90年代個人的邦楽10選Ⅱ
前に「90年代邦楽個人的10選」をしたときはロックバンド中心でしたが今回から数回に渡って90年代の代表的なヒット曲で個人的に好きな曲をやっていきたいと思います。90年代初頭とかはまだ昭和のいい意味での大衆的なヒット曲が多く発売されて、本当にみんなが共通して知っているヒット曲がたくさんありました。みんなが共通してヒット曲を歌えた最後の時代だったのかもしれません。僕も今回の記事を書くにあたり改めて動画とか見たら当時はまだ小学生や中学1年でそこまで音楽に詳しいとかじゃなかったですが、どの曲も本当に懐かしく響いて、胸がいっぱいになりました。バブル全盛期でもあり日本が今よりもずっと物質的にも精神的にも豊かな夢みたいな時代だったなあ、って感傷に浸ったりします。そんな濃厚な時代の空気感を音楽とともにどうぞ。
浪漫飛行 / 米米CLUB (1990年)
いきなり最高に懐かしく大好きだった曲から。もう夢見るしかないリゾートなあの時代の豊饒さに胸がいっぱいになります。本当に日本が世界の頂点に立ったかのような天国のバイブス。バブルの物質的な豊かさとともにまだ色濃く残る日本人の共同体の安定度から生まれる安らぎに満ちた本当の幸福。そんなものがすべてこの最高レベルの旋律に含まれている、そんな印象をずっとこの曲から感じていました。これを作れたカールスモーキー石井は本当に凄い音楽的な才能があったのだと思います。
壊れかけのradio / 徳永英明 (1990年)
僕の人生でたくさん音楽を聴いてきた中で一番好きな曲です。最初に聞いたのは高校一年の夏休み。もう一発で心を鷲掴みにされて。「思春期に少年から大人に変わる 道を探していた 汚れもないままに 飾られた行き場のない 押し寄せる人並みに 本当の幸せ教えてよ 壊れかけのradio」最高の歌詞に最高のメロディ。もうずっと人生の音楽ヒットランキングで僕の中で永遠に1位になっています。それくらいここでの徳永英明はこの世ではなく天国で歌っているんだって思ったりします。地上的な一切を超えたとこで徳永英明が歌っているその衝撃、音楽を通して広がる豊かなイメージ。思春期の僕の心に今でも焼き付いています。過小評価されているきらいもありますが本当に歴史的な名曲なんじゃないかと個人的には思っています。
真夏の果実 / サザンオールスターズ (1990年)
もう説明不要な国民的バンドの代表曲の一つですね。僕も当然のようにサザンの中で一番好きな曲の一つです。桑田佳祐は時代に関係なく名曲を作り続ける稀有な存在ですが、この曲はその類まれなる才能に加えてやはりこの日本が一番豊かだった時代の空気感も後押しして時代を超える名曲が生まれたのかもしれません。誰もが湘南の海へ飛んで行ける共時性、共感覚、恋愛経験のある人もない人もすべて同じ空間で同じ気持ちにさせるから、ずっと愛される名曲中の名曲になったのだと思います。やっぱり海の破壊力は凄いですね。僕自身海とはほとんど接点のない生活をしていてよく分からないのですが、海辺に立つと凄いインスピレーションとか感受性豊かな人は受けて創作とか出来ていくのでしょうね。
忘れられたBIGWAVE / サザンオールスターズ (1990年)
サザンオールスターズで一番好きな曲です。あの海に佇む夕日が沈む、夏が終わる、そして切なさが溢れる、日本の情緒性、何もかもが高次元で融合した最高の音楽だと思ったりします。桑田佳祐で一番好きな曲は「東京」ですが、彼の本質でもある湘南の海から受けたインスピレーションでは一番深いところに行ったんじゃないかっていうくらい、とんでもない名曲だと思います。桑田佳祐はどこに才能のピークがあったかは議論の的ですが、僕はやっぱりこの1990年かな、この二つの大名曲を生みだしたこの年かな、と個人的には思ったりします。90年代に入ると少しというかかなり俗っぽくなって、正直サザンは苦手になったりしました。80年代からこの年くらいまでのやっぱり豊かな時代の空気感で音楽を作っていたサザンオールスターズが後追い世代ですが好きですね。
愛は勝つ / KAN (1990年)
去年でしたか亡くなってしまいましたよね、まだ若いのに。本当に残念です。そしてあの時代を彩った一流ミュージシャンも死んでいくのか、と寂しくなりました。本当に勢いのあった時代が書かせた時代を代表する名曲だと思います。「愛は勝つ」とかなかなか言えないですよね。それを真正面から言い切ってそれに凄い説得力を持たせる屈指のメロディと歌詞。てらいなく歌うKANにあのバブルのややもすれば斜に構えがちな人が一人になって部屋で聴いて、恋愛とかしていてどれだけ励まされたことでしょうか。まだ小学生の自分には想像しかできませんでしたが、歌詞の意味が分かりこの曲のもつ本当のパワーに触れると、そんなことを思ったりします。関西のラジオ局とかにもよく出演していて親しみやすいキャラで、おなじみの存在だったから、余計に亡くなってしまったことがショックで残念でした。
