見出し画像

百貨店が紡ぐ「日常のアート」

column vol.1246

「日本のアート産業に関する市場調査2021」によると、日本国内の美術品売上高国内の事業者だけで1868億円にのぼっています。

そのうち857億円、つまり約半数近くの売上を占めている業界があるのをご存知でしょうか?

はい、タイトルからも分かる通り(笑)、百貨店業界です。

これまで百貨店でのアート販売というと、外商を中心としたスペシャルなものでした。

しかし、最近は日常の接点としてのアートを定着させようとする動きが見られています。

今日は、そんな事例をお届けしたいと思います😊


現代アートを日常にする

「ショッピングの合間に、アートに出会う」

そんな気軽なアートとの出会いを提供しているのが、福岡の中心、天神エリアにある三越伊勢丹ホールディングス傘下の百貨店「岩田屋」です。

2021年に本館の2階にコンテンポラリーアートギャラリー「Gallery CONTAINER」をオープン。

海外のアートマーケットで高い支持を得たアーティストの作品はもちろん、地元福岡出身の若手作家の作品などを幅広く取り扱えています。

〈XD / 2024年5月22日〉

岩田屋が力を入れているのが「現代アート」です。

そして、「Gallery CONTAINER」設立の理由を、同社の樋川聖高さんは、このように仰っています。

「ギャラリーへ足を運ぶ敷居を下げたかったんです。美術館やギャラリーのような“アートを見に行く”ための格より専門的な場所とは異なる立ち位置として、ショッピングの合間などもう少し手軽に立ち寄れてアートにふれられる出会いの場所にしたかった」。

この「ショッピングの合間」というところがポイントで、これまでのアートスペースは上層階に設けられることが多かったのですが、同店では本館2階海外ラグジュアリーブランドが揃うフロアに設定。

まさに花形フロアです。

本来なら、主力商品(主力テナント)をなるべく配置したい。

そこにあえてアートスーペースを設けたわけですから、そこからも本気度の高さが伺えます。

アートで日常の意識を変える

さらに、岩田屋では年2回、本館と新館の随所で現代アートを展示する「LIFE WITH ART」というイベントを実施しています。

初開催は2020年3月に「INTRO」と銘打たれ、2022年9月には「PLAY」、その後は2023年3月に「DAWN」、同年9月に「LIFE WITH ART」と名前を変えながら国内外のアーティストの作品を紹介。

樋川さんは

「このイベントは、音楽と同じくらい感覚的にアートを楽しんでもらおうという主旨で実施しているものです。音楽は感性に訴えかけて、心を豊かにしてくれるもの。さらにアートよりもカジュアルに接するものでもありますよね。アートもそれくらい身近なものとして取り入れられていけばいいな

と、このイベントの目的を話しています。

イベントの良さは、特別なひとときをつくることで、話題性を生み出せたり、注目する瞬間をつくれること。

そういった意味で、他にも良いイベントだと思ったのが、同じく福岡にある博多阪急にて今年の1月に実施した “アートとして楽しめる防災トイレ”『sonae 備絵』Limited Boutiqueです。

〈NHK NEWS WEB / 2024年1月24日〉

能登半島地震の被災地で断水や停電の影響でトイレ不足が問題になったことを受けて、博多阪急で簡易トイレのキットを収納したアート作品の展示会を行ったのです。

(簡易トイレのキットが入った20種類の絵画を展示)

sonae 備絵

『sonae 備絵』と名付けられた絵画の中に、袋や凝固剤など簡易トイレのキットが入っている。

普段はアートとして楽しみ、いざという時は中からキットを取り出して不測の事態に対応する、そんなイメージです。

(価格は1点33000円から55000円)

2016年の熊本地震と2017年の九州北部豪雨被災した2名の女性が、災害時のトイレの問題を少しでも解決したいと企画したとのこと。

アートの力、イベントの力で、防災への意識を高めていく

そうした意図を感じますね😊

アートをきっかけに日常を変える、そんな好事例の1つなのではないでしょうか?

アートでつながる街

アートイベントということで最近、注目したのが大阪で6月25日まで開催されていた「Osaka Art & Design 2024」です。

大阪の街を巡りながら、様々なアートやデザインに出会うエリア周遊型イベントとして、街の一体化&エンタメ化につなげていました。

〈美術手帖 / 2024年6月3日〉

同イベントは来年に控える大阪関西万博に向け、大阪のクリエイティブカルチャーを全国・世界発信することを目的としています。

今年は「Resonance(共鳴の拡張)」をテーマに、数多くのクリエイターの作品やプロジェクトが市内各所の55拠点をつなぎました。

百貨店も参加しており、阪急うめだ本店では、館内の3つの会場109名のアーティストによる作品を紹介。

9階では、京都造形芸術大学芸術学部美術工芸学科教授であり、現代美術作家の椿昇さんがキュレーションを務めた「HANKYU ART FAIR 2024」も開催しました。

大丸梅田店は、1、3、4、15階でアートプロジェクトを展開。

1階ではイギリスのグラフィックアーティスト、ニック・ウォーカーさんと、ストリートアーティスト、SheOneさんによるコラボ作品を展示

15階では12のギャラリーからアート作品を週替わりで紹介する「Upecoming Artists in DAINARU UNEDA」も開催しました。

そして、大阪高島屋では、館内や屋外の幅広いエリアでイベントを実施。

例えば、1階ショーウィンドウやフロア内では衣笠泰介さんによる個展「Life is Color !」を開催。

また、屋外広場なんばカーニバルモールでは鬼頭健吾さんによる作品も設定されました。

こうして百貨店の力を活用しながら、もっとアートが日常になっていく

そんな姿を感じていただけたのではないでしょうか😊

こうした波は、ルミネなどショッピングセンターでも見られてきているので、今後の展開にも注目していきたいと思います〜

本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?