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「諦める」ではなく「明らめる」
column vol.1251
「世の中で一番強い肩書きって何だと思う?」
こちらは、アニメーション映画プロデューサーの石井朋彦さんが、スタジオジブリの鈴木敏夫さんから問いかけられた言葉です。
正解は後ほど発表しますが、この最強の肩書きを手に入れるには「明らめる」ことがカギになる。
今日はそんな話をしたいと思います。
「諦める」とは「明らかにする」こと
明らめる? “諦める” じゃなくて??
そう違和感を感じた方もいらっしゃるでしょう。
実は「諦める」は仏教用語で「明らかにする」という意味があるのです。
この「明らかにする」ことの大切さを説いていらっしゃるのが、『このプリン、いま食べるか? ガマンするか? 一生役立つ時間の法則』の著者で、株式会社アスコム常務取締役編集局長の柿内尚文さん。
以前はストイックに働くモーレツ編集者だったのですが、40代中盤に更年期障がいと診断されて以来、「凡人の戦い方」を実践されています。
〈NEWS PICKS + d / 2024年7月19日〉
凡人の戦い方とは、まず自分が凡人であることを明らかにして受け入れることから始まります。
世の中、逆立ちしても勝てない人たちがいる。
それに更年期障がいを発症し、今までのようには働けない。
そうした事実をちゃんと受け入れるということです。
…でも、それって寂しくない…?
…という声が聞こえてきそうですが…、安心してください!
柿内さんは「戦い方」と仰っているので、明らかにしているだけで、諦めてはいません。
柿内さんが「現状(現実)」とともに明らかにしているのが「成長のゴール」です。
「どんな自分になりたいのか」ということを明確にする。
意外と、この部分を明らかにしていない人が多いと指摘されています。
その上で
「本来、成長にはいろいろな種類があります。どういう人生を歩みたいか、どういう人でありたいかをゴールに成長を目指すのも一つ。
例えば『人に優しくできる人になりたい』人にとっての成長は、人に優しさを提供すること。人に厳しく当たってしまいそうな場面で一呼吸おいて、落ち着いて接することができれば成長と言えますよね」
と仰っています。
私は人間性でいえば「信用される人」、そしてあわよくば「信頼される人」になりたいと思っています。
なぜなら、「愛される人」「尊敬される人」「憧れる人」は諦めているからです(笑)
以前、うちの社員から
「池さんは、ただただマジメな人」
と言われたことがあります。
決して世の中的には面白い評価ではないと思うのですが…、私はこうした人から言われた評価を大切にしたいのです😊
「最強の肩書き」の正体
また、プロフェッショナルとしての自分をどう定義するのかということも大切でしょう。
そこで、冒頭の鈴木敏夫さんからの問いかけです。
「世の中で一番強い肩書きって何だと思う?」
その答えは「宮崎駿」だったそうです。
〈logmiBiz / 2024年6月〉
なぜ、最強の肩書きが宮崎駿さんなのか?
鈴木さんと『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』で一緒に仕事をした石井さんは、このように回想されています。
「宮崎駿には肩書きがない。つまり『宮崎駿』と言うだけで、相手は『宮崎駿である』と(認識する)俺は『スタジオジブリの鈴木敏夫』だからまだまだなんだ」と言ったんですよ。
なるほど、なるほど!
その人の存在自体が肩書きになることが最強ということですね。
そして私は、この話は決して宮崎駿さんのような大物になれ、という話ではないと思っています。
NO.1にならなくてもいい
もともと特別なOnly one
と、『世界に1つだけの花』の歌詞にもあるように、その人ならではのオリジナリティが、その仕事で見えてくると良い。
例えば、私の職業はマーケターなのですが、世の中、マーケターは星の数ほどいらっしゃるわけです。
そこで私は、もう1つ「合意形成師」という肩書きを自分に与えています。
一般的に私がやっている仕事は、「マーケティングコンサル」「ブランディング」「イノベーションデザイン」ということなのでしょうが
自分の仕事の一番濃い部分はクライアント企業の社員皆さんの合意形成だと思っています。
理想は、皆さん全員に腹落ちしていただきながら仕事を進めること。
どんな素晴らしいビジョンやアイデアがあったとしても、皆さんが納得していないと全てが表層的で終わってしまうと思うからです。
だからこそ、丁寧に合意形成を行っていく。
そうした信念そのものが私の仕事なのです。
もちろん、自分の理想とはほど遠い状況なのですが…(苦)
だからこそ、完全なる合意形成が「成長のゴール」であり、私にとってのモチベーションなのです。
学ぶは「まねぶ」
成長のゴールが決まったら、次は「どのように成長していくのか?」、つまり、Howを考えたいところです。
石井さんは成長に必要なのは、「いくつになっても人を真似すること」だと仰っています。
えっっ??? オリジナリティ大事って言ったじゃん!!
…とツッコミが飛んできそうですが…、ちゃんとワケがございます…(汗)
まず、石井さんは
「『まなぶ』は『まねぶ』であり、真似ているうちに自分の身につくものと、どうしても自分がそうはなれないとなったものが自分の個性である」
と、学ぶことの前提を説いていらっしゃいます。
その上で
真似することを「恥ずかしい」とか、「真似する俺は、俺じゃない」というふうになった瞬間に、そこで成長が止まるんですよ。
有名な話で、大友克洋さんの登場によって日本の漫画の絵が変わったわけですが、手塚治虫さんが「俺でもできる」と言って絵柄を変えようとした。
と、あの漫画の神様と崇められる手塚治虫さんですら、大後輩の大友克洋さんから「真似る(学ぶ)」姿勢があったと例を挙げていらっしゃいます。
さらに、「最強の肩書き」と称された宮崎駿さんについても
「今回(『君たちはどう生きるか』制作時)は本田雄さんという『エヴァンゲリオン』をずっとやっていらっしゃった作画監督、アニメーターが隣の席にいるわけですよ。本田さんはむちゃくちゃうまいんです。そうすると宮崎さんが、こんなに悔しがるんだって思うぐらい悔しがって。だから2人の背中は「もう負けまい」というか」
と、宮崎さんと本田さんがお互いに刺激し合って、影響し合って、切磋琢磨されている姿をお話しされています。
こうして人の良いところを真似し合いながら
「どうしても自分がそうはなれないとなったものが自分の個性である」
と理解していく。
個人的には非常に腹落ちする話でございます😊
私も師匠であり、先代社長の谷口正和の背中を追い、一生懸命真似してきましたが、最近は意図せず、どんどん彼から離れていっているように感じます。
それは「どうしても自分がそうはなれない」ところを、谷口にはない自分の良さで無意識に埋めようとしているからなんだと解釈しています。
そして、この埋めようとしている自分ならではの個性が、いつか周りの人から魅力的に映って欲しい。
そして、茶道、華道など道の世界で言われる守破離は、このように意図せず無意識に離れていくものなのかな?と最近は感じているのです。
〜ということで、これからも自分の現実と理想を明らかにしながら、より豊かな未来を築けるように。
そして、いつか「職業、池」と言えるように精進して参りたいと思います〜
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました😊