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昔作ったMD、カセットテープその4【KICK THE BEST CAN CREW(下)】

1か月ぶりにキックザカンクルーのMDの続きをやりたいと思います。前回は前半の9曲目までで、後半の今回は10曲目からラストまでとなります。では早速どうぞ。


X-amount (ver.2001)
若い感性の行くところまで行った感じが好きですね。何といいますか、自分が持っていない部分ではあるけれど、若いどこかで感じていたあの時代だからこそ見えた「世界線」みたいな感覚、今はあれから遠くへ来てしまったけど、憧れはまだ残っている、そんな言語化の難しいところまですっと降りていくような、そんな楽曲でして。KREVAの天才性といいますか、僕が彼の作る音楽に魅了されてきた理由がここにあるって感じの、そんな感覚に浸れる一曲です。なかなか伝わりにくいかもですが。


ONE WAY
珍しくギターから入る音楽ですが、荒野を行く孤独感や覚悟を程よく表している感じがいいですね。そして3人それぞれのシャープの効いたライム。尖っていないと荒波にかき消されていくかのような、環境に波打つように作られていく自我、そのすべてをトラックに、ライムに乗せて放つみたいな、若い故の勢いと儚さ、それにヒップホップ特有の強がりを演じなきゃいけない文化(語弊があるかも、まあ昔はこれを聞いて気分上げてましたが)を感じさせる一曲です。


VITALIZER
個人的に彼らの最高傑作のひとつだと思っております。浮遊感が半端なくて、どこまでもフローなバイブスに揺られて行ったこともない東京のクラブの会員制の奥深くへ魂を連れ去って、最高のダンスを踊っているような、そんな錯覚に陥ってしまいます。たぶんKREVA一人だけニューヨークで生きている、日本じゃない本場感を表現している、怒りや雑さを持っていたらたどり着けない知性を持った、そんな品のある一曲だと思います。


sayonara sayonara
この感覚も若い故に見えた世界線に沿ってこの現代まで届いてきます。何か懐かしいですね、KREVAの作るサウンド自体が。ほぼ同世代だからか、同じ空気感がよくて、あの時代に育った世代だからこそ、ファミコンとか、バブルな少年時代とか、平成に入って行く戸惑いとか、そんな時代の変遷の中で抽出された濃厚なエキス、そんなものをものの見事にこの世に出していく、その才能にただただ惚れてずっとファンでいます。


アンバランス
彼らの代表曲で、モラトリアムなアンセムにもなっております。カラオケでは必ず歌う曲でいい歳して大学生とかですが、若い人たちにも受けがいい普遍的なリリックが切ないトラックに乗せて響き渡っております。まあいつまでもこんな状態ではドロップアウトするしかないとは思いますが、社会に形は添えども、中身はこの状態っていう人にはどこまでも響き続ける、やっぱり永遠のアンセムなのかなと思ったりします。僕自身はようやく少しずつ見えてきたかも。後半でやっと動画がありました。


magic number
解散が近くなってきたことをなんとなく感じさせる僕の中では「お別れソング」的な一曲です。太く短く、だからこそ濃厚に若い時代を表現出来た、本物の青春って感じのグループだったなあ。80年代洋楽最高峰のワム!みたいな。イントロからしてセンス抜群で、相変わらず。でもそろそろこの感性もキープできなくなってKREVA自身が次のステップへ向けて脱皮していく感覚もあり、この3人じゃなきゃ出せない化学反応的な時代の最後がやっぱり近づいてきて、そんなドキュメンタリーな現場感覚もこの曲から感じます。ファンとしては切なくなるけど、それが余計に響いてきますね。個人的にも大好きな一曲です。


STEP IN THE DAY
2003年に出たベスト盤収録の新曲で、アンコール的な一曲だと思っております。この後にもう1枚アルバムが出たりしますが、何か解散前って感じで、それまでの完成度とは違う感じもして、この曲の方がまだ彼ららしくていいなとか思ったりします。でも2017年に再結成してからこの時代の続きをまた届けてくれたりしたので、今作るとしたらこの曲とか外して新しいアルバムから何曲か入れる感じですかね。いい曲だとは思いますが、エネルギー的には少し弱いかな。


河と海が合わさるところ
インタールド的なインストロメンタル曲で、めちゃくちゃ感覚がシャープだなと、それこそ悟りの境地みたいな音作りで、世界と一つになっている純粋経験の中でとらえた音世界ですね。若くて一番アドレナリンが出ていた時に世界の風を感じていた時の自分を思い出します。これってちょっとはみ出ていないととらえられない世界線上での、特別な感覚でしたね。安定を犠牲にしてでもたどり着きたかったんだろうな。それまでの抑圧の反動で。


タカオニ2000
東京じゃタカオニって言うんですね。大阪じゃタカタカとか言ってました。子供の時によく遊んだ鬼より少し高いところに居ればセーフみたいな遊びで、小学校の体育館前で昼休みによく友達とやってましたね、その光景ごと思い出します。それを自分たちの今のヒップホップ界に置き換えてとらえて楽曲にしている感じがいいです。ゆっくりと立ち上がっていく決意みたいな、ちゃんと子供の頃遊んだ記憶と繋がって、その「野生」の感覚のままどこまでも昇っていくイメージ。そこが好きですね。僕自身はどこかでいろいろドーピングとかしていろいろ軌道修正しましたが、こういうのに憧れます。


20代までの感覚を色濃く体現していて、懐かしくもあり、もう分からなくもあり、だけどまだほんのり見えているような、そんなイメージがします。キックザカンクルーの曲を聴いていると。洋楽ほどの完成度はないとは思いますが、でもそれでも日本のヒップホップの黎明期にあの時代の日本の混沌とした空気感をそのままパッケージした感じがやっぱり好きですね。若い時にハマったアーティストでは今でも一番くらいに好きですかね。それはやっぱり同年代が作った音楽の魔法と言いますか、子どもの時から20代までのあの未完成でありながら世界をそのまま浴びた、あの汗のにおい、日差し、風、生きてきたすべてを、彼ら以上に感じさせてくれたアーティストがいなかったからで。どこまでも個人的な感覚ではありますが。やっぱり青春のバンドとかなんですかね、僕にとってキックザカンクルーは。B'zやミスチルも聞いていましたが、産業としての側面が強くて「テレビから流れて来る」感覚だったから、そこまで「生きたにおい」はしませんでしたが、キックは僕自身引きこもりで底を打った「生まれる」感覚の後に出会った「原体験」な邦楽アーティストだったというのもそういうビビッドな感覚を呼び起こさせた理由なのかもしれないです。レディオヘッドは胎内で響いていた音楽かな。引きこもりは生まれなかった自我をもう一度難産の末に自分の手で生まれ直させた体験とも言えるので、やっぱり今の自分を形作る、大事な時間だったのかなと思ったりします。またそこら辺の精神医学的な初見についてはどこか別の機会にいろいろ語っていきたいと思います。そんな感じでしたが今回はこれで。また何かの10選とかで会いましょう。一応最後に前半後半の楽曲リストと前半の記事を載せておきます。


「KICK THE BEST CAN CREW」(2007年6月11日作成)
1    旅人
2    GOOD TIME!(ver.2001)
3    イツナロウバ
4    Color variation
5    マルシェ
6    クリスマス・イブ Rap
7    united river
8    ユートピア (ver.2001)
9    one for the what, two for the who (ver.2001)
10  X-amount (ver.2001)
11  ONE WAY
12  VITALIZER
13  sayonara sayonara
14  アンバランス
15  magic number
16  STEP IN THE DAY
17  河と海が合わさるところ
18  タカオニ2000






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