BAR
誰に対する
いつの自分に対する
ものかさえ
忘れたけど
バーの片隅で
ワイングラスを傾けて
涙が一滴
カウンターテーブルに落ちる
今日も
長く飲んでいるね
ええ
少し揺れていたいんです
落ち着けば
出ていきます
ゆっくりして
いってくださいな
ここでは誰もが
揺れて酔って
まどろむのですから
急かされるような
何かが消えない限り
そうはなかなか……
そうですか
私なんかは
揺れてまどろんでいく
あなたたちを見て
忘れているのですかね
そうかもしれません
見ないで済むなら
誰も覗きたくないですよ
揺れる干渉波が
互いのを打ち消し合って
それで何とか
回っているのかもしれないですね
……わけわかんないこと
言いましたか、私
いえ、
きっとそうですよ
だからみんな
ここに来るんです
じゃあ、マスター
勘定を