「ONIGIRI」が日本を救う?
column vol.1190
農林水産省の発表によれば、日本の一人当たりの米の消費量は年間55.2キログラムとのこと。
これは、他のアジア諸国と比較しても圧倒的に少なく、人口減少も相まってその数は年々減少傾向にあります…
ちなみに、具体的な数字で言えば年間10万トン規模で需要が減少…
日本のお米といえば、「コシヒカリ」「ササニシキ」「あきたこまち」「こしいぶき」「ゆめぴりか」「新之助」などなど、さまざまなブランド米がありまが、こうした日本の食財が衰退する可能性があるわけです…
一方、そんな中、お米にとっての希望の光も見えています。
それが、「ONIGIRI」なのです。
「ONIGIRI」が世界的ブームに
実は日本のおにぎりが、世界で一大ブームに。
〈TABI LABO / 2024年4月25日〉
これは、2018年秋、浅草の名店「おにぎり 浅草 宿六」が「ミシュランガイド東京2019」でビブグルマンに選出された辺りから大きく潮目が変わったと言われています。
中身の具材を選べる利点は、お寿司と違って生魚が苦手な人にも受け入れられ、ベジタリアンやヴィーガン、さらには宗教上の理由がある人たちにも手に取りやすい。
健康と利便性を求める人々のニーズを満たしているというわけです。
その上、グルテンフリーが根付いてきたことも大きいでしょう。
さらに、玄米や雑穀米でもつくるおにぎりに健康志向の高い人たちの目に留まったことで、世界で活躍するトップモデルたちが支持。
ONIGIRIを手にインスタを投稿する様子も見られるようになりました。
こうした世界の “おにぎり熱” にいち早くアクションを起こしたのが、「おむすび権兵衛」です。
2013年、アメリカのニュージャージー州に海外1号店をオープンさせると、2017年にはパリに進出。
行列の絶えない人気店としてパリの人々から愛されるようになったのです。
考えてみると最近、日本でおにぎり専門店が増えましたね。
私の会社がある中目黒でも「おむすび ごっつ食べなはれ」があり、朝から賑わっています。
そして外国人観光客が、おにぎり専門店で買い物をしている姿をよく見かけるようになりました。
羽田空港の国際線ターミナルにある「おにぎり こんが」でも、行列が生まれていますが、そこには欧米やアジアからのインバウンド客も多い。
日本のおにぎりは、世界の「ONIGIRI」になっているのです。
世界食として進化する「おにぎり」
ちなみに、こんがは東京都豊島区に店を構える創業60年以上の老舗「おにぎり ぼんご」が監修しているお店。
日本人が慣れ親しんできた梅やしゃけなどの定番の具材ももちろんありながらも、海外の方々にも寄り添うため、カルボナーラや明太クリームチーズなど変わり種の具材も揃えています。
その数、実に20種類程度。
様々な国の方々の心を掴んでおります。
そして、世界のONIGIRIブームを牽引するフランスでも、おにぎりを再解釈し具材をカスタマイズした、フランス風フュージョンおにぎり「Parisian onigiri」が次々と登場。
牛肉やサーモンといったフランス人に馴染みのある食材を活かしたものから、最近ではドライトマト、クリームチーズ、さらにはご飯にオリーブオイルを混ぜ合わせることで変化をつけるなど
サンドイッチのバリエーションを凌ぐパリ風ONIGIRIが展開されています。
こうした他国で生まれたイマジネーションが、逆輸入して日本のおにぎりを進化させているのでしょう。
ちなみに、「進化」ということでいえば、新しいカタチの商品も登場してきています。
その1つが「マルムス」です。
正確に言えば、マルムスはショップ名。
東急東横線の学芸大学駅の近くで運営しているお店の「 “丸” 型のお “むす“ び」が人気を集めているのです。
そんなこんなで、食文化を研究する「ぐるなび総研」が認定する毎年の暮れにその年の食を象徴する「今年の一皿 2023」におにぎりが選出。
(正確に言えば「ご馳走おにぎり」)
今後ますます国内外で愛されていくでしょう。
「おにぎり」インフルエンサーが活躍
そうした中、今、一人のおにぎりインフルエンサーに注目が集まっています。
その方とは「旅するおむすび屋」、菅本香菜さんです。
〈旅するおむすび屋 / Webサイト〉
菅本さんは、日本中をまわりながら、おむすびを通じて各地の人々と交流すると同時に、その土地の食文化などを発信。
活動を始めて約7年なのですが、Instagramのフォロワー数は6556人となっております(2024年4月29日現在)。
旅するおむすび屋を立ち上げたきっかけは
と思ったこと。
もともとクラウドファンディングの会社「CAMPFIRE」で働いていらっしゃったのですが、2017年、自社のクラファンで約1千万円の開業資金を集めて起業。
学校の食育の授業に参加したり、各地でその土地の食材を使うおむすびのワークショップを開催したりしながら、2年後に独立し、“食の旅人” としての人生を歩んでいるのです。
ちなみに、来年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)にて、象印マホービン株式会社は一般社団法人 大阪外食産業協会のパビリオンに出店。
同社の炊飯ジャー「炎舞炊き」で炊き上げたごはんでつくるおにぎりを販売することが決定していますが
共創パートナーとして菅本さんが選ばれているのです。
〈日刊工業新聞 / 2024年4月24日〉
万博を通じて、おにぎりがこれまで以上に世界に愛されるきっかけになると良いですね😊
〜ということで、「おにぎり」、いや「ONIGIRI」のグローバル化が、日本のお米の需要拡大につながる可能性についてお届けして参りました。
ハレの日の「お寿司」、ケの日の「おにぎり」といった感じで、日本の米文化が広がっていくことを期待しながら、本日は筆を置きたいと思います。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。