにした。

行動主義心理学の影響

行動主義心理学は、学習理論、教育、行動療法など、様々な分野に大きな影響を与えた。
特に、問題行動の修正や、新しい行動の学習に効果的な手法として、現代社会においても広く応用されている。

まとめ

行動主義心理学は、人間の行動を科学的に研究する道を開いた。
パブロフの条件反射、ワトソンの行動主義宣言、スキナーのオペラント条件付けといった概念は、現代心理学においても重要な位置を占めている。

参考文献
* J.B.ワトソン『行動主義』
* B.F.スキナー『スキナーの徹底的行動主義』

次回予告

最終話となる第6話では、「現代心理学の潮流 ~認知心理学、神経心理学、そして未来へ~」をテーマに、現代心理学の主要な分野とその展望について解説します。
お楽しみに!

あなたの行動は、どのような時に、どのように変化すると思いますか?
行動主義心理学の視点から、自分自身の行動パターンを分析してみませんか?

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