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「らしさ」のある人生
vol.1331
現代ビジネスの【意外と知らない、新入社員の「働くこと」に対する意識の変化《「人並みで十分」がこの20年で増加》】という記事を読んで、なかなか考えさせられました…
〈現代ビジネス / 2024年10月24日〉
タイトルにあるように「人並みの働き方」で良いと思う新入社員の人たちが増えているようです。
それは一体なぜなのか?
そして、もし本当だとするならば、それをどう考えると良いのか?
そのヒントは、「らしさ」と「決断」にありそうです。
「人並み」で良い理由
この「人並み」で良いという話のもとになっているのが、日本生産性本部と日本経済青年協議会が新入社員に対して行っていた「新入社員『働くことの意識』調査」のグラフです。
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1980年〜2019年の間、実施されたものですが、アップダウンを繰り返しながらも、2010年代前半からグッと上昇しています。
現代ビジネスの記事は2つの理由を挙げており、1つは「従業員の立場の向上」。
労働人口が減少する中、各社、人財不足は深刻な問題になっています。
そうした中、所属している企業の労働条件が合わなければ、売り手市場なので離職してしまう可能性は高い…
会社も多くのことは求められないという状況だと言えます。
また、もう1つの理由が、「世の中が豊かになるにつれて、そこまで働かなくてもそれなりには暮らせるようになっている」こと。
確かに2つの理由は、納得できる部分もあります。
ほかにも、20世紀型幸福モデルが標準ではなくなっていることも要因である気がします。
以前は、良い学校に入り、良い会社に就職し、出世する。
終身雇用が守られていたこともあり、そうした方向に向かいやすかった。
一方、今は一生を約束してくれる企業は少ないわけです。
しかも、プライベートを削って、出世したところで幸せになれるかどうかは分からない。
趣味や仲間、家族の時間も大切にしながら、バランスをとりながら、それなりに楽しくやっていきたいという気持ちもよく分かります。
それはそれで正しい選択なのかもしれませんが、一方で仕事で得た経験はプライベートも豊かにしてくれる。
例えば、さまざまな性格の人と合意形成していく努力が、家族や友人との関係づくりにも生きていると感じることは多い。
そう考えると、やはり働きがいをふんだんに感じて欲しいと、ちょっぴり思ってしまうのです…
もちろん、その分、我々会社側が働きがいを感じる会社づくりを行うことが前提なのですが。
“らしさ”を誰もが語れるように
そんな中、働きがいを生み出す土壌づくりのヒントになる記事に出会いました。
THE 21 ONLINEの【所属する“会社らしさ”を説明できるか? 主体的な社員が集まる組織の特徴】という記事です。
〈THE 21 ONLINE / 2024年11月14日〉
何を働きがいに感じるかは社員一人一人違うので、それは個別面談などで明らかにしつつ、全体として取り組んだ方が良いことの1つに「らしさの見える化」があります。
よく
「それって、ウチっぽいよね」
というセリフを耳にしますが、その「っぽさ」の解像度を上げていくことが大事というわけです。
年間300社を超える企業に対しビジネスコンサルティング&研修プログラムの企画・開発・実施までを行っている株式会社HRインスティテュート代表取締役社長の三坂健さんは「らしさの源」を、このようにまとめていらっしゃいます。
・会社が目指す姿を表すミッションやビジョン、パーパス など
・会社がもたらす価値を表すバリュー、ウェイ、イズム など
こうしたことが社内で明確に共有されていると、一体感は高まり、同じ方向を向いて切磋琢磨を繰り返す集団へと変わるとのこと。
また、自社が重要視することが上司と部下でコンセンサスが取れていると、部下も挑戦しやすくなります。
この会社にいて、どんなことが評価されるのか?
らしさの明確化が心理的安全性を生み出し、自信を持って判断することができる。
そうなると、社員は主体性を持って仕事のクオリティを高めてくれるでしょう。
そのことを裏付ける話として、アメリカのマリオットなどで長くホスピタリティ教育に従事された方のサービス論があります。
最高のサービスを生み出す秘訣として
「『こうしなさい』『ああしなさい』という教育では一定のサービス品質には届くけれど、最高のサービスには至らない。
最高のサービスはむしろ逆で、大きな価値観としてのそのホテルらしさをしっかりと伝えたうえで、これだけはやってはいけない、というタブーを明確にし、残りを余白として残しておくことで生まれる」
ということなのですが、まさに「らしさ」が働きがいと人を育ててくれるのです😊
「選択」ではなく「決断」する
この主体性について、『Z世代の社員マネジメント 深層心理を捉えて心離れを抑止するメソドロジー』の著者である小栗隆志さんも、その重要性を語っていらっしゃいます。
小栗さんは、働く人がキャリアを築く上で、選択ではなく「決断」することことが大事であると仰っているのです。
〈JBpress / 2024年11月14日〉
選択も決断も変わらないと思いきや、選択は「正解探し」、決断は「正解創り」と定義されています。
例えば、就活の際、3社から選んだとして、どれが一番自分に合っているだろうと考えるのが正解探し(選択)です。
ですから、合わなかったり、入社した後、選ばなかった会社の良い噂を聞けば、「間違っていたのではないか?」と悩む…
選択先任せなので、「もっと他に良い選択がなかったのか?」と、ずっと心が定まらないわけです。
そうなると、いつまでも転職サイトを彷徨うことになり、目の前の仕事に熱中は生まれず、得られる経験値が得づらくなる。
そうした勿体ない状況になってしまうのです…
一方、その会社で
「自分はこんなことを実現したい」
「こういう部分を成長させたい」
と決断して入社したとしたら、ブレなくなる。
その分、夢中が生まれ、人生を豊かにする経験財もたくさん蓄えることができるでしょう。
もしも、決断して入社したとして、理想通りにならなかったとしても、意図してチャレンジしたことは、その後の人生に生きてくることの方が多い。
私も何度もいろいろなチャレンジをして敗れてきましたが(笑)、その後、方向転換したとしても、過去の財産がその次の自分を支えてくれていると実感しています。
主体的な「正解創り」が失敗した過去を正解に変えてくれるのです。
何より、正解創りを繰り返していくことで「自分らしさ」が研磨されていく。
やはり、
「あの人らしいよね」
「キャラが立っているよね」
と評される人は決断を繰り返している人。
そういう人生を歩むことで、「人並みではない」人生が育っている。
つまり、その人ならではの豊かな人生ということです😊
もちろん、そういう人生だけが正解ではないでしょうが、違う人生観で歩むとしても、ぜひ選択ではなく「決断」して進むと良いのではないでしょうか。
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!