どんなときも。 / 槇原敬之 (1991年)
この人が出てきた時はみんな「新しい時代の才能」が出てきたなって思ったと思います。丁度年号も昭和から平成に変わってまだそんなに経っていない頃でしたし。もう纏っている空気感が昭和ではなく平成でしたね、この槇原敬之は。中学生でまだそんなに音楽とか聴いてなかった僕でさえ「時代はかわったなあ」って言葉には出来ませんでしたが、そんなことを感じていたな、と今振り返ると思ったりします。等身大の弱さとかその思いをここまでポップなメロディに乗せて歌った歌手がそれまであまりいなかったからかな、尾崎豊ほどヒリヒリしてないけど自分の内面を上手く音に乗せて表現する新しいタイプのシンガーソングライターだったのだと思います。
SAY YES / CHAGE&ASKA (1991年)
フジテレビの月9ドラマ「101回目のプロポーズ」の主題歌で250万枚以上売れた平成を代表するヒット曲です。もうなんかこの当時のこと覚えていますけど、「CHAGE&ASKA」を中心にして音楽業界が回っている、そんな感じも受けました。それくらい別格の存在で。この曲からその傾向は強くなっていきましたね。「CHAGE&ASKA個人的10選」とかでも書きましたけど、この頃のASKAの作る音楽は本当に神様と戯れているかのような凄まじいレベルの楽曲が多くて、アルバム曲もシングル曲と変わらないレベルのものがたくさんあって、一回ハマるとなかなか抜け出れない沼みたいな存在でした。実際TYUTAYAとかでCD借りて聴きだすと。そりゃやっぱり、CHAGE&ASKAを中心にして音楽業界回るのも90年代前半に関しては、そうなるよな、とか思ったりします。
それが大事 / 大事MANブラザーズバンド (1991年)
僕はほとんど見ていなかったのですが、この当時テレビのバラエティー番組でいくつも冠番組を持っていた山田邦子の番組「邦ちゃんの山田かつてないテレビ」の主題歌、というかテーマ曲でした。中学生くらいだったのですがあまり流行には興味がなくて、奥手で番組はたまに見て知っているレベルだったのですが、この曲はそのキャッチ―なメロディと前向きな歌詞で、音楽にまだ興味なかった僕も引き込まれたりしていました。CD買うまでは行かなかったですが。今聴いても前向きになれる応援ソングの傑作ですね。この時代はこういう応援ソングの名曲も数多く生まれたりしていましたね。たぶん「90年代邦楽個人的10選Ⅲ」とかで紹介するだろうZARDの「負けないで」とか、ほかにもいろいろいい曲がありました。
君がいるだけで / 米米CLUB (1992年)
300万枚近く売れたのでしたっけ。凄かったですね、この曲も。まだ音楽は聴いてなかった中学2年でしたが、テレビとかドラマ月9「素顔のままで」でしたっけ、安田成美と中森明菜のダブル主演のトレンディードラマ、再放送とかで観たりして、この曲は本当に好きでCD買わずにほとんど覚えてお風呂で歌えるくらい自分で隠れて歌っていました。まだカラオケとか行って人前で歌うなんてとんでもない、っていうくらいシャイで人見知りで引っ込み思案な時代でしたが。浪漫飛行と甲乙つけがたい米米CLUBというよりは平成を代表する名曲で、こんな大名曲を二つも生み出すカールスモーキー石井の音楽の才能には驚愕するしかありません。
世界中の誰よりきっと / 中山美穂&WANDS (1992年)
これも中山美穂主演のドラマ「誰かが彼女を愛している」の主題歌だったそうですが、ドラマは見ていなくて、でもこの曲がすごく良くてめちゃくちゃヒットしていたのをよく覚えています。200万枚も売れたそうです。この頃は織田哲郎が作曲する曲が何曲もミリオンヒットを飛ばすなどいわゆる「ビーイング系」のWANDSやZARD、DEENとかのバンドが流行っていましたね。僕も織田哲郎の作る音楽が好きでいろいろCD買ったり借りたりしていました。90年代前半を代表するヒットメーカーでその時代を思い出せる音楽はやっぱり懐かしくていいですね。
本当は小田和正の「ラブストーリーは突然に」も入れたかったのですが、いい動画がなくて泣く泣くカットしました。それでも有名な曲ばかりですが、あの時代にそのまま連れて行ってくれるみたいでやっぱり良かったです、個人的に。まだそこまで人生はみ出していなかったから、みんなと一緒という安心感の中で過ごしていたような、でも窮屈だったような、いわゆる思春期の始まりでしたね、今振り返ると。だから徳永英明の「壊れかけのradio」が一生ものの音楽になったり。いい時代にいい音楽に触れられてラッキーだったとか思ったりします。さらに時代が進むとオウム真理教の一連に事件や阪神淡路大震災、神戸の連続児童殺傷事件など本当に世の中が殺伐としていく時代に入っていったから、そうなる前の平成の90年代の昭和の連続体としての平和な豊かな空気感を最後にパッケージしたようなヒット曲が、この時代にまで届いて、甘く切なく響いてくるのかもしれません。そんな感じで今回は終わります。また何かの10選で