幸福度の高い都市づくりとは?
column vol.961
ヨーロッパでは、環境問題や安全性の向上を目指して「ウォーカビリティ」をキーワードにした街づくりが進行しているのですが、南米でも興味深い事例があったので、共有させていただきます。
〈AMP / 2023年3月3日〉
その国は、コスタリカ。
海沿いの街、「ラス・カタリナス」は徒歩での移動を前提とした街なのです。
キーワードは「つながりを生む街」
この地は、2006年に起業家のチャールズ・ブリュワーさんが購入し、自身の理想を形づくってきた街。
歩いて生活することが中心になると、住民同士の挨拶や会話が生まれやすく、そのつながりからコミュニティへの所属意識が高まりやすい。
広場などの公共の場は、人々が交流する場となっているそうです。
なるほど、「つながりを生む街」というキーワードは心が躍ります。
今まで、車の通行を規制したウォーカブル・シティというと、先述のように「環境問題改善(自然共生)」や「安全性向上」というところに着目していました。
例えば、フランス・パリが2024年までに「自転車で15分の街」という新たな都市計画を打ち出していますが、この考えに至ったのも、自動車に起因する大気汚染で年間約3,000人が命を落としているという課題に直面していたからです。
〈IDEA FOR GOOD / 2023年3月3日〉
そうした中で誰もが車なしでも15分で仕事、学校、買い物、公園、そしてあらゆる街の機能にアクセスできる都市を目指すと宣言。
パリには8万3000の路上駐車スペースがあるのですが、イダルゴ市長はそのうち6万を撤去し、公園や緑地、畑を敷設するそうです。
…ただ、まぁ…、車も再生燃料など、自然共生の道を歩もうとしていますし…、安全性も自動ブレーキや自動運転技術の向上により高まっていくに違いありません。
ちなみに、言わずもがなトヨタ自動車の「ウーブンシティ」でも車が共存できる未来を模索しています。
車が共存する未来都市の形
ウーブンシティとは、富士山のふもと静岡県裾野市にある「モビリティの拡張」をビジョンとして掲げた「実験都市」。
「ヒト」「モノ」「情報」のモビリティにおける新たな価値と生活を提案し、幸せの量産を目指しています。
〈ウーブンシティ / Webサイト〉
2024年夏に第1期の建物が完成予定。
その後は2025年の一部実証開始に向け準備を進めていく計画です。
地上および地下空間に、人を中心とした複数の動線を配置しているのが特徴。
配送や物流、公共交通、小型モビリティ、歩行者それぞれに道を創ることで、安全で効率的な移動を実現しようとしているのです。
サステナビリティという視点でも、ITや環境技術などの先端技術を駆使して街全体の電力の有効利用を図ることで、省資源化を徹底した環境配慮型都市を志しています。
トヨタは自動車製造業から「モビリティデザインカンパニー」にトランスフォーメーションすることで、車が未来から愛される新しい形を探っている。
つまり、世界が目指すウォーカブル・シティと自動車(が築き上げてきた技術)が共存する光明を見い出そうとしているわけです。
「地球幸福度指数」という視点で構想する
コスタリカの「つながりを生む街」は、人々との交流、そして自然との交流(共生)が柱になった計画。
その背景には、この国の地球幸福度指数(HPI)が高さにも起因しています。
HPIとは、暮らしの満足度や資源利用の効率などから幸せの持続可能性をはかる指標のこと。
ラス・カタリナスさんのように自然を再生しながら人々の心の豊かさを高める街づくりは、幸福度を高めることができるでしょう。
ちなみに、この事例を見ていたら、スペインのバルセロナ市が2016年から取り入れている「スペリージャ」を思い出しました。
「セルダ・ブロック」と呼ばれる、133.3メートル四方の区画があるのですが
(京都の碁盤の目のような感じです)
この碁盤の目のブロックの9つを大きな島のように1つとし、毎週日曜日だけ自動車が通行禁止になっている。
その心は、子どもたちが遊ぶ公共空間や市民がゆっくり散歩できるようなスペースがないという問題の解消のため。
つまり、生活の幸福度を上げるための場づくりをしているというわけです。
そう考えると、HPIを起点にしながらそこに合うモビリティデザインを考えていけると、自動車(安全・環境に配慮型)、もしくはその技術、そしてそこで働く人々たちを包括するインクルーシブな未来を構想できるのかもしれません。
そんなことを感じさせてくれるコスタリカの事例でした。
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!
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