「1→10」を設計する
vol.140
先週末から義父の庭を借りて家庭菜園を始めたのですが、まずは土づくりに挑戦。
これまでも農業体験などは行ってきたものの、それは田植えや収穫など、農業の最も楽しい部分で、すっかりとお膳立てされたものでした。
しかし、今回は土に空気を含ませたり、栄養を与えたり、ほぼゼロからのスタート。
とはいえ、もともとは一昨年他界した義母が家庭菜園を楽しんでいた場所なので、土の状態は良く、周りも整備されているわけです。
つまり、「0→1」ではない状態。
10が完成形だとしたら、「1→10」で始められている。
このベースがあることが非常に重要で、今回の家庭菜園に通ずる話として「半建築」というキーワードが頭に浮かびます。
半建築とは、住む人(使う人)が介在できる余白が多い建物のこと。
あえて塗らない壁や柱、むき出しの配線、そして自由自在にディスプレイや用途を変えられる仕組みなど、それぞれの用途や建物・土地の文脈に応じて論理的につくるというもので、建築家の長坂常さん率いるスキーマ建築計画の建築法です。
〈GINZA / 2024年8月17日〉
代表作は、ブルーボトルコーヒー、Aesop、DESCENTETOKYOなどなど。
築29年の社宅を集合住宅へとコンバージョンした「Sayama flat」、まさにその1つ。
写真を見て、どのように感じるでしょうか?
〈OCEAN / 2023年2月27日〉
…「半」というには、あまりにも殺風景な風景です…
実際、建築雑誌の編集者や不動産会社の担当者が目にすると、一様に不安感が現場に漂うとのこと…
確かに、私も不動産会社の人だったら、絶句してしまうでしょう…(汗)
一方で、入居者の方々からの反応は上々のようで、塗装も含め、自由にアレンジできることを価値と感じる人たちは多いのです。
でも、だからと言って「全くベースがない」のも困るわけです。
ゼロからイチをつくるのは大変ですし、アイデアミーティングも叩き台があった方が議論が活発になります。
〜と考えると、良いインスピレーションを与えてくれるベースというのは非常にポテンシャルのある需要なのではないかと感じています。
最近ではファンマーケティングが広がっていますが、そのキーポイントは「参画性」。
こうして様々な観点から見ても、顧客に「自分色に染められる」部分を提供するというのは今の時流に合っている。
しかし、今はまだまだ用意され過ぎている(6〜8割のもの)が多いので、もう少し、ベースに近いところに需要の広がりがあるのではないでしょうか😊
ちなみに、長坂さんが半建築への定義について、このようなことを仰っていたことが印象的でした。
ご本人が定義を決めているのに、様々な人の様々な解釈を受け入れて、それを楽しんでいる。
私には、こうした感覚がなかったので、非常に新鮮でしたし、勉強になります🫡
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